文:オートバイ編集部、太田安治
ヤマハ「FZR400R」特徴
画期的なアイデアを満載した意欲作!
レースの結果が人気とセールスに直結した1980年代、ヤマハはTT-F3クラスにワークスマシン・FZR400を投入。そこで培われたノウハウをフィードバックして、1984年にFZ400Rが登場。1986年にはFZR400へと進化を遂げていく。
エンジンを45度前傾させ、混合気をまっすぐ下方に送り込むダウンドラフト吸気やGPマシン譲りのアルミデルタボックスフレームなど、ワークスマシンの名にふさわしい技術が盛り込まれたが、1987年発売の限定車・FZR400Rではトルクの谷を解消する排気でデバイス「EXUP」が登場。後年のスーパースポーツに大きな影響を与える。
今回紹介する1989年のFZR400Rは、デルタボックススイングアームを採用した丸目2眼時代の集大成モデルだったが、過当競争の中で短命に終わった悲運の1台だ。
ヤマハ「FZR400R」回顧録(太田安治)
1984年デビューのFZ400Rが大ヒットしたヤマハは、1986年にアルミデルタボックスフレームに前傾45度のジェネシスエンジンを組み合わせたFZR400を投入。翌年には排気デバイスEXUPやクロスミッション、アルミタンクに一人乗り専用サスペンションなどを装備し、F3レーサーに保安部品を付けただけという構成のFZR400Rを限定販売した。
サーキットでの乗りやすさ、速さは文句なしだったが、クロスミッションのローギアは通常の2速ギアに近い変速比で、ゼロ発進には気を使い、前後サスペンション設定を含めた車体剛性も高く、街乗りでは扱いにくかった。まさに「過ぎたるは〜」で、今思えばレプリカブームの終焉を暗示した一台だが、この時に確立された技術やノウハウは1988、1989年のFZR400Rだけでなく、現在のYZF−R1に至るまでしっかりと受け継がれている。
ヤマハ「FZR400R」注目ポイント
ヤマハ「FZR400R」関連の歴代モデル 1984年~1989年
FZ400R(1984)
F3を戦うワークスマシン・FZR400と同時開発。XJ400Zベースのエンジンは59PSを発揮、1987年型ではフルカウル化された。
FZR400(1986)
F3チャンピオンを狙ったワークスマシン・YZF 400と同時開発。45度前傾のジェネシスエンジンやアルミデルタボックスフレームを採用。
FZR400R(1987)
エキパイの排圧をコントロールしてトルクの谷を解消する「EXUP」を採用した限定モデル。クロスミッションやシングルシートも装備。
FZR400(1988)
前年の限定モデルからEXUPやピストンクーラーなどを継承して熟成。新気導入ダクトのFAIなど、数々のアイデアも盛り込まれた。
FZR400R(1989)
車名に「R」が追加された進化版。スラントノーズを採用して空力特性を向上、新型スイングアーム採用など、足まわりも進化した。
FZR400RR(1989)
1年足らずでフルモデルチェンジ。外装を一新、エンジンは35度前傾の新作となり、デルタボックスフレームも新設計された。
ヤマハ「FZR400R」主なスペック
※1989年モデルの諸元
全長×全幅×全高 | 2020×685×1130mm |
ホイールベース | 1400mm |
最低地上高 | 135mm |
シート高 | 770mm |
車両重量 | 165kg(乾燥) |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 |
総排気量 | 399cc |
ボア×ストローク | 56.0×40.5mm |
圧縮比 | 11.5 |
最高出力 | 59PS/12000rpm |
最大トルク | 3.9kgf・m/9500rpm |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 | 17L |
変速機形式 | 6速リターン |
キャスター角 | 24゜ |
トレール量 | 89mm |
タイヤサイズ(前・後) | 110/70R17・140/60R18 |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク |
文:オートバイ編集部、太田安治