文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
「XL750トランザルプ」vs「Vストローム 800DE」比較インプレ(宮崎敬一郎)
走りのキャラの違いを生む「スタンス」の違い
2020年、ほとんどオフローダーという出で立ちのアドベンチャーモデル、ヤマハ「テネレ700」が登場した。最小限の電制アシストしかなく、乗り手のスキルで高いポテンシャルを活かして好きに遊んで! といったスポーティなスタンスが特徴であり魅力だった。
プライスを抑えた上で、かなりの酷路に対応できる優れた走破能力を獲得。ただ快適に走るだけでなく、走破対象エリアの広さをセールスポイントとした。このテネレがVストローム800DEやXL750トランザルプに刺激を与えたと言ってもいいだろう。
だが、この最新の2車、走破能力というより、どういったスタンスでそういった道に挑むかといったところに大きな違いがある。
Vストローム800DEは非常に優れた走破性を生む上質な前後の足回りによって、かなりの起伏に富んだ凸凹を踏破できるポテンシャルがある。これが快適な乗り心地も生んでいるが、800DEの魅力は、この走破性を活かして、オフで積極的にスポーティな遊びまでできること。トラコンの「グラベル」モードなどはOEMタイヤのままで適度にスライドさせ、多くのライダーにビッグオフの醍醐味を体験させてしまう面倒見のよさだ。
対するXL750トランザルプはそうした道をイージーに踏破させることに専念したような作り込み。こちらの「グラベル」モードはスライドを抑え、多少のクレバスやステアケースを穏やかなスロットル操作で誰にでも確実に踏破させる。もちろん、スポーティな操作も各モードを設定すれば可能だが、酷路での必需品とも言えるアンダーガードが高価なオプション設定だったりして「挑みたい方はご準備とお覚悟を」といったスタンスのようだ。
この新作2車はともに気楽に操れるオールマィティーなアドベンチャーだが「スポーツ」に何を求めたかが違う。