※本企画はHeritage&Legends 2022年6月号に掲載された記事を再編集したものです。
レストア後の美しさを維持するコーティング
「塗装部門に力を入れてます。それにコーティングも始めました」
TTRモータースの代表・林さんは自店の新しい動きを即答してくれた。もちろん、TTRで扱いの多いCB-F/R系を念頭に置いてという話だ。上にあるアイキャッチのホイールや後ろに写る車両=CB750FBBは、それらの施工例。新品/新車が展示されているような質感と艶やかさが見て取れる。先に、身近ですぐ施工できそうなコーティングのことを聞いてみよう。
「優れたガラスコーティングができるということで、シュアラスターの業務用を使います。その、1300度でも耐えるという耐熱性に注目しました。これはエンジンやマフラーにも施工できるということですから、施工店になりました」
こう言いながら、林さんはコーティング施工の様子を再現してくれた。実際には下処理として施工車をシャンプー洗車し、拭き上げて乾かした上で行うが、ここではそれが済んで表面がきれいになった状態として作業した。
外装やフレームといった、普通にワックスがけするような部分。続けてエンジンやマフラー、ホイールへとコーティング剤を専用スポンジで塗り込み、すぐさま拭き取っていく。
ブレーキディスクやタイヤにグリップ、シートは除いて、ほぼ全体に施す。1台に施すのは約5時間、コーティング剤の乾燥/安定のために約1日の時間をおく。
「CB-F系もそうですが、最近の車両オーナーさんにはきれいな状態を維持したいという傾向が増えたようなので、そこに対応するんです。コーティング後は汚れも付きにくいし、付いても洗車等で落としやすくなります。それがエンジンやマフラーにも適用できる。自分では細かく作業できないなあという方は車両を持ち込んでもらえばいいですし、レストアやカスタムで車両がきれいになった状態でやれば、維持しやすくなります」
その“車両をきれいに”が、冒頭の塗装強化につながってくる。
外観仕上げだけでなく機能も持たせる塗装
そして塗装部門の強化。林さんはガンコート塗装、セラミック塗装、パウダーコートを挙げてくれた。どれもバイク界ではおなじみのものだが、どう使うのだろう。
「パウダーコートは、CB-F/Rの純正ホイールカラーを用意したんです。コムスター、裏コムスター、ブーメランコムスターのゴールド、シルバー。ブラックもできますし、(最上段、アイキャッチ写真にあった)FBBのホイールのようにリムとスポークの塗り分けもできます。
他の処理に比べて色がムラにならず揃いますし、褪せにくい。料金もリーズナブルで、純正ホイールのリフレッシュにお勧めです。
もちろんフレームにも施工できますし、色数も豊富にあることや、耐候性が高いことなどから、この車両のようにフロントフォークのボトムケースや、リヤショックスプリング(ブルー/ホワイト)に施したりできるんですよ」
林さんが紹介してくれたCB1100F・AMAスーパーバイクスタイルカスタムはスイングアームもUAS製にTTRで補強を加えた後にパウダーコートされている。さらにマフラーはモチーフとしたメガホンタイプ(スチール)にセラミック塗装を施している。またエンジンは外観をガンコートでブラックに仕上げた。
「どれも自社に専用のブースを作って塗装しています。需要もあるようなので、メニュー化したんです。セラミック塗装は1000度の耐熱性があって、今までマフラーに施工した車両では5年くらい保ってます。この車両のマフラーも塗装→装着から1年近く経ちますが、この通り。1100Fの高熱にもサビや剥がれがない」
熱が最も加わるエキパイの取付部、排気中の高温の水分が付きやすいエンド部とも、さらっとした塗装直後の感じをそのまま見せている。スチール管に出がちな点サビも、まったく見られない。つまり、内部劣化も抑えることになる。これは機能のための塗装と言える。ガンコートも同じ考えにある。
「ガンコートは、皆さんも知っているように元々は銃火器のための塗装です。耐薬品性が高く、表面硬度も高い。その上で、放熱性も高められます。熱を少しでもこもらせないようにすることは長い目で見れば内部劣化も抑えられるでしょうし、この放熱性向上は、空冷のCB-Fエンジンに向いていると思います。ブラック以外にも純正シルバーなどもできますよ」
