文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年11月9日に公開されたものを一部編集し転載しています。
EVバイク2機種は2023年の発売を目指している
ある意味、予想どおりのデビュー・・・といえるかも?
今年8月にLawrenceは、カワサキのNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)が公表した車両識別番号=VINデコーダーのリストから、2023年モデルとしてZ系ネイキッドモデルおよびニンジャ系スポーツモデルの電動モデルがこの秋公開されるのでは・・・という予想記事を公開しました。
そして今年1月には公開された特許をもとに、カワサキが近い将来に登場させるであろうハイブリッド車に関する解説記事を紹介しました。2輪EVの2機種は予想どおり2023年モデルで販売されることになり、またモーターの出力に関しても予想どおりEU圏のA1ライセンス(排気量125cc以下および最高出力が11KW(15馬力)以下の2輪車に対応した免許区分)に対応するものでした。
EV両モデルともに、近距離コミューターとしての活用を想定・・・というカワサキの説明ですが、非常に気になるのは電源として取り外し可能なリムーバブルバッテリーバック(約12kg)を2個搭載している点です。
そしてバッテリー容量は最大3.0kWhということは・・・明かされたバッテリーに関する数値や情報からすると、Gachacoのサービスをはじめ国内バッテリーコンソーシアムで使用する「Honda Mobile Power Pack e: 」(10.3kg)を、カワサキのEV2機種は使っていないことがわかります。
2個搭載ということは、ホンダ製2輪EVの多くが採用するモバイルパワーパック e:を2個直列接続させた96Vシステムを使っていると想像されるのですが・・・? バッテリーに関する詳細が発表されるのを、楽しみに待ちたいです。
HEVバイクは2024年の発売を目指している
公開されたプロトタイプ同様、ストロングハイブリッド方式を採用!
過去に公開されたHEVプロトタイプは、4輪小型車用バッテリーとほぼ同じサイズの48Vバッテリーを搭載していましたが、もしかすると2024年の市販化を目指しているというHEVモーターサイクル(プロトタイプ)も、EV両機種に採用されたリムーバブルバッテリーバックを1個搭載しているのかもしれません?
鈴鹿8耐でデモンストレーション走行を披露したHEVプロトタイプ同様、エンジンを切って電気モーターのみでも走行可能なハイブリッドエンジンシステムを採用しているのが特徴で、通勤通学からスポーツ走行やツーリングなど走行シーンに合わせ、モーター走行またはモーターとエンジン併用走行の切り替えが可能・・・なことが、セールスポイントになっています。
現状の2輪EV技術では航続距離の短さが問題視されていますが、その点でHEVはエンジンを主に動力源として使えるので、燃費の良さと高い走行性能の両立を目指すことができます。コミューター的な2&4が電動化することについては「それで良いんじゃない?」といいつつ、趣味の2&4は「絶対内燃機関!!」という人は少なくないでしょう。そういう方々にとって、カワサキのHEVモーターサイクルは、希望の星といえる存在なのかもしれないですね。
水素エンジンのバイクは2030年代前半の実用化が目標
水素ICEについても、Lawrenceの予想が当たった・・・かな?
なおカワサキはEICMA2022で、EVやHEV以外のカーボンニュートラル技術への取り組みも紹介しています。そのひとつがその存在を公表済みの「水素ICE」であり、実用化時期は水素供給インフラや各国の法規制の整備状況により変動します・・・と前置きしつつも、水素エンジンモーターサイクルの2030年代前半の実用化を目指していることを発表しました。
ちなみに2021年12月公開の記事で、水素ICEの解説をしたのですが・・・。水素ICE搭載のカワサキ車のイメージイラストに、私の書いた「冗談」がそのまんま描かれていてビックリしました!
カワサキが開発中の水素燃料ICE車のイメージ。本車側の燃料タンクに加え、左右のパニアケースも燃料タンクとして使えば、水素燃料でもガソリンICE車並みの航続距離を現時点の技術で実現できるかもしれません・・・? (※冗談で書いています)。
2022年6月、トヨタとその子会社ウーブン・プラネット・ホールディングスは、手軽に「水素」を持ち運びできる、ポータブル水素カートリッジの試作品を公表しましたが、カワサキの水素ICE搭載車のイメージイラストは、水素カートリッジをパニアケースに入れることで、ユーザーの手による「水素燃料補給」を可能にするアイデアを盛り込んで描いているのかも・・・しれませんね?
はたして将来、水素ICE搭載2輪車がカワサキからリリースされたとき、水素燃料タンクがどのようなレイアウトになるのか・・・? 2030年代前半の実用化という目標が現実にかなうことを期待し、その答え合わせを楽しみにしたいです!
またカワサキは、EV、HEV、水素エンジンのほか、eフューエルおよびバイオ燃料の使用もカーボンニュートラルへの選択肢として採用することをこの度発表しています。再生可能エネルギー由来の水素と二酸化炭素を原料として製造される燃料で人工的な原油であるeフューエルや、廃棄物や非食品バイオマス(生物資源)由来原料で作るバイオ燃料は、カーボンニュートラルへの道筋として正しいかどうかは議論されているのが現実ですが、ICEファン的にはこれでOKなのが一番嬉しいのですけどね・・・。
目ざとい方は、EICMA2022で発表されたプロトタイプ群に使われている謎のマークの存在に気付いたかと思いますが、これはカワサキが生み出した「カーボンニュートラルマーク」というものなのです。
カーボンニュートラルの時代において、社会のニーズに応える持続可能な開発(Sustainable development)、カワサキの技術(Technology)、そしてお客様にご満足いただける楽しみ(Fun)による"Good times"をお届けし、皆様とともに"Go with Green Power"を実現していきたいという想いを形にしました。
2025年までに10機種以上のEV(バッテリーEV=BEVおよびハイブリッドEV=HEV)を市場に投入し、そして2035年までに先進国向けの主要モデルを「電動化」する予定であることをカワサキは公表していますが、今後どのようなモデルを私たちに提案してくれるのか? 楽しみです!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)