※本企画はHeritage&Legends 2021年3月号に掲載された記事を再編集したものです。
拘りと少しのひねくれ感が進めてきたZカスタム路線
クラスフォーエンジニアリングは’88年のショップオープン時から、多くのZを扱ってきた。特にMkIIや後継J/R系も含めた角型ZにGSX-R系流用足まわりと、純正ラインを生かした派手目カラーリングで“ヨコハマ・クラスフォー・スタイル”を確立。
ドラッグレースを軸にアメリカ発のZ用パーツを続々と日本へ導入し、TOTの前身であるTOF参戦など、Zで多彩な活動を続けてきた。その上で、メインステージはあくまでもストリートだと言う横田さん。下で紹介しているZ1000Mk.II(1993)は、そのクラスフォースタイルを一番明確に反映した’93年当時のカスタムMkIIだ。この車両の成り立ちと背景は。
「僕が横浜(本牧)でショップを開ける少し前、’80年代後半は、Zはもうあんまり走ってなかったように記憶してます。いてもいいところハンドルが変わってウインカーは大きいと邪魔だからって小さくなってるとか、そんな程度。今で言う当時風というのもいなかったと思います。ハヤシキャストやビート・マグ(ホイール)、セレクト(フシミレーシング)の外装なんて、雑誌広告では知ってたけど見たことないなあって。
時代的にはレーサーレプリカの新車がどんどん出ていて、乗り換えだなんだで先へ先へって進んでいた頃。僕はZですからさっき言ったようにその辺から少し取り残されていたところにいて、逆に“これで行くんだよ”という、ひねくれ感みたいなものにこだわりを主張しながら手を入れてました。
タイヤを太くしたり、フロントフォークを太くしたりは、ここ神奈川県や静岡県だと、富士(スピードウェイ)でのMCFAJ(クラブマンレース)スーパーバイクの影響だったと思います。あそこで太いの付けたZが走っていると格好いい。なるほど、と。そんなイメージ。AMAの方のスーパーバイクはその後、雑誌に取り上げられてから全国的に広がったのかな。それでMCFAJのレースが終わって車両やパーツ、太いタイヤやフォークが出回ってきた。
なるほどって。それに対抗する感じで、僕たちは純正パーツを流用して使ったんです。当時の現行モデルだったGSX-R(油冷の1100/750)用で、ひねくれてるから(笑)GSX-Rそのものに乗るんじゃなくて、パーツを使う。車重もそこまで大きく違わなかったし、性能は上がるんですよ。付ける時にはホイールだとわざわざスポークの穴を塞ぐとか、フロントフォークにSHOWAって張るとか。ひと手間かけて謎感や、正体不明感を醸し出すのもある意味カスタムでした。
スイングアームもアルミ製に換えられて、タイヤに負けない剛性になる。そんなことも学んでいける。旋回性も高めたいからと、そこからホイールベース短くしようってカットしたりね。
それでも軸はストリートにあったんです。見せながら、パフォーマンスも上げる。Zを速く走らせたい。ドラッグレースも同じかな。今もZやGSが現役でエンジンの仕様も凄いことになっている。当時のプロストックバイクはカウルもなくてまさにストック的で、この辺も見てもタイムも面白かった。
そうしているうちにカスタムもZもブームになって、増えたカスタムバイクを走らせて遊ぼうってTOFが始まって。ただ、しばらくするうちにレースの趣が強まってきたので、やっぱりひねくれて(笑)、下で紹介しているZ1000Mk.II(1993)を作りました。
自分のバイクで、見せながら走るっていうカスタムの要素を失いたくなかったから。ホイールも3回代わっているし、エンジンは1200ccでオイルクーラーも後に2個に。マフラーもストリートでも調子の良かったモリワキ+USヨシムラサイレンサー。これでいったん完成したと思ってます」
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Zにどう向き合うのかで楽しみ方も変わってくる
時流を見極めつつも、その本流に少しだけオフセットをかけてこだわる。そんなスタイル。これを2020年代の今に反映させるとこうなるという提案で作られたのが、下に掲載する赤いMk.IIだ。Z登場から20年後だった当時と、50年後となる今という時代背景や、Zの立ち位置、そしてベース自体の経年という違いはあるが、モノサスやカーボンホイールに過給などのパフォーマンス要素はカスタムとしての特別感も大きくプラスしている。
「アメリカのドラッグレースに出てきたスタイルも取り入れて、オールドスクール(旧車)だけどここまでパフォーマンスは持たせられる、見せられる。それに大事な街乗りも出来るよという提案です」と横田さんはブレていない。それを新しい目で見たわけだ。
