2023年3月24日に国内販売が開始されたスズキ・GSX-8S。街乗りをメインに、首都高速から新東名といった高速道路走行まで試乗した感想を掲載する。
文:山口銀次郎/写真:西野鉄兵

スズキ「GSX-8S」インプレ

画像: SUZUKI GSX-8S 総排気量:775cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 シート高:810mm 車両重量:202kg 発売日:2023年3月24日 税込価格:106万7000円

SUZUKI GSX-8S

総排気量:775cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:810mm
車両重量:202kg

発売日:2023年3月24日
税込価格:106万7000円

GSX-S1000からの流れを踏襲する、エッジの効いたスタイリッシュかつミニマムなデザインは、新エンジンと共に新たな個性を確立させている。佇まいからして、新しいネイキッドモデルであることを予感させるものだった。

仕事柄、新型車に試乗するチャンスが多く、ターゲットとするコンセプトによっては覚えのあるフィーリングや乗り心地がベースにあり、そこから派生する異なる特徴を感じ取っていたりした。それが、それぞれの個性だったり演出だったりすると認識して、インプレにも記載していた。

それぞれのモデルコンセプトによっては粗方の予想をしつつ試乗したりするのだが、GSX-8Sは近年稀な新たなエンジンフィーリングであり乗り味だったのだ。正直、その稀な個性は、今まで乗ってきたモデルに該当するものはなく、かなり困惑してしまった。スーパースポーツモデルから派生したスポーツネイキッドモデル、ストリートモデル、ネイキッドモデル、ストリートファイター……わかりやすく一言で現わせるキャラクターが思い浮かばないのだ。

画像1: スズキ「GSX-8S」インプレ

困った私は、試乗が許された時間の限り、未舗装路以外の市街地や高速まで、様々なシチュエーションを400km以上走り回って、なんとなく自分の中の答えを導くことが出来た。もちろん確かな正解ではないと思うが、人に「GSX-8Sは、こんなバイクだよ」と紹介する自分なりに解釈したキャラクターの答えは『スーパーモタード』だった。

前後17インチホイールの採用は、使い勝手の良い車重や車格となるストリートモデルではオーソドックスなチョイスとなり、クセのないハンドリングや旋回性に貢献するセットとなる。生粋のストリートモデルとして誕生したGSX-8Sも、その前後17インチホイールセットだが、スポーツモデルともネイキッドモデルとも異なる乗り心地なのだ。無論、軽快なハンドリングや車体を落ち着かせるクッション性能、ストップ&ゴーもキッチリ支える車体等々、時代をリードするといっても過言ではなく、キッチリと街乗りに照準を合わせた仕上がりをみせる。

だが、今まで乗ってきたどのモデルとも異なるのだ。

画像2: スズキ「GSX-8S」インプレ

スイングアームは確かに長い設定なのかもしれないが、異例なほどの長さでない。前後長が抑えられたエンジンのメインマス(クランランク部)は前方というよりは、ステップやスイングアームを支持するピボット寄りに存在が感じられる。その配置関係はスーパーモタード車のベースとなるオフ車とは言い辛い構成なのだが、フロントフォークを支持(フロントフォークの首振り部分)する部分のヘッドパイプ位置がかなり高く設定されているのだ。そのヘッドパイプ位置は、スーパースポーツはもちろんストリートモデルよりも、フロントフォーク長が長く19インチ〜21インチと大きなフロントホイールを装備するオフ車寄りの高さにあるのだ。

このヘッドパイプ位置の高さが作用するのか、車体を寝かしむ動作や、車体を翻す際のフィーリングが大らかな印象がある。大らかといっても、鈍重さや応答性が悪いということは一切なく、右左折や旋回性については軽快そのもの。当然、フロントから切れ込むと印象付ける鋭さは皆無だ。スポーツモデルに慣れ親しんでいると忘れてしまいがちな「車体を翻し腰で乗る」といった操作性に優雅さや充実感が伴い、操る根本的な楽しさを感じやすくなっているかもしれない。

画像3: スズキ「GSX-8S」インプレ

ちなみに、燃料タンクエンドの絞り込みもさることながら、ステップ付近の車体幅の狭さは、ミドルクラスであることが嘘のようなスリムさとなっている。

GSX-8Sのトピックといえばエンジンである。この並列2気筒775ccエンジンは、ミドルクラスならではのガツガツとしたパンチの効いた出力が抑えられており、滑らかでいてトルクフルなフィーリングが印象的だ。クランク軸に対し90度の位置に1次バランサーを2軸で配置する「スズキクロスバランサー」により、今までにないフワ〜〜ッと軽やかに湧き上がるチカラが演出されている。発進時に自動でエンジン回転数の落ち込みを抑制し、クラッチを繋ぐだけでスルスルっと発進できてしまう、「ローRPMアシスト」も採用されているのも嬉しい。

2気筒ならではの手応えはあるものの、ガツガツとしたチカラの出方に気圧されることなく、分厚いトルクをコントロールするダイナミックさに満ちている。ライディングモードが3タイプ設定されているが、そのコントローラブルな特性は変わることなく、鋭さや過剰な反応は抑えられており、実にフレンドリーなパッケージのエンジンだろう。

画像4: スズキ「GSX-8S」インプレ

トルクフルなエンジン低回転域のみを常用しても、車体を軽やかに&速やかに推し進め、高速道路であろうが法定速度上限まで淀みなく加速させてしまうことが可能だ。低〜中回転域ではあまりに優雅かつ滑らかな出力特性で、1気筒400ccに迫るビッグツインであることを忘れがちになるのだが、エンジン6千回転以上の吹け上がり加速は、出力がカットされるエンジン1万回転まで、スポーツモデルを彷彿させる獰猛さを発揮する。

GSX-8Sは、トルクフルなエンジンフィールのコンパクトエンジンと、今までにない車体とのマッチにより、新感覚であり新機軸のストリートモデルであることは間違いないだろう!

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