カワサキ「900 SUPER4」(Z1)特徴
圧倒的な高性能と美しさで今も高い人気
北米市場では1960年代終盤からWシリーズ、マッハシリーズが一定の人気を得ていたカワサキだが、排ガス対策を織り込んだ世界戦略車として開発されたのがZ1こと900スーパー4。スタイリング、メカニズム、動力性能、いずれも当時のオートバイの水準を大きく超えたもので、長年にわたってライバルメーカーから目標とされた名車だ。
本来は750cc 4気筒エンジンを積むスーパースポーツとして開発され、実走テスト段階まで進んでいたが、ホンダのCB750フォアが先に登場したことで設計をやり直し、排気量を903ccとしたのは有名な話。
DOHCヘッドを採用したエンジンはカムシャフトやクランクにクロモリ素材を採用するなど過剰なほどに高品質な設計で、パワーはCB750フォアの67馬力を大きく超える82馬力。当時の海外メディアはこぞって動力性能テストを実施し、ゼロヨン加速は12秒台、最高速も200km/hオーバーをマークして世界最強のパフォーマンスを実証した。
群を抜く高性能、美しいスタイリングもさることながら、排気量アップやハードなチューンにも耐える耐久性の高さにより、欧米やオセアニアのレースでも大活躍。生産終了後もカスタム需要が衰えず、長年にわたって市場の中心にいたことも人気の理由。今でも愛される、日本のバイク史に輝く傑作だ。
カワサキ「900 SUPER4」(Z1)各部装備・ディテール解説
カワサキ「900 SUPER4」(Z1)主なスペック
全長×全幅×全高 | 2200×865×1170mm |
ホイールベース | 1490mm |
最低地上高 | 165mm |
シート高 | 813mm |
車両重量 | 230kg |
エンジン形式 | 空冷4ストDOHC2バルブ並列4気筒 |
総排気量 | 903.2cc |
ボア×ストローク | 66×66mm |
圧縮比 | 8.5 |
最高出力 | 82HP/8500rpm |
最大トルク | 7.5kgf・m/7000rpm |
燃料タンク容量 | 18L |
変速機形式 | 5速リターン |
キャスター角 | 26゜ |
トレール量 | 90mm |
タイヤサイズ(前・後) | 3.25H-19・4.00H-18 |
ブレーキ形式(前・後) | Φ296mmディスク・Φ200mmドラム |
カワサキ「750RS」(Z2)特徴
若者から羨望の眼差しを集めた国内仕様
Z1発売当初、カワサキは903ccのままでの国内導入を検討していたが、当時の自主規制の影響を受け、排気量を749.3ccとしたZ2が誕生した。エンジンはボア、ストロークともに縮小。クランクシャフトは新作され、非常にコストのかかる贅沢な仕様となった。パワーは69HPで、CB750フォアを打ち負かすには十分な性能だった。
【豆知識】カワサキの野望を叶えた“ニューヨークステーキ”
Z1開発当時、カワサキはそれぞれのニューモデルの開発コード名に「ステーキ」の名をつけていた。Z1が「ニューヨークステーキ」と呼ばれていた話は有名だが、その他にも400RSが「ハリバットステーキ」、Z650は「サーロインステーキ」、Z750Tは「Tボーンステーキ」と呼ばれていた。新型車にステーキという呼称をつけるあたりに、当時の北米市場を重視していたカワサキの戦略が見えて面白い。
文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