文:中村浩史/撮影:森 浩輔
650ccなどミドルクラスバイクの魅力とは?
兄弟モデルがあるというのに650を選ぶツウな気持ち
400ccにはないハイパワーと、750ccにない軽量コンパクトなボディ。一般的に、それが「ミドルクラス」の大きなメリットだ。
同じ「大型二輪免許」枠なのに、1000ccやそれ以上を選ばず、ミドルクラスに乗る、または狙うユーザーは、きっと見栄を張らず、自分にいちばんフィットするオートバイを選んでいるイメージもある。いわばツウ好み。
それでもこのミドルクラスには、単気筒から4気筒までさまざまなエンジンバリエーションがある。別企画でも紹介したように、世界的に650ccクラスは2気筒エンジンの英国車からスタートし、日本車も並列2気筒エンジンのW1から始まり、BROSプロダクト1のVツインもあった。Z650で並列4気筒も、LS650サベージという単気筒モデルもあった。
カテゴリーも、ストリートモデルを基本に、最初のオフロードモデルがKLR650、アドベンチャーは天涯、クルーザーはXS650スペシャル。1982年にはXJ650とXN85というターボモデルもあったし、レースカテゴリー的に分類が難しそうなスーパースポーツで言えば、2002年にZX-6Rが600ccを突破して636ccという排気量を採用したことがあった。これはレースの排気量クラスにとらわれずに、理想のパワー/ウェイトバランスを追求した結果で、トライアンフ675デイトナも同じ理由だろう。
現行国産モデルの650cc人気モデルといえば、2気筒モデルのZ650RSと、4気筒モデルのCBR650Rだろう。VツインのSV650、700ccのMT‐07も忘れてはいけない。
Zはストリートスポーツ、CBRはツーリングスポーツといった味付けのモデルで、Zは近い排気量のモデルとして、スーパースポーツZX-6Rがあり、400ccには新たにZX-4R/RRが登場。ネオクラシックモデルとして考えればZ900RSも競合することがあるかもしれない。
CBRは排気量的にNC750が近く、400ccには兄弟モデルといっていいCBR400Rもラインアップされている。それでもZを、CBR650Rを選ぶのはなぜなのか――。
Z900RSは、650RSの兄弟モデルではあるけれど、取り回しもハンドリングも明らかに650の方が俊敏で軽快だ。900RSの111PSのパワーは魅力だが、650RSの68PSを不満に思う局面は少なかった。重く、力のある900よりも、軽く充分なパワーの650が光る。
同じくCBRは400Rの方が軽快で俊敏だけれど、650Rの気持ちのいいパワーフィーリングを味わうことができない。400Rの46PSが少し物足りないことも650ccが光る要因なのだろう。Zとは逆に、重く、力のある650の方が魅力的だった。