2022年9月20日に伊・MVアグスタより、そしてその1日後の21日にKTMブランドなどを擁するオーストリアのピーラー・モビリティAGから、KTMが北米でのMVアグスタ製オートバイの販売、プロモーション、そして顧客へのサービスなどの業務を行うという、驚きの発表がありました!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年9月24日に公開されたものを転載しています。

カナダ、アメリカ、メキシコが該当するエリアになります・・・

両社からのリリースによると、ピーラー・モビリティAGの100%子会社であるKTM AG(以下KTM)は、イタリアに拠点を置く名門MVアグスタと協力関係を締結。この契約に基づき、KTMは一部の既存KTMディーラーおよび新規MVアグスタ販売店を通じて、アメリカ、カナダ、メキシコの各市場でのMVアグスタ製オートバイの販売、プロモーション、そしてカスタマーサービスを行うことになります。

画像: MVアグスタのRC(レパルトコルサ)シリーズ。 www.mvagusta.com

MVアグスタのRC(レパルトコルサ)シリーズ。

www.mvagusta.com

つまりKTMは、MVアグスタの北米市場における「流通」分野を買収したわけですが、このオペレーションを行うのはKTMの北米子会社であるため、あくまでKTMがMVアグスタを扱うのは「北米」のみであり、他の国では関係はありません。

狙いは、北米市場における高級ロードスポーツ販売の強化?

リリースのなかでKTMは、今回の提携により北米市場における強力なプレゼンスを獲得した、と述べています。そして既存のブランド・・・KTM、ハスクバーナ、ガスガスは、2022年に10万台を超える販売台数を見込んでいるとのことで、高級スポーツのMVアグスタが加わることでラインアップが補完される効果を期待しているようです。

2019年秋にロシアのサルダロフ兄弟が資本の100%を管理するようになってから、栄光あるMVアグスタのブランドはサルダロフ家の支配下におさまっていました。そして元のブランド保有者だった、カジバ創業一族のジョバンニ・カスティリオーニらは、2021年から「C-クリエイティブ」の活動を本格的に開始したのは既報のとおりです。

ティムール・サルダロフ(MVアグスタ モーター S.p.A CEO)
「欧州の2つの歴史的なオートバイメーカー間の、この合意に興奮しています。KTMの広範でプロフェッショナルな販売組織は、この地域における当社のブランドの強い魅力と相性が、両社に大きな利益をもたらすと確信しています。私たちの協力のおかげで、私たちは北米での成長戦略を加速することを可能にする相乗効果を生み出します」

フーベルト・トゥルンケンポルツ(KTM AG 理事会メンバー)
「このような歴史的なオートバイブランドと、新しいパートナーシップを始めることを大変嬉しく思っています。特に北米ではKTM、ハスクバーナ、ガスガスの3ブランドで、2022年に販売台数10万台を突破する予定です。MVアグスタブランドの販売を引き受けることで、当社の幅広いプレミアムオートバイのラインアップを補完することができます。 KTM北米事業にイタリアを代表する高級オートバイブランドが加わることで、北米のすべての愛好家へのサポートを確保するとともに、既存および新規ディーラーに、刺激的な新しいビジネスチャンスをもたらすことができます」

気になるのは、この北米市場での試みが、ゆくゆくはMVアグスタを傘下におさめることの布石であるのかどうか・・・でしょう。

現在KTMブランドでは、1290 スーパーデュークR EVOをはじめ、890、390、200のデュークシリーズや、RC8CとRC390という2機種のスーパースポーツがラインアップされていますが、同ブランドを代表するのは周知のとおりオフロードバイクやアドベンチャーなどの、第二次世界大戦後以来の同社の「看板商品」群たちです。

KTM、ハスクバーナ、ガスガスの3ブランドは、MotoGPの各クラスでの活躍により近年ロードスポーツカテゴリーでのイメージアップを図っていますが、MotoGPの前身である世界ロードレースGPで38タイトルを獲得した栄光のMVアグスタブランドを、もしもピーラー・モビリティAGが所有することになれば、商品ラインアップ的にも、プレミアムイメージ的にも、いっきに補完することが可能になります。

画像: もしもMVアグスタが将来的に「KTM軍団」に加わることになった場合、競合するネイキッドやアドベンチャーモデルが統合や廃盤になることが予想されますが・・・ちょっとそれを考えるのは気が早いですかね? www.mvagusta.com

もしもMVアグスタが将来的に「KTM軍団」に加わることになった場合、競合するネイキッドやアドベンチャーモデルが統合や廃盤になることが予想されますが・・・ちょっとそれを考えるのは気が早いですかね?

www.mvagusta.com

ともあれ、MVアグスタブランドが将来吸収されることになるかどうかは、北米でのKTMによるMVアグスタ販売、プロモーション、そしてサービス網整備など、一連のビジネスの成否にかかってくるでしょう。今後の両社の動向と、北米市場の反応に注目したいです!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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