文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「CB250R」インプレ(太田安治)
ライトウェイトの魅力が詰まった一台、爽快さをさらにアップ
250ccロードスポーツは「エントリーユーザーや女性ライダーにお勧め」と評されることが多い。その理由に挙げられるのが扱いきれるパワー、取り回しやすさ、足着き性の良さ。だが、乗りやすさと面白さの要素は相反する部分が多く、乗りやすさばかりを求めると凡庸なオートバイになってしまう。
CB250Rは特出したスペックや斬新なメカニズムは持っていないが、走らせると街乗りのペースでも爽快さを味わえる。この「自然なスポーツ性」は、経験とスキルを持ったベテランほど実感できるだろう。
エンジンはレブル250と同じ単気筒でパワースペックも大差ないが、フィーリングの違いは明確。ポンポンと早めにシフトアップしたくなるレブルに対し、CBはもっと高い回転まで引っ張ってパワーの盛り上がりを体感しながらシフトアップ、という操作が自然。常用回転域は2気筒車、4気筒車より低いが、使う回転域が狭いことでパワー特性を感じやすく、エンジンと対話する充実感がある。
全開加速や最高速の絶対的速さなら最高出力の大きい多気筒エンジン車が勝るが、市街地や峠道では車重144kgという軽さも武器となり、数値からは想像できないダイレクトな加速感を見せるのもCBの持ち味だ。
そしてもうひとつ、スキルのあるライダーも納得させるのがハンドリング。もともとCBは前後荷重バランスに優れた車体で旋回性、接地性とも高いが、初代は前後サスとも硬めのセッティングで、ギャップ通過時に車体全体が弾かれるような神経質さがあった。これを2019年モデルでソフト方向にセッティング変更して乗り心地と足着き性を大きく改善、そして2022年型はフロントフォークにSFF-BPタイプを採用し、車体剛性と前後サスペンションの設定がぴったりとマッチしている。特にフロントの滑らかな初期作動により、街乗りで優しく、スポーツライディングでも腰砕けにならない対応範囲の広さを獲得した。
幅広のハンドルで操舵力が軽く、ストリートファイター的にヒラヒラ走れることもCBの特徴。ただし、ハンドルエンド部分の絞り角が少ないので長時間のライディングでは手首に負担が掛かる。個人的にはもう少し絞り角と垂れ角を増やしたほうが楽だと思う。
CB250Rは「ビギナーにお勧め」なだけでなく、ライダー主導で操る楽しさを秘めている。軽量ロードスポーツの魅力を教えてくれる1台だ。