ミドルクラスのいいところと言えば、コントロールしきれるパワーと大きすぎないサイズだろう。ホンダの「CBR650R」とカワサキ「Z650RS」を比較していこう。
文:中村浩史/撮影:森 浩輔

ホンダ「CBR650R」・カワサキ「Z650RS」比較インプレ

画像: Honda CBR650R(左) 総排気量:648cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:810mm 車両重量:208kg 税込価格:107万8000円~111万1000円 Kawasaki Z650RS(右) 総排気量:649cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 シート高:800mm 車両重量:188kg 税込価格:103万4000円

Honda CBR650R(左)

総排気量:648cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:810mm
車両重量:208kg
税込価格:107万8000円~111万1000円

Kawasaki Z650RS(右)

総排気量:649cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:800mm
車両重量:188kg
税込価格:103万4000円

本来ならば比較する対象ではないのかもしれないけれど、CBとZ、4気筒と2気筒を同時比較してみる。軽量だと思っていたCBはこんなに重厚で鼓動少なめだと思っていたZはこんなに躍動する。どちらがいい、悪いではない同じ排気量でも、こんなに「楽しさ」が違うのだ。

印象の差が生じない同時試乗で、Zの頼もしさとCBRの安定感を知る

同じ650ccの2気筒モデルZと、4気筒モデルCBRを同じ条件で乗り比べてみる。それぞれ単独でテストすると、記憶の中での比較となり、実際にいま乗っている方がイイ、と感じることを防ぐ狙いもある。もちろん、この両モデルは過去にも試乗経験がある。

試乗はストリートを抜けて高速道路に乗り、ワイデンィングを回って帰ってくるという一般的なツーリングルート。行きと帰りで車両を入れ替え、距離は片道100kmほど。いろんなステージを回ることで、両モデルのいいところ、物足りないところがはっきりわかった試乗となった。

画像1: ホンダ「CBR650R」・カワサキ「Z650RS」比較インプレ

東京新橋の編集部を出てまず渋滞路に飛び込んだのはZ650RS。2気筒エンジンを使うエリアはせいぜい3000回転ほどで、軽量な車体に、レスポンスのいいトルクが使いやすい。特に、Ninja/Z650から大きく変更されたライディングポジションが効いていて、弱前傾よりももっと起きた上体のポジションが心地いい。650ccといえば立派なビッグバイクなのに、そのマスを感じさせない、力のある400ccという感じだった。

対してCBRは、やはり比較してみると4気筒エンジンとツインチューブフレームによる、Zに対して20kg重いのがよくわかる。重い部分はやはり車体中央部、ライダーの真下あたりのロール軸で、重いものが低いところに集まっているから、苦にするほどではないけれど、CBR単体で試乗した時には、ミドルサイズなりの軽量さ、コンパクトさを感じたのに、同時比較だとこうも違うものかと感じた。

けれど、高速道路ではこの印象が逆転。Zの軽快さよりも、CBRのどっしりした落ち着きが心地いい。もちろんCBRの安定性は、軽快なレーンチェンジも可能なのだけれど、Zの安定性は、やはりCBRには及ばない。このあたりは、ストリートバイクとツーリングバイクの味付けの違いも大きいのだろう。カウルの有無に関しては、せいぜい120km/hの制限速度では、ないよりもあった方が楽、という程度。

画像2: ホンダ「CBR650R」・カワサキ「Z650RS」比較インプレ

クルージングスピードでの快適性という意味でも、やはり4気筒エンジンの穏やかさを快適と感じる人の方が多いだろう。ここはやはり4気筒の得意分野で、CBRの無振動に近いシルキーなフィーリングと、Zの鼓動を感じさせるビートは、個人の好き好きに左右されると思う。ただし、走る距離が伸びれば伸びるほど、4気筒の快適さを大きく感じるはずだ。

ワインディングに踏み入れると、やはり常識的なスピードで走っている分にはZ650RSのパンチが気持ちいい。特に使うエンジンの回転域が気持ちのいいエリアに入りやすいのがZの2気筒で、街乗りや高速道路では使わないような回転域まで引っ張ると、Zはパワフルで気持ちのいい新しい表情を見せてくれることがわかった。

