文:中村浩史/写真:森 浩輔
ホンダ「ダックス125」2人乗りインプレ(中村浩史)
原付ニ種のバイクには、こどもが乗りたがる
思えば125cc生活を始めて10年が過ぎた。それまでは、ビッグバイク一辺倒というか、大きなバイクで何でも済ませていたんだけれど、遠出する時と街乗りを別のバイクで、と250ccのオフ車だったりスクーターだったりと2台持ちをして、その末に辿り着いたのがKTMのDUKE125。
小排気量なんてくくりを超越してる、というDUKEの魅力を知るにつけ、その思いをCB125Rに引き継ぎ、125ccの気軽さを味わって、いろいろ買い替えて乗り続けよう、と思ったとき、もうひとつの魅力に気づいたのだった。それは、小学校高学年になった長男がぽつり言ったこと。
「おとう、バイク乗りたい」
――珍しいじゃん、いいよ、乗るか。
DUKEの頃にも、時々乗せてはいたのだ。自宅近くをぐるりと回ったり、近くのコンビニまで5分走ったり、少し遠くのカフェまで往復30分走ったり――。案外キラいじゃなさそうだな、って探りさぐり乗せるのは、世の中のバイク乗りパパあるあるだと思う。
CBのタンデムシートに収まった長男は、高いシートが怖いのだと言った。乗り降りしにくく、足が届かない場所に座る不安があったのだ。
だからCBの次は、モンキー125。これならサイズもコンパクトだし、シートだって高くない。よーしこれであちこち……と思ったら、モンキーは1人乗り専用、タンデムステップもないのだった。これ、ホントに買ってから気づいたのでした(笑)。
中学生になった長男に替わって、今度は次男が乗りたがるようになった。長男、部活に熱中していて、もうオヤジのバイクなんか眼中にないのか。
「おとう、バイク乗りたい」
そんなことを言ってくれる次男のために、Dax125に買い替えたのだ。CBが2年、モンキーも2年。春に注文したけれど、まだDaxの納車状況は改善されていないらしく、今回の試乗車はまだ僕の愛車じゃないけれど、次男をDaxに乗せてやろう。
ホンダはDaxのオーナー像のサンプルとして「30歳代のお父さんと小学生のお子さんの1.5人乗り」があるのだと言った。オヤジの歳がちょっとイッてるけれど、ま、よかろう。
1970年代レジャーバイクは現代の万能ファンバイク
1970年代に街の人気者だったDaxは、モンキー&スーパーカブ系の「ヨコ型」と呼ばれるエンジンを搭載したレジャーバイクだった。
デビュー当時、Daxのデザインを担当したデザイナー・森岡さんによれば、主にアメリカで大人気となったモンキーを、スモール感はそのままに「少し現実的なサイズに」というオーダーが開発のスタートだったという。
そして1969年のクリスマス商戦の時期に合わせるよう、ごく短時間で完成したDaxは、やはり「バックヤードバイク」として、アメリカの広大な自宅敷地の裏庭で乗るような、そんなアソビバイクとして大ヒットした。
翻って日本でも、Daxは「モンキーより大きくてちゃんと乗れる」サイズのバイクとして人気が爆発。スーパーカブやモンキーと同じく、決して大袈裟ではないけれど街のあちこちにDaxはあった。
親戚をたどると、一台はカブかモンキーかDaxがあった、といっても決してオーバーじゃないほど、当たり前のように街の顔だったのだ。
あれから50年、スーパーカブは作り続けられ、モンキーが125ccにリボーンしたように、今度はDaxも125ccになって帰ってきた。
すっかり大人気となった、ホンダ原付二種エンジン、つまりGROMやモンキー、ハンターカブと同系エンジンを搭載し、クラッチレバーのない自動エンジンクラッチを装備しての登場。
サイズ感は12インチホイールのGROMより大きく、17インチホイールを履くC125やハンターカブよりも小さい125cc。モンキー&GROMと違うのは、やはり自動遠心クラッチを使用している点で、よりイージーに走れる。
さらにこのノークラッチ構造ならば、小型限定AT免許でも乗れるし、シーソーペダルを装着していることで、クツの「甲部分」が傷むこともないから、カブと同じくビジネスシューズでも、街乗りで言えばオシャレ靴でも乗ることができるのだ。
そしてDaxは、モンキー&GROMは言うに及ばず、ハンターカブやC125よりもずっと、タンデムシート面積が広い。これで今回のように子どもとタンデムできるし、キャンツーライダーにとっては荷物の積載能力も飛躍的に向上している。だからDax、待ちに待った登場だったのだ。