文:オートバイ編集部/写真:赤松 孝、南 孝幸、松川 忍
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR」(SC40)誕生ヒストリー
太い走りに磨きをかけた第2世代のBIG-1
CB1000SF誕生から5年。1996年に免許制度の改正があったその翌年に、ホンダから新たなビッグバイクが生まれる。それが「パワードカスタム」をコンセプトとしたX4だ。
カスタムとは、ホンダ用語でアメリカンスタイルのカテゴリーのことで、当時のビッグバイクの人気はネイキッドモデル、そこにアメリカンのイメージを重ねよう、というチャレンジ。教習所で大型二輪免許が取れるようになった時代、ドッと増えたビッグバイクライダーの幅広い趣向に合わせたモデルを目指したニューモデルだった。
ロー&ロングな車体に搭載されたのは、新設計の1284ccの排気量を持つ水冷並列4気筒。CB1000SFのエンジンをベースとしてピストン軸間距離を同一としながら、ボアを1mm、ストロークを13.6mmアップしたもので、CB1000SFと比べてピークトルクを37%向上させていた。
これは、排気量やパワーアップを望むCB1000SFファンの思いにドンピシャの新エンジン。X4からパワー特性をリファインし、低回転からゴリゴリと加速するトルク型エンジンに、4気筒エンジンらしい高回転の伸びを持たせたものが、新BIG-1のエンジンに選定されたのだ。
そして1997年の東京モーターショー。太い走りに、動力性能をアップさせた第二世代のBIG-1が誕生する。
CB1000SFとCB1300SF|クレイモデル比較
CB1000SF
CB1300SF
初代のCB1000SF(写真下左)と、フルモデルチェンジ版のCB1300SF(同右)のクレイモデル。車体の姿勢が前下がり後ろ上がりのCB1000SFから、やや水平基調とされているのがわかる。この時点でダブルプロリンクの採用を考えていたのがわかる。
CB1000SFとCB1300SF|出力特性比較
排気量が1000ccから1300ccとなったことで、パワー/トルクアップが図られた。先に発売されていたX4とも比較しての出力特性比較ではCB1300SFがやや高回転型になっているのがわかる。
走りで勝負する新スーパーフォア初代1000SFを上回る人気に
X4の新型水冷並列4気筒エンジンと、モノバックボーンフレームをベースに生まれたのが、新BIG-1ことCB1300スーパーフォアだ。
「1000cc時代にたくさんのお客様が買ってくれて、僕も含め、ホンダ社員も80人くらいが買ってくれたんだ。そのユーザーの声を聞いてみると、やっぱり1000ccじゃ小さい、93PSじゃ足りないというんだ。それならばX4の1300ccを使おう、ってことになったんだ」とは、初代CB1000SFと同じく、X4のプロジェクトも率いた、ホンダ開発者の原国隆さん。
排気量アップと同時に、サイズが大きすぎるという声にも対応して、シート高も引き下げた。パワーアップでブレーキの強化や車体剛性の確保など、車両重量は17kgアップ。それでも軽快なハンドリングを実現するため、前後17インチラジアルタイヤや、リアサスのダブルプロリンクも採用している。
「1000ではスタイリングで勝負して、1300ではより性能を上げたい、という思いでした。これで狙い通りのパフォーマンスは出せたけれど、ライダーの走りの意思が反映させにくくなったのかもしれません」(原さん)
実際に1300cc化された新スーパーフォアは、よりどっしりとした手応えになったものの、重心は下がってハンドリングは軽快になり、シート高も数字以上に足つきが向上。
さらに低回転からトルクアップを果たした1300ccエンジンは、高回転の伸びも力強く、低く太く、速くなった、という印象が残っている。
そしてCB1300SFは、いろんなユーザー層の意見を取り入れた、免許制度の改正でドッと増えた大型二輪免許ライダーに歓迎され、発売された1998年に、販売計画を上回る約4600台を販売し、ベストセラーの座をキープ。登場年に約4000台を売り上げたCB1000SFを越えてみせた。
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR」(SC40)主なスペック
※《》は単色
全長×全幅×全高 | 2200×780×1165mm |
ホイールベース | 1545mm |
最低地上高 | 130mm |
シート高 | 790mm |
車両重量 | 273kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 |
総排気量 | 1284cc |
ボア×ストローク | 78.0×67.2mm |
圧縮比 | 9.6 |
最高出力 | 100PS/7500rpm |
最大トルク | 12.2kgf・m/5000rpm |
燃料タンク容量 | 21L |
変速機形式 | 5速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 130/70ZR17(62W)・190/60ZR17(78W) |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格(1998年当時) | 94万円(税別) |
文:オートバイ編集部/写真:赤松 孝、南 孝幸、松川 忍--