要所要所で、それぞれの特徴を生かした塗装を施し、リフレッシュされた外観をトータルでより長く維持することができる。載せ替えや塗り替えによって回復しやすかった外装。そうでなかった=オーバーホール時などでないと考えなかったエンジンや足まわり、車体各部といった部分の塗装。これらを同列にできる。しかも後者にも色付けだけでない、耐久性強化などの機能が加わる。
あくまで塗装ですが、と林さんは言う。でも、これら(外装塗装もOK)を自社でできるのだから、種類で異なってしまう色味もより調整し、望みに近づけやすくなりバランスさせられることになる。
パーツからの美しさを車両全体で維持していく
TTRでは、今回紹介してきた各種塗装の前段階作業も用意している。エンジンやキャブレターを洗浄するオリジナルのRECS。ホイールはブラスト処理。これらで元々のパーツの下地を作った上で、機能塗装を施す。それらを組んで仕上がった車両は、水分やホコリ、泥、あるいは油分といった汚れも残りにくく、落としやすいことが分かるだろう。
その上で冒頭のようなコーティングを施せば、さらにその維持が容易になることも分かる。この一連の流れを知れば、これからのCB-F作りや、今所有している車両の再仕立ての際に加えておきたい要素と理解できるはずだ。
今CB-Fが手元にないけれどこれから手に入れたいという場合にも、TTRに相談すればいい。もう一台紹介する750Fはその例で、足まわりとフレームなどを中心に仕立てられたものだ。フロントにXJR、リヤはフレームをレイダウン加工した上でスズキ系パーツを用いて、ストレートに、現代的によく走る17インチスタイルのCB-Fを構築している。
エンジンは同店で展開する750Fのリビルドエンジンかと思ったが、異なる。元々が良好なエンジンということで、そのまま使われている。実際にオーナーも絶好調と言うほどのもので、そんな見極め方も参考にしておきたい。
このようなベースの状態を見極め、車両を構築するのも同店の得意分野。もちろん先に紹介したCB1100Fのような前後18インチホイール・スタイルも、ノーマルスタイルもOKだ。
塗装という、普通に考えれば仕上げの作業。そこに隠れていた機能を引き出した。すると、CB-Fの製作や維持に、新たな光が見えた。そう解釈していいだろう。
条件や環境に適した使い分けけでルックスも機能もトータルで向上される各種塗装
●ガンコート/エンジン
シリンダーやクランクケースなどのエンジン外観にはガンコート塗装。耐薬品性が高く剥がれに強く(落とす際はブラスト処理)、放熱性に優れる利点を空冷エンジンに対する利点として生かす形だ。写真のようなブラッククローム、ブラック、シルバーなども選べる。他の部分同様に、オーバーホールなどの際に合わせて作業すれば外観/内部ともいい状態を維持しやすくできる。
●セラミック塗装/マフラー
セラミックを配合した塗料で行うセラミック塗装。耐候性や密着性が高い点から、マフラーへの施工を勧める。高温や水分にさらされるエキパイや接続部、エンド部に出がちなサビを抑えるのに有効。塗膜のムラが出やすいがTTRでは写真のようにしっかりこれを抑えて均質な塗装を施す。
写真は施工後1年経過後のCB1100F用スチール管だが、サビやその予兆は見られない。
●パウダーコート/ホイール、フロントフォークアウター、スプリング、フレーム、etc…
耐候性に優れるパウダーコートは活用範囲の広い塗装。今回TTRでは写真のような純正ホイール再生塗装も設定した。ゴールドやシルバーはアルマイトに近い色を表現。塗膜も均質にしている点や塗膜によって内部保護性が高まる点にも注目したい。塗装のため、アイキャッチの車両に装着されているシルバー×ゴールドのようなリム/スポーク塗り分けもできる。ブラック(ホイールはH-D用)ほか、200種類に及ぶ色もある。TTRではこれらを自社で塗装する。
耐熱性も持ち全身の美しさを維持するコーティングもスタート
各塗装はそれ自体も耐候性が高いが、さらに美しさを維持するためにコーティングをするのも手だ。TTRはシュアラスター・シャイニーシールドの施工店となり、サービスを開始。約1300℃の耐熱性と約3年の効果持続が特徴という。写真のようにエンジンフィンやマフラー、フレーム等に専用スポンジで塗布→拭き取りで約5時間、その後1日で定着させる。施工費は洗車が不要なフルレストア車両で3万3000円程度、高圧洗浄まで行かない程度の洗車でいい車両なら7〜8万円を想定している。詳細は問い合わせを。