※本企画はHeritage&Legends 2023年4月号に掲載されたものです。
機能に意味のない硬さや重さはいらない?!
2005年頃からスイングアームを製作をスタートしたケイファクトリー。この18年の間にメインの母材である角パイプはもちろん、チェーン引き部分のパーツも大きく進化していて、「開けて曲がる」をテーマに、製品のしなやかさと軽さを追求してきた。
「日の字とビッグ目の字、母材の断面を見てもらうと、ビッグ目の字の方がスイングアームを上から見た時の母材の幅が狭く、さらに各部の肉厚も薄いんです。一見するとビッグ目の字の方が硬く見えるかもしれませんが、こちらの方がしなやかです。あとはバネ下のパーツですから軽さも追求しました。意味のない重さや硬さは要りません。でも軽くするほど難しいことはないんです」とケイファクトリーで開発を手掛ける広瀬信彦さん。
確かに母材の断面を見ると物凄く緻密に肉厚が調整されているのが分かるし、実際に持つとビッグ目の字の方が軽い。もちろん、この角パイプはケイファクトリーがスイングアーム専用に開発した母材。スイングアーム開発当初は5角形の母材を使っていたこともあったが、どんどん軽くしなやかな素材に変わってきた。
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横方向の剛性よりも縦方向の剛性が大切
「最初に製作したスイングアームは、かなり剛性を