ヤマハ「XVZ1200 VENTURE ROYALE」1983年
ゴールドウイングが呼び込んだ日本製ゴージャスツアラー
ホンダのゴールドウイングが開拓、先鞭をつけたゴージャスツアラーは、そのまま他メーカーのライバルモデルの誕生を呼び込むことになる。
真っ先に呼応したのはヤマハ。1982年のIFMAショーに、新設計のV型4気筒1200ccエンジンを搭載したベンチャー/ベンチャーロイヤルを発表。大排気量エンジン、ビッグカウル、シャフトドライブ、サイドバッグやトップケース、キング&クイーンと呼ばれるソファ然としたシートを持つスタンダード仕様と、オーディオ、CB無線を装備したタイプを用意している点からも、やはりこのジャンルはゴールドウイングが先鞭をつけ、アメリカのマーケットで育まれたことがわかる。
このベンチャーロイヤルも、やはりゴールドウイングと同じく、日本市場では、どこか他国の出来事――と捉えられてはいたが、ベンチャーロイヤルは1984年からはアメリカだけでなくヨーロッパ市場へも輸出されるようになり、さらに1985年発売のV-MAXにもベンチャーロイヤル用に新開発した水冷V4DOHCエンジンが転用されるという、意外な発展を見せていくのだ。
V型4気筒エンジン&様々な最新機能を搭載した最高級ツアラー
ヤマハで初めて採用された、新設計の水冷V4DOHC4バルブエンジンをはじめ、なにからなにまで新設計、専用設計のXVZ1200。スタンダードのベンチャーと、豪華バージョンのベンチャーロイヤルの2本立てで、シャフトドライブ、前後連動ブレーキ、クルーズコントロールなど、ゴージャスツアラーならではの装備も投入された。
ヤマハ「V-MAX」1984年
ヤマハ「ROYALE STAR」1996年
受け継がれるエンジン
ロードスポーツでもアメリカンでもない「ドラッグマシン」イメージで発売されたV-MAXも、実はベンチャー系の水冷V4エンジンを転用、アメリカはもちろん、日本でも大人気モデルとなった。このV4はその後、1300cc化されてベンチャーロイヤルに搭載された後、1996年発売のロイヤルスターシリーズにも受け継がれた。
ヤマハ「XVZ1300 VENTURE ROYALE」1988年
ヤマハ「XVZ1300TF」2013年
大排気量、シャフトドライブなどなどゴージャスツアラーの条件が定まっていく
1200ccでスタートしたベンチャーシリーズだが、アメリカというメインマーケットは、より大排気量、よりハイパワーを求められるお国柄。55MPH(約88km/h)でいつまでもどこまでも快適に走り続けるために、余裕あるハイパワーが必要とされるのだ。
そのためベンチャーシリーズは1986年にはボアを2mm広げ、1300cc化。90PSだった最高出力は、おなじ7000回転で100PSを発揮するようになっていた。
1980年代後半にもなると、ゴージャスツアラーに求められるキャラクターも定まってきて、熱ダレに強い水冷エンジン、余裕のパワーがある大排気量で、ドライブはシャフトドライブ、リモート式サスペンション調整などが必須条件となっていく。
さらに装備面ではビッグカウルにサイドケース&トランクを装備して、ラジオやCB無線とスピーカー、シートヒーターなどが横並び装備となり、これが原因で、日本市場や興味のない層からしてみれば「どのメーカーがどのモデルなのか」分かりにくくしてしまっていたのかもしれない。
なにせGLやベンチャーシリーズをはじめ、スズキ、カワサキがアメリカ市場にゴージャスツアラーを開発、熟成させている頃、日本ではほぼ正反対のポジションといっていい「レーサーレプリカ」ブームが巻き起こっていたのだ。
そしてヤマハベンチャーシリーズはアメリカンクルーザーと融合し、現在も生き続けている。
「ベンチャー」ブランド復活!
1996年にアメリカンクルーザースタイルのカテゴリーと融合し「ロイヤル」シリーズとして復活したゴージャスツアラーシリーズは、1999年にビッグカウル、レッグシールドを装備したロイヤルスター・ベンチャーに発展。ネーミングの順序こそ違えど「ベンチャー」ブランドが復活したとアメリカで話題となった。
文:中村浩史、RIDE編集部