通勤路に於いて、マニュアル125の強みとは? と、そんな思いで、2021年にモデルチェンジした5速グロムにて通勤路に漕ぎ出てみた。125スクーターが通勤快足王として君臨している感のある都内街道事情だが、近年はカブ系の台頭も著しく一概にスクーター一択ではない様相で、日々の通勤にマニュアルミッションならではの思惟作用を必要とし刺激的なドライバビリティを求める気運が高まっているのかもしれない。
文:山口銀次郎/写真:柴田直行

ホンダ「グロム」通勤インプレ

画像: Honda GROM 総排気量:123cc エンジン形式:空冷4ストOHC単気筒 シート高:761mm 車両重量:102kg 発売日:2021年3月25日 税込価格:38万5000円

Honda GROM

総排気量:123cc
エンジン形式:空冷4ストOHC単気筒
シート高:761mm
車両重量:102kg

発売日:2021年3月25日 
税込価格:38万5000円

「安定」と「利便性」を両立し進化をし続けている125スクーターに対し、マニュアルミッションというのはある意味時代遅れの機構なのかもしれないが、ライダーならその魅力的な操作感に陶酔してしまうのは確かであり試練じみている様にも感じる。トコトコとのんびり走行するのも、ピークパワーを維持して走行するのも、エンジン特性を把握しているからこそなせる業で、そんな匠人気質のライダーに充足感を与えるのかもしれない。

さて、5速グロムは、5速化されたミッション化により前モデルとは別物といって良いほどの変化をもたらしている。1〜4速ギアは、それぞれの速度域をキッチリ受け持ち、上のギアに速度のノリと上昇したエンジン回転数のバトンを渡すといったショート設定で、レッドゾーン手前まで一気に吹け上がる元気の良い味付けとなっている。「5速グロムではロングストローク化されたエンジンなのに、なぜこんなに元気ビンビンに加速してくれる?」という、ロングストローク化が及ぼす粘りや伸びの良さとは真逆の印象だった。

画像1: ホンダ「グロム」通勤インプレ

では、アップデートされた気になる5速ギアはというと、最高速はさすがに出すことはできなかったが、他のギアと異なるロング設定で粘りある伸びやかな特性となっている。そう、一定の速度を用いたクルージングに向いているボーナスギア的な特別感がある。それは、速度が上がり切っていなくても、例えば2速から5速に、また3速から5速へと一気にギアポジションアップしても、包容力あるトルクで下支えする頼もしさがあるのだ。むろん、エンジン低回転域を使用した一定速からの加速は負荷が大きく鋭さはないものの、モリモリと力強く応えてくれる健気さが嬉しくなってしまう。

つまり、わざわざロングストローク化されたエンジンは、粘り強さを演出する5速のための仕様変更だったのか! と、妙に納得してしまった。

画像2: ホンダ「グロム」通勤インプレ

しかも、あり余るパワーや最高速設定を弄ぶのではなく、125ccのパッケージがフルに活きる通勤路にフィットした速度&パワー設定で、多様で幅広いライディングスタイルが堪能出来る器用さは、マニュアルしかも5速ギア設定ならではだろう。エンジン回転全域のパワー特性を知れば知るほど、またその楽しさは倍増していくはずだ。

画像3: ホンダ「グロム」通勤インプレ

さらに、125ccのパワー&速度レンジに応える足回りは、止まる曲がるを実現するブレーキやホイールサイズに、強靭な足回り設定等々磐石かつ充実のシステムを備えている。しかも、些細なコントロールにも応えてくれる器用さがニクいのである。シーンによっては、細々&繊細なレーンチョイス(クランクなども含む)を強いられる際に、ガッツリ信頼して強気のステップワークを可能にしてくれる。当然、雨天時であろうが、路面の荒れがあろうが立ち向かう通勤ライダーにとっては心強いこの上ない。

画像4: ホンダ「グロム」通勤インプレ

純粋に通勤路のライディングに適したポテンシャルに少々面食らって驚きを隠せない模様の私だったが、『通勤路を往く』というタスクに於いてはユーティリティに富んだ装備を誇るスクータータイプを前にすると、やや走行性能のみに特化している様に感じてしまった。雨天時のカッパをど〜しよ〜? ヘルメットはど〜しよ〜? ライディングジャケットは? 走行性能は高くても、通勤モビリティカーストの頂点に立つことは叶わないのかな〜、と。

否っ! なぜか、通勤快足王決定戦の雰囲気を出してしまったが、まったくそんな意図はありません。悪しからず。

This article is a sponsored article by
''.