では、これからのZはどうなるか、横田さんはどう見るか。
「それこそ、Zをどう見るかでしょう。これからもずっと旧車ですし、変わることがない分じっくり付き合える。それでZ自体を知っていきたい、いじりたいのか、走りたいのかで変わってくると思います。すぐ走らせたいならいいコンプリートもあるし、知り合いづてで履歴の分かるものなどを見極められればそれをいじっていく。
Zを知りたいなら、不動車でいいから買って、自分でレストアしてみるのも面白いと思います。普通に買っても腰上オーバーホールは必須ですからやってみて、エンジンがかかったら次……と進めていく。フレームも塗るとか塗らないとか補強を入れるとか、決めていきながら作るという感じ。動かない時間が長くなるでしょうけど、作ること、知ることが目的なら十分。
そうすると自分だけで出来ないことも出てくるだろうし、知らないこともたくさんあるでしょう。自分たちもそうだった。それを経験で知る、Zをよく知る人に聞く、知ったショップと付き合う。ショップに依頼してもいいんですよ。主治医的に。でも医者にかかるのと同じで、意思疎通ができることが大事ですけどね。
新しいことというのは起こるかどうか分からないけど、出てくるし、やりようはある。そこはもう少しこだわって見ていきたい」
新しいMk.IIを仕立てた時もそうだった。各部に盛り込まれた最新の要素は、これからも現れてくるはずだ。そんな要素を採り入れた新しい空冷Zの姿、見てみたい。
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あくまでもストリートへの還元を重視して作り上げられたレース参戦仕様車
CLASS FOUR ENGINEERING Z1000Mk.II(1993)/1993年に横田さんがテイスト・オブ・フリーランス(TOF。TOTの前身)出場のために作り上げた車両。フレーム補強やバンク角を稼ぐためのエンジン位置上げという手法も施される。エンジンは1015から1200ccに拡大し圧縮比は11:1、オイルクーラーも後に2個仕様として耐久性も持たせ、ダイナコイルで点火、キャブレターはFCR。排気系はモリワキ・モナカのエキパイにUSヨシムラサイレンサーで、この仕様はストリートでも使い勝手が良かったと横田さん。足まわりはフロントにショーワφ43mmカートリッジフォーク、リヤショックもショーワ。ステムはGSX-R1100、スイングアームはGSX-R750用を20mmカットして旋回性を向上させるなど、当時積み上げたハード面と“見せる”ノウハウをともにまとめた。ホイールは前後17インチのパフォーマンスマシン・シケインだが、これ以前にPVM、ダイマグを経ての採用。KOSMANのスプロケットカバーなどドラッグパーツも使われた。
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今までにない作り込みとUSスタイルを融合させてストリートもドラッグも
CLASS FOUR ENGINEERING Z1000Mk.II(2020)
空冷2バルブ/5速のエンジンはCPピストン製φ76mm鍛造ピストンによる1200cc仕様で、NOSの使用を前提に各部強化。ミッションはアメリカの加工メーカーでアンダーカット加工等を行い、クランクはファリコン製強化/軽量品に。キャブレターはFCRφ39mm+NOSウエットショット。排気系はマレー製ワンオフのサイドワインダー。NA状態で後軸145psを実測、NOSを吹けば193ps。MTCロックアップクラッチやデータロガー等も装備している。
今までにないスタイルとアメリカンスタイルの融合というテーマは足まわりにもおよび、フロントフォークはナイトロンNTR43のDAEG用770mmをナイトロレーシングステムでセット、リヤはNOSボトルホルダー付きのD.M.E.製ハヤブサ用5インチ(Zの8インチ相当)ロングスイングアームでのモノショック仕様。ショックはナイトロンのハヤブサ用でフレーム側も加工。ホイールはBrock’s BSTカーボン3.50-17/6.00-17、ブレーキキャリパーはベルリンガーでディスクはサンスター。
オリジナルビキニカウルは着脱可能でハンドルはドラッグバー、タンクはビーター製アルミ。ワンボディのメーターはKOSO多機能タイプでキーシリンダー左にはNOS用のスイッチも備える。保安部品用のスイッチやミラーも備え、フロントマスターはブレンボ、クラッチホルダーはコーケン。燃料タンクはMk.IIでシングルシートカウルはファスナー着脱式。