文:中村浩史
ホンダ「Gold Wing」(GL1500/GL1800)1988年~2008年
水平対向6気筒エンジン搭載の世界最強のグランドツアラーが、ついに日本への輸入・販売をスタート!
1500cc化で国内正規発売GLついに第6世代へと進化!
初代1000ccモデル、1980年に2代目の1100ccとなり、1984年に1200ccの3代目へと進化してきたゴールドウイング。そして1988年には、オールニューの水平対向6気筒エンジンを搭載したGL1500がデビューする。
試作段階で15種類ものプロトタイプが数千時間のテストを繰り返した、といわれる4代目は、GLシリーズで初めて、アメリカ工場生産から日本に「輸入」という形で国内正規販売がスタート。1988年モデルは、年間700台限定発売、175万円だった。
1991年にはアメリカ生産10周年記念車が発売され、1995年にはGL誕生20周年も登場した。そして1500cc時代も、1999年モデルでいったん終了となる。
第4世代の1500ccバージョンも熟成を重ねながら、2001年には1800cc化されて第5世代に進化。実に13年ぶりのフルモデルチェンジで、2005年にはGL誕生30周年、2015年には40周年を達成! 2007年には世界で初めて二輪車用エアバッグシステムを標準装備したタイプも追加発売した。
そして第6世代、2018年に発売されたSC79へとつながっていくのだ。
ホンダ「Gold Wing (GL1500)」1988年
ホンダ「Gold Wing (GL1800) 」2001年
世界初‼ 二輪車用エアバッグを搭載
ホンダが2007年の第5世代GLに搭載したのは、二輪車で世界初採用となるエアバッグ。前面衝突でのライダーの飛び出しを抑制し、事故相手車両や道路施設、路面との打撃衝突による障害を軽減させるもので、スタンダードのGL1800(税抜310万円)に20万円高の価格設定で発売された。
センサーが衝突を検知し、ライダーの飛び出しによるエネルギーを吸収し終えるまで約0.15秒。現行モデルではエアバッグ搭載車のみが発売されている。
ホンダ「Gold Wing (GL1800)AIR BAG 」2007年
ライダーの乗車位置とメーターパネル間に展開するエアバッグ。1990年から開発がスタートし、2005年に一般発表。やはりテストベッドとなったのはGLシリーズだったという。
ホンダ「Gold Wing (GL1800)AIR BAG/NAVI」2008年
2008年にはビルトインナビを日本で初めて標準装備した仕様もタイプ追加。写真のようなメーターまわりのスペース取りの苦心も、ダブルウィッシュボーンサス開発のきっかけだ。
GLのカスタムモデル「ワルキューレ」1996年
ゴールドウィングをベースに生まれたスーパーマッシブクルーザー
GLの良さをもっと幅広い層に知ってもらうべく、マグナやシャドウなど、ホンダが「カスタム」と呼ぶアメリカンモデルの頂点に位置するモデルとして、開発が進んだのがワルキューレ。
国内販売されるようになった第4世代車の重厚なカウルを取り払い、ネイキッドスタイルとして25kgの軽量化に成功。GLの快適さをそのままに、ショートレンジでも走れる仕様としていた。
ホンダ「VALKYRIE」1996年
ホンダ「VALKYRIE TOURER」1996年
ワルキューレをベースに、大型スクリーンやサドルバッグを装備したのがワルキューレ・ツアラー。車両重量はワルキューレの16kg増。
若い世代に向けて登場した「F6B」「F6C」2013年・2014年
ゴールドウイングの超快適性をもっと幅広い層に味わってもらいたい
アメリカで確固たる地位を築いたゴールドウイングだったが、そのユーザー層はやはり限られていた。オートバイを使ったスポーツよりも旅を選ぶ、リッチで年齢層が高い、仕事をリタイヤしたようなライダーたち。
そこでホンダは、アメリカンカスタムを目指す。それが、1996年に発表された、第4世代1500ベースのワルキューレだ。GLベースのド迫力アメリカンといったイメージのワルキューレは、水冷6気筒モンスターに新たなファン層を開拓することになる。
