JSB1000クラスまでドライコンディションでした
この週末は全日本ロードレース第7戦が岡山国際サーキットで開催されました。台風14号の接近がアナウンスされる中、土曜、日曜と雨の時間帯があり、日曜の決勝4レースはJSB1000クラスまでドライコンディションで、最終レースのST600クラスのみ、赤旗中断のすきに一瞬、豪雨となってのヘビーウェットレースとなりました。
今大会の注目は、最終戦・鈴鹿大会を残して早くもチャンピオンが決定するか、というレースがあったこと。ひとつは土曜日に予選→決勝が行なわれたJP250「国内ライセンス」クラスで、こちらはキジマKISSレーシングの山根昇馬が見事にクラス優勝を飾って22年負けなしの5連勝でチャンピオンを獲得してみせました。
そしてメインクラスであるJSB1000クラスでも、ここまで5戦9レースを全勝している中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシング)が、レース結果によってはチャンピオンが決まる、という一戦。
JSB1000クラスは、ここまで5戦9レース、中須賀が全勝で、ランキング2位に渡辺一樹(ヨシムラスズキRIDE WIN)がつけていたんですが、渡辺が世界耐久選手権・最終戦ボルドール24時間耐久に出場のため岡山大会を欠場。チャンピオン決定にはランキング3位の岡本裕生(ヤマハファクトリーレーシング)がマジック対象となるんですが、その岡本もオートポリス大会予選での転倒が原因で、この岡山大会を欠場。ではランキング4位といえば作本輝介(AstemoホンダドリームSIR)が中須賀から134ポイント差、という状況で、これは残り試合を全勝しても届きません。
シーズン残り試合は最終戦・鈴鹿大会の3レースですから、ボーナスポイントの「3」を加えて、3レースを全勝して、最大獲得可能ポイントは(25+3)×3=84ポイント! 同ポイントなら優勝回数が多いほうがチャンピオンですから、中須賀が岡山大会をノーポイント、さらに鈴鹿の3レースもノーポイントで終えたとすると、渡辺はあと74ポイント、岡本はあと83ポイント獲得すれば逆転が可能となります。中須賀は、ここ岡山で11ポイントを獲得すればよかった、というわけです。
まあ、ここまで9レース全勝の選手が突然4レースノーポイントなんて、天文学的確率の大事件ですからね。つまり中須賀はそれだけの大マージンで岡山大会に臨んでいた、ということになります。
そのJSB1000クラスですが、中須賀は金曜の合同走行からトップタイムをマークし、2番手榎戸育寛(SDGホンダレーシング)以下のホンダCBR勢に1秒以上の差をつけています。1秒って言ったらもう、現代のロードレースでは大差も大差。そして公式予選でも2番手榎戸に0秒8差をつけて中須賀がコースレコードを更新してポールポジションを獲得! これは絶対王者絶対有利、な岡山大会だったわけです。
そして決勝レースでは、中須賀がホールショットを決めて序盤からレースを引っ張り、1周ごと後続との差をジリジリと引き離して、終わってみれば2位以下に8秒の大差をつけてフィニッシュ! これで2021年開幕戦から続く連勝が「20」となり、22年もここまで全勝のままチャンピオンを決めました。
2位争いは、序盤から作本が中須賀の背後につけるも、じりじりと引き離される苦しい展開の中、その作本を榎戸育寛(SDGホンダレーシング)、濱原颯道(ホンダドリームRT桜井ホンダ)が追っての3台での2番手争い。作本はこのまま2番手を譲らず、最終ラップまで作本の後方につけていた榎戸が、最終ラップにコースアウトし、濱原が3位フィニッシュ! 4位以下に岩田悟(TeamATJ)、亀井雄大(ホンダ鈴鹿レーシング)、清成龍一(TOHOレーシング)、秋吉耕佑(MURAYAMAホンダドリームRT)のCBR勢、8位にBMW M1000RRの関口太郎、9位に渡辺一樹の代役としてエントリーした加賀山就臣(ヨシムラスズキRIDE WIN)、10位にTeamKODAMA児玉勇太がつけました。
「11回目のタイトルといっても、これはチームがいつもいいマシンを仕上げてくれて、そのおかげで走れているから。ずっとチャンピオン、って言われても、そのレースごとに課題をもって臨んでいるし、日本のロードレースのレベルを落とさないよう、僕も懸命に若いライダーの壁になるようにがんばってます。今大会は、渡辺君も岡本もいなくて、ちょっと集中力を欠く局面はありましたが、作本君がすごい走りで追い上げてきて、彼も去年よりいい走りができていると思うんです。そうやって、レース界全体のために頑張っていきます!」と中須賀。
中須賀は2008年にJSB1000クラスで初めてのチャンピオンを獲得すると、09年に連覇を決めて、10~11年には秋吉耕佑にタイトルを奪われたものの、12年から16年まで5連覇、17年は高橋巧にタイトルを譲りますが、18/19/21年にもチャンピオンを獲得。20年はチームメイトの野左根航汰が先着したんでした。でも2005年から18年(!)で11回のチャンピオンを獲得しています。
ヤマハが制作した資料によると、21年までに96回の表彰台を獲得、優勝確率43%、表彰台登壇率は69%! 2021年は全勝でしたからね、Webオートバイで「絶対王者」ってつけたニックネームは、今やすっかり一般的になりました(←コレちょっと自慢)。
「今日だって、5位まで入ればいいとか、チャンピオンは確実だな、なんて言われましたけど、レースは何があるかわからないし、ってことをいつも肝に銘じてがんばってます」という中須賀。
「絶対王者」って言われながら、実はひと一倍繊細で、これだけレースに勝てるのに、レースの前はいつもガチガチ。でもそれがいい、決して勝って当然、なんて考えでレースをしないのが中須賀のいいところなんです。
最終戦、1戦3レース残ってるけど、ひとまずおめでとう!絶対王者!
写真・文/中村浩史