カワサキエンジンならこれ! でニンジャカウルを自作

ニンジャカウルを持ったこのドラッグレーサーの名は“GPZ1400R”。その成り立ちは実に独特だ。元々のベースは、1990年代末にアメリカのTRACダイナミクス社が、多くの人がドラッグレースにイージーに参戦できるようにと作ったローリングシャシー+ZX-11(ZZR1100)エンジンのコンプリート、RAZOR BIKE(レーザーバイク)。

そのエンジンをZX-14(ZZR1400)に換装し、NOS追加のためにキャブレターからフルコン化。外装やマフラーはライダーにしてオーナーの木村和由さんと仲間たちで作り、この形になったという流れだ。木村さんはもう20年以上前から、油冷GSX-RやGPZ900Rでドラッグレースを楽しんでいた人だ。

画像1: カワサキエンジンならこれ! でニンジャカウルを自作

「ニンジャ時代にお世話になっていたショップのプロコレクションさんが活動を止めたので、私も寂しくなってたんです。そんな中でふとオークションサイトを見ると、あったんです。レーザーバイク。日本に入ってきたうちの1台で、出品者は近くで知ってる人。すぐ落札して、小田倉さん(一夫さん。プロストックバイクライダーで故人)と“今積んである11(ZX-11)より速いエンジン載せよう”って、その頃最速だったZX-14のエンジンを積んだんです。FIのスロットルボディもコンピュータも一緒に、付いてないと動かないからイグニッションキーまわりもイモビライザーも合わせてそのまま。当然ポンとは付きませんから、フレームも切ったりして」

専用のローリングシャシーだからエンジンを選んで積めば……の感もあったが、そうではなかった。書けば簡単だが、ZX-11と14ではエンジンマウントもチェーンラインも、外形やサイズも異なる。木村さんは空いた時間を見つけては作業を進めていくのだが、その中にカウル製作もあった。

古くからのドラッグレースファンなら、空冷Zのエンジンを積んだドラッグマシンに市販のニンジャカウルを付けるのが定番と知っているだろう。だがZX-11カウルは、プロストックバイク以外では少数派だった。ベースとなったレーザーバイクもノンカウルで丸目のダミーライトを付けたネイキッド仕様(タンクカバー〜シートカウル一体のカウルを持っていた)だった。だからこのGPZ1400Rでもドラッグ用ニンジャカウルを付けたのかと思ったが、木村さんからは意外な答えが……。

「作ったんですよ(笑)。私は昔からニンジャが好きでしたから。このバイクもニンジャじゃないエンジンにニンジャカウルだけど、同じカワサキでいいっしょて軽いノリでこうしました」

たまたま手元にあったという純正カウルから型を取り、シートは木村さんの先輩が作る。シートカウル一体のボディカウルも製作。マフラーは専門職の作だが、その職人も年上の先輩。こうしてカウルまわりが出来上がるまでに4年が経っていた。

画像2: カワサキエンジンならこれ! でニンジャカウルを自作

「ほかにもNOS(ナイトロオキサイドシステム。亜酸化窒素を吸気通路に噴射し強制的に燃焼効率を高める過給の一種)を使うためにハルテック製コンピュータでフルコン化しました。これも仲間内で4輪をやってる人に聞いたり、2輪でハルテックに詳しいセブンスナイトさんの力を借りたり。

NOSは燃料も噴射するウエットショットですが、インシュレーターでなくてファンネル化した上でそこに噴いてます。エンジン本体はノーマルです。走らせられるようになるまで6、7年かかって、動くようになった時にはもっと速いエンジン(ZX-14R)が出てきてましたけどね」。木村さんは苦労らしい側面をみじんも見せず、楽しそうに振り返ってくれる。

こうした成り立ちだから“GPZ1400R”と名付けられた。チーム名のフルスロットル・モータースポーツは、かつての仲間、小田倉さんが使っていたもの。仲間で作ったバイク、今のプライベーターとしての木村さんの立ち位置を、その名で表している。そしてGPZ1400Rの今の持ちタイムはSS0→1/4マイル(約402.1m)8.6秒。路面とマッチして全開で走りきればぐっと詰まるのは間違いない。その時を楽しみにしたい1台でもあるのだ。

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TRAC製ICSフロントフォークやトリプルツリー、ストレートハンドルバーなどはTRAC・RAZOR BIKEの標準装備品。ハンドルマウントされるDefiエンジン回転計や各部スイッチは後から追加したものだ。フロントカウルは木村さんが自身でGPZ900R純正を見本に作っている。

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タンクカバー〜テールカウル&カバー一体のカウルは木村さんの自作でNinjaラインであることはタンク部の造形からも分かる。スタートは下、加速時に後ろに座る2段式のシートは木村さんの先輩作で、ロイヤルパープルは木村さんが使うオイル。ステップは超バックだ。

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スイングアームエンド上下に伸びたブラケットにはウイリーバーがマウントされる。ドラッグスリックタイヤを履く車両では必須パーツで、タイヤのつぶれやフロントの上がり方などに合わせて高さのセッティングもできる。エンド部のローラーの接地具合もグリップの判断材料になる。

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フレームは4130クロモリ鋼管によるローリングシャシーのTRAC・TSX。上側フレームで3本のパイプが見えるうちの中央パイプが燃料タンクだ。このフレームに木村さんはZX-14のエンジンを積んだ。TSXシャシーは汎用とは言えZX-14には対応しておらず、フレームを加工して搭載。そのエンジンはZX-14がストックで鍛造ピストンということもありノーマル状態で、ミッションのみアメリカのRonBushMotorsportsでオートマチック加工(シームレスシフトアップ化を狙う)を施している。マフラーはガレージトミタ製サイドワインダー。

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ダウンドラフトのφ44mmスロットルボディはZX-14で、エアファンネルは単気筒150cc車用を4台分探して装着。その開口部にNOSノズルをセット。高圧亜酸化窒素とともに追加燃料も噴くウエットショットで、逆流を避けるためにスロットルバルブが開いている時(スロットル開度95%以上)とエンジン回転数を条件にして噴射する。このためにエンジン制御はハルテックフルコンに換えている。

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シフトは左グリップ部のボタンを押すとエンジン左下のエアシリンダーが動いてペダルを操作しシフトアップするエアシフター式だ。

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NOS噴射とエアシフター作動用にシート下(GPZ900Rで言うならリヤショックが入る部分。この車両はリヤショックレス)にNOSボトルを備える。

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RCコンポーネンツ製1.850-18/6.00-18ホイールやグリメカ製フロントブレーキキャリパーなど、車体の基本構成はTRAC・RAZOR BIKEのそれだ。フロントタイヤは抵抗を減らすべく細身の18インチスリック、リヤタイヤはミッキー・トンプソン製18インチドラッグスリックを履く。

取材協力:チームフルスロットル・木村和由さん

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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