ホンダは次に、GLをもっと気軽に軽快に楽しめるようにと、2013年に第5世代1800ベースにF6Bを作り出す。ショートスクリーンに、リアトランクレスとした軽快なフォルムは、ワルキューレとはまた違った新たなファン層を生み出すことに成功するのだ。
そして2014年には、F6Bからさらにカウルやサイドボックスを取り払ったようなF6Cを発表。サイズ感さえ分からなければ、GLがベースだと気づかないようなデザインに仕上がったF6Cは、もはやビッグネイキッドといっても差し支えない仕上がりだった。
第6世代のGLには、まだ存在していないF6シリーズ。F6「D」のド迫力デザインも見てみたい気がする。
ホンダ「Gold Wing F6B」2013年
前面4スピーカーを装備し、iPodやUSBメモリを接続して音楽ファイルを再生できるオーディオを標準装備。メーターパネルに液晶サブ画面も搭載される。
ホンダ「Gold Wing F6C」2014年
GLのカウル、サイドバッグやトランクを取り払って、シュラウドを持つラジエターをサイドマウントしたのがF6C。
GLの伝統や品質を継承しながら、今までGLに目を向けなかった層にアピールしたい、というのが下の図だ。
ホンダ「Gold Wing/Gold Wing Tour」2018年
17年ぶりのフルモデルチェンジを果たし、1800ccエンジンを搭載して新登場!
ホンダ「Gold Wing Tour Dual Clutch Transmission AIRBAG」2018年
エンジン
ユニカム式SOHC4バルブヘッドを持つ水冷水平対向6気筒エンジン。現行モデルはクラッチ操作の要らない、7速DCTのみの設定。先代モデルよりも小型軽量化されている。
フレーム&フロントサスペンション
現行ゴールドウイングのハンドリングを決定づけるアルミツインチューブフレームとダブルウィッシュボーン型フロントサスペンション。アクセサリー類のためのスペース効率にも優れている。
ホンダ「Gold Wing 」2018年
第6世代の初期はゴールドウイング/Tourの2本立てラインアップ。リアトランクやタンデムバックレストのないタイプはF6Bにも通じるスタイリングだったが、現行モデルでは消滅。
色褪せないGLコンセプト。もはやひとつのカテゴリーなのだ
そして1975年に1000ccでスタートしたゴールドウイングは、1100cc→1200cc→1500ccを経て1800ccへ。現行モデルは、第6世代に当たるモデルで、初期モデルのGL1000から48年が経ち、2025年にはGL誕生50周年記念モデルも発売されるかもしれない。
やはり、この50年の進化はものすごい。水平対向4気筒エンジンは6気筒になり、排気量1000ccで80PSを発揮したエンジンは、1800ccで126PSを発揮するまでになった。
初期の頃のモデルには装備されるはずもなかったABSもエアバッグも標準装備。パワーモードもトラクションコントロールもクルーズコントロールもついているし、サスペンションだってボタンひとつで調整できる。
けれど、変わらないものがある。初期モデルGL1000にも数年前に乗ったことがあるけれど、1970年代のオートバイとは思えないほどのジェントルなエンジンフィーリング、設計思想をきちんと感じられる低重心の走行フィーリング、そしてどこまでも走って行けそうなあの気持ちは、50年近くたった現在のゴールドウイングでも、少しも変わることがない。
低重心の車体設計で、クルージングの時に振動を感じることが少ない水平対向エンジン、そこにウィンドプロテクション性を上げて、いつまでもどこまでも走って行けるパッケージ、というゴールドウイングのスピリットは、50年が経とうとしている現在でも、少しも色褪せない。それどころか、時代に合わせて、環境性能も安全性もどんどん上がっているのだ。
今やロングツーリングをするなら、アドベンチャーやメガスポーツ、フルカウルツアラーなんてカテゴリーもある。それでもゴールドウイングは、ひとつのカテゴリーとして生き続ける。
文:中村浩史