オーナーの情熱を汲んで形作られたAMAレプリカ・カタナ

#40のナンバーやぐっと立ち上がったシートレールを持ったカタナ。’82年のアメリカ、AMAスーパーバイクシリーズでデビッド・アルダナの駆ったヨシムラ・カタナ(GSX1000S、現地ではGS1000S名がベース)をモチーフに、いや、極力まで忠実に再現しつつ、公道も走れるようにと仕立てられたものだ。車両をまとめたショップ メローズの中川さんに、製作経緯を聞いてみよう。

画像1: オーナーの情熱を汲んで形作られたAMAレプリカ・カタナ

「7年ほど前に、この個体とは別の補強済みフレーム+足まわりで製作を始めました。大加工もあることを前提にしてはいたのですが、作り直しなどの課題もあったんです。そこにモチーフと同じGSX1000Sの、ノーマルに近いフレームをヨシムラ・フロントフォークなどとともにオーナーさんが手に入れられて、より本格的に進められることになりました。

オーナーさんの熱意が並々ならないと言うか非常に高く、海外のコレクターとも知り合って、当時もののパーツや、希少なパーツも手に入れてくださいました。当時のウエス・クーリー車(こちらは#34。もちろんアルダナのチームメイトだ)を持っている方からの画像なども見せていただいて、そうしたパーツ類をどうフィッティングしていくかも考えました。

エンジンはSOHCエンジニアリングの渡辺さんに当時のレギュレーションに準拠した1015cc仕様(GSX1000Sノーマルは998cc。AMAスーパーバイクのレギュレーション上限は1025ccで、ここに合わせている)でピストンを作っていただいたり、フレームの加工や、画像を見ながら何度も調色して当時のカルガードの色を再現したガンコート。それからシールが今はもうないブレーキキャリパーをどう復活させるかなど、各部はそれこそ多くの専業の方の協力を得ながら、ここまで形になったと思います」

画像2: オーナーの情熱を汲んで形作られたAMAレプリカ・カタナ

ワンオフのエンジンカバーやリヤショックなど、中川さんの話はまさに記し尽くせない(中川さんも話し尽くせない)ほどに膨大だ。だが、こうしてまとまった今の車両の状態は、オーナーには公道を走る上での妥協こそしてもらっているけれど、試乗時に「頭がおかしくなりそうなくらい楽しかった」(中川さん)という完成度も見せている。

オーナーの尽きない熱意とそれに基づくパーツ調達力、ショップの心意気とそれに応えようとした周囲の協力。狙いこそ違うが、モチーフのカタナレーサーも、同様の熱意を尽くして仕上がっていたはず。この車両は、そんなモチーフ車のバックグラウンドも再現したと言えそうだ。

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Detailed Description 詳細説明

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フロントカウルはオオノスピード製を加工して装着。カウル下のフィンはモチーフ車に合わせて外してあり、純正ウインカーを外した穴は残している。フロントはゼッケンプレートに穴開け加工してプロジェクター・ヘッドライトをマウント。タンクはビーター・アルミを装着する。

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メーターはAMAのレギュレーションに準じてカタナ純正ケースを使う。その中にスズキファクトリーのDENSO製エンジン回転計を埋設し周囲に警告灯を配置する。ケース下側にモトガジェット・ミニスコープ速度計を置く。ハンドルバーはクロモリでワンオフ再現。

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カウルステーはワンオフ、モチーフ車にないミラーステーもハンドルバーに合わせてワンオフする。公道走行用にETC車載器も追加してある。

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超小型LEDウインカーなど、公道走行用に保安部品も備えている。写真はフロント側で純正ウインカーステー穴の真下にレイアウト。

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エンジンはGSX1000S(998cc)の新品シリンダーにSOHCエンジニアリングによるワンオフ鍛造ピストン等を使って1015cc仕様で製作する。ヘッドカバーやシリンダードリリングなども現車に即して加工している。エンジンカバーは右が3D CAD→CNC製作でクランクエンドカバーの曲面を再現、左がヨシムラGSX-R600キットパーツの小さく薄いフライホイール等を使って極力現車のイメージに近づけ、スプロケットカバーもGS1000R(XR69)タイプを海外から調達した上で加工装着した。

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キャブレターは今となっては希少なVM33+ヨシムラアルミファンネル仕様で、公道用に乗りやすくリセッティングされている。

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ハーネスはオオノスピード製の新品を使って電装はウオタニSP2に置換と、信頼性も確保する。ロングテールやバックスキンシートも初期型(SZ)を加工しオールペイント、ステッカー類も製作と、外観や各部数値は当時を再現しながら、中身は新品と言える作りだ。

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フロントはステアリングステムやフロントフォーク、ブレーキマスター/キャリパー/ディスク等がスズキファクトリーパーツで、それぞれオーバーホールした上で装着する。前後のブレーキキャリパーはシールがないことの対策としてキャリパーピストンをワンオフし、その表面にカシマコーティングを施して対処するようにした。ブレーキホースはアコサット製ステンレスメッシュをセミオーダー製作したもの。

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スイングアームや当時の2ストローク500レーサ−のRGB500用マグネシウム製ブレーキキャリパー、前後18インチのダイマグホイールもスズキファクトリーパーツでフィッティングパーツもオーバーホールし、ホイール自体もマグ専用ペイントを施して装着している。リヤショックはFOXで、アメリカのファクトリーでオーバーホール。ステップはモチーフ車のバー位置がレース専用品で高い位置にあったため、メローズで治具を作り、オーナーとミリ単位でバー位置を合わせした上で装着、マフラーもこれに合わせて現車風にワンオフされた。

取材協力:ショップ メローズ

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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