文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年12月24日に公開されたものを転載しています。
250cc版と同じ1998年にデビューしたスカイウェイブ400!!
スクーターのルーツは第二次世界前からありましたが、私たち現代人が今親しんでいる「近代スクーター」の潮流は大戦後のイタリアに生まれました。第一次スクーターブームと呼ばれている1950〜1960年代は、欧州や日本が生み出した125cc以上のスクーターが主役でしたが、1970年代末から1980年代の第二次スクーターブームは、もっぱら日本のメーカーが生み出した50〜125ccの無段変速オートマチックスクーターが主流になります。
第二次スクーターブーム最中の1980年代からは、第一次スクーターブームのころに多くのモデルが世界中で作られた、200〜250ccクラスのスクーターが復権することになりました。そして1990年代〜2000年代の日本国内では、俗にいう「ビグスク」ことビッグスクーターのブームがおこり、世の中をにぎわすことになりました。
日本のビッグスクーターブームの主役は、日本の法律的に維持費面などのメリットが多い軽二輪クラスの4ストローク250cc単気筒搭載モデルでした。その人気ぶりを示す事実として、1997年の国内軽二輪クラス市場の約4分の1は、250ccスクーターが占めていたというからビックリです!
1998年スズキは同社初の250ccスクーターとして、「スカイウェイブ250」を49万9,000円の価格で発売します。大型アタッシュケースを収納できるシート下トランクスペースを備え、足着き性のよい695mmの低シート高、そして前後連動式ディスクブレーキや23馬力のエンジンによる機敏な走りっぷりなど、スカイウェイブ250は多くのユーザーから高い支持を受けました。
そんなスカイウェイブ250の兄弟車として、同年にデビューしたのが「スカイウェイブ400」でした。全長、全幅、全高、ホイールベースといった車体まわりの諸元値は250モデルと一緒・・・というスカイウェイブ400でしたが、乾燥車重だけは250cc版の158kgよりちょっと重たい174kgとなっていました。
この重量差は、もちろん機関重量の差も含みますが、同じ基本骨格を持ちながら250cc版よりも肉厚なパイプ材をフレームに採用しているゆえに生じたものです。この剛性を高めたフレームのおかげで、スカイウェイブ400はパワフルさとトルクフルを誇る385ccエンジンのパフォーマンスをガッチリ車体側で受け止めることを可能にしていました。
前後13インチタイヤなどによる優れた直進性とコーナリング性能を持つスカイウェイブ400は、既存の250ccスクーターよりもはるかに高速道路の走りを楽しめました。そして大容量シート下トランクスペースなど、そのユーティリティ度の高さは250cc版と共通。自動二輪クラスのため、日本の法律では税金や車検などがおサイフ的には軽二輪クラスよりもマイナスでしたが、それを補って余りあるほどスカイウェイブ400の魅力度は高かったのです。
新たなマーケットを作り出したスカイウェイブ400!!
余談ですが、実は私(宮﨑)は初期型スカイウェイブ400を当時所有して愛用していました。厳冬期の往復500km以上の日帰り出張でも、ウインドプロテクション効果が高いスカイウェイブ400は楽々こなしてくれ、とても重宝したのを今もよく覚えています。
もちろん!? スカイウェイブ400に魅了されたのは私だけではないでしょう。日本の大都市圏同様、欧州各国の大都市圏は慢性的な渋滞に悩まされることが多く、快適かつ機動力のある移動手段としてのスクーターは人気を集めていました。ビジネススーツに身を包んでも運転していて違和感なく、250ccスクーターよりも快適に高速巡行できる400ccスクーターのバーグマン400は、ニーズをピッタリ満たすモデルだったのです。
スカイウェイブ/バーグマン400のヒットに反応し、やがてライバルメーカーからもスカイウェイブのフォロワーが続々と登場することになりました。そしてそれらが出揃うころには、英語で大型、特大を意味する語であるマキシ(Maxi)を使った、日本でいうところの自動二輪枠の「大排気量マキシスクーター」という新セグメントが、世界の2輪業界に広く認知されることになったのです。
2017年型から、バーグマンの名に統一されました!
2017年のモデルチェンジに合わせ、国内仕様のスカイウェイブの名は廃止されることになり、国際ブランドである「バーグマン」に統一されることになりました。
20世紀末に誕生したスカイウェイブ/バーグマン400ですが、もうすぐ四半世紀のアニバーサリーを迎えようというロングセラーシリーズになりました。近年はモーターサイクル的な走行性能を求め、車体中央にエンジンをレイアウトする大排気量マキシスクーターもありますが、シート下トランクスペースを稼ぐのに有利なユニットスイング方式を墨守(ぼくしゅ)することで、ユーザーに最大のユーティリティ性を提供するというバーグマン400のキープコンセプトぶりは、とても好ましい在り方と思います。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)