文:黒田健一/写真:南 孝幸
ハチ黒のキャブレター車コレクション
カワサキ「GPz750F」
スズキ「GSX750S」・ホンダ「CBX750F」・スズキ「DR-Z400SM」
タイでの海外生活がなければバイクに乗っていなかっただろう
今や絶滅危惧種になってしまったキャブ車は時の流れとともにその数を減らし、信じられないほどの高値で取引されている。そんなことになるとも知らず、1980年代のナナハンを5年くらい前から買い漁っていた。もちろん20~40万円くらいで買える車両がターゲット。でも、「ただ安いから」と言う理由だけではない、その背景には青春時代の思い出が深く関与しているのだ。
今から37年前、父の仕事の関係でタイに3年半ほど住んでいた。タイに住んでから一年が経過した頃、日本人の先輩から色々な悪行を教わった。そのひとつがオートバイだ。当時、タイでは販売が認められていなかった大型バイクを、パタヤビーチではパスポートさえ見せれば気軽にレンタルすることができた。
もちろんバイクの免許もなければ運転方法も知らなかったので、150ccのギア付きバイクを借りて先輩から運転方法を教わった。それからと言うもの毎週末バスで2時間ほどかけてパタヤに通い、日が暮れるまで練習した。その後、Z400GPやFZ400などにステップアップしていったが、ナナハンはさすがに大きすぎて借りる勇気はなかった。
どデカいカウルと18インチホイールにビビっていた甘酸っぱい青春時代
そんなある日、ナナハンのわりに車体がスリムなCBX750Fがレンタル車両に加わり、「これなら乗れるかも」と勇気を出して借りてみると、とても乗りやすい。それからはVF750FやFZX750などを借りまくり、そしてついにGPz750(A1)と出会ってしまった。これまで乗ってきたバイクの中で一番デカいフロントカウルが強烈に印象に残っている。デカい、乗りたい、でも怖い。そう、いつしかGPz750は憧れのバイクになっていた。
それから数カ月後、意を決してGPzを借りることにした。これまで16インチのCBX750FやVF750Fばかり乗っていた影響なのか、GPzのフロント18インチタイヤのハンドリングは非常に重く感じた。結局Uターンすらできずに先輩へバトンタッチした苦い思い出になってしまった。それ以降GPzを借りることはなかったが、けっして嫌いになったわけではない。「大人になったらGPz750を絶対に購入する」と心に誓ったからだ。
そして35年後の2018年、ついに念願のGPz750F(A2)をオークションで購入。配送業者から車両を受け取り、はじめて実物とご対面。16歳のときは、とてつもなく大きく見えたフロントカウルはとても小さく感じ、「オレはこれにビビってたんだ」と苦笑してしまった。フロントブレーキは恐しく効かないが、とても素直なハンドリングが魅力の旧車です。今のところ不具合がないのは救いだな。
ハチ黒カスタム カワサキ「GPz750F」の各部装備
カワサキ「GPz750F」(1983~1986年)主なスペック
全長×全幅×全高 | 2190×720×1260mm |
ホイールベース | 1495mm |
車両重量 | 217《A3:224》kg |
エンジン形式 | 空冷4ストDOHC2バルブ並列4気筒 |
総排気量 | 738cc |
ボア×ストローク | 66×45mm |
圧縮比 | 9.5 |
最高出力 | 72《77》PS/9500rpm |
最大トルク | 6.30《6.40》kgf・m/7500rpm |
燃料タンク容量 | 18L |
変速機形式 | 5速リターン |
始動方式 | セル |
タイヤサイズ(前・後) | 110/90-18・130/80-18 |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク |
文:黒田健一/写真:南 孝幸