画像3: ホンダ「CBR650R」・カワサキ「Z650RS」比較インプレ

CBRはもっとスピードが高い局面、たとえばサーキット走行で真価を発揮しやすい。ワインディングを走ると、どうしても美味しい回転域を使うために低いギアで走ることになり、こうなると攻めの雰囲気が前面に出てしまって、もっとうまく走ろう、もっと速くコーナーを抜けようという気持ちに焦らされてしまう。

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ハンドリングにしても、Zに対してやはり20kgの重量増を感じてしまって、単独で乗っている時には、自由自在にコントロールできる車体だと感じていたのに、ライダーの動きにワンテンポ遅れてついてくる、言い換えれば安定性分の強いハンドリングを、扱いにくく感じてしまうのだ。

同条件で同じくらいのコースを同じくらいの距離走り、Zは約28km/L、CBは約24km/Lほど。この点は甲乙つけるほどの差ではないと思う。

ここから、荷物を積載したり、タンデムをしたり、実際の用途と評価基準は増えてくるだろうけれど、試乗を終えて感じたのは、比較すると非力に感じるZの意外な頼もしさと、CBRに感じた重量がそのまま安定性につながっていたこと。2気筒と4気筒、比較すべきものではないのは分かっていても、同じ排気量でこれほど選択の幅が広いのだと再認識させられた。

600RRにも1000RR-Rにもない650Rならではの楽しさの本質

「ホンダ並列4気筒エンジンに何が期待されているか」をテーマに開発がスタートしたというCBR650シリーズ。そのルーツは2014年発売のCB/CBR650Fで、やはり幅広いライダー層に受け入れられやすい車体サイズと、低中回転で扱いやすく、高回転で伸びやかなフィーリングを味わえる4気筒エンジンという、650ccらしいテーマで開発が進められた。

エンジンは滑らかなフィーリングを持つ並列4気筒で、特に4000回転以下をトップギアで走行できるトルクがあること。同時に、安定感あるハンドリングと、Uターンがしやすく、足つき性がいい車体構成としているのが新しい650ccのコンセプトだった。

600ccでも750ccでもない、650cc用に新設計された並列4気筒エンジンは、低回転の扱いやすさと4気筒らしい伸びやかな吹け上がりを両立するもので、それだけではなく上質感のあるサウンドや、吸排気系を含めたエンジン全体の造形が美しいこと、もテーマに開発が進められた。

このCBRは2017年モデルでマイナーチェンジを受け、よりスポーティな方向にモディファイ。さらに2019年にはさらにスポーティな方向に舵を切って、車名もCBR650F/CB650FからCBR650R/CB650Rに変更。これが今回取り上げた現行モデルだ。車体全体の軽量化やマスの集中を図り、エンジン面では特に中回転から高回転の出力特性をモディファイ。より「乗って乗りやすく、気持ちよく」なキャラクターを強化している。

650Fから650Rとなったことで、スポーティで普段使いも気持ちいい、を強化したCBR。これで、600RRにも1000RR-Rにもない、650らしいオリジナルな立ち位置を明確にしたといえるだろう。

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実際のユーザー層は、やはり600RRほどスポーツに振りすぎず、1000RR-Rほど持て余し感のない650をあえて選択したユーザー層で、そこにはビギナーよりもベテラン、それに女性ライダーも多いのだという。

CBR650Rを実際に乗り込んでみて、渋滞路の一般道の普段使いから、高速道路やワインディングを含むツーリングまで、幅広い扱いやすさが印象に残ったモデルでもある。もっとスポーツに振りたいならば600RRを、もっと強烈パワーが欲しいならば1000RR-Rがある中、あえて650を選ぶユーザーは、やはり自分できちんとオートバイを楽しめるオトナの層なのかもしれない。

ホンダ「CBR650R」カラーバリエーション

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ホンダ「CBR650R」と「CB650R」の違い

CBR650Rのネイキッドバージョンが、このCB650R。2台の違いはカウル有無とハンドルポジションくらいで、CB650Rの方がややハンドル高が高く、リラックスしたポジションをとることができる。2台の価格差は7万円(+税)だけCBRの方が高価だ。

画像: Honda CB650R 税込価格:100万1000円~

Honda CB650R

税込価格:100万1000円~

画像: Honda CBR650R 税込価格:107万8000円~

Honda CBR650R

税込価格:107万8000円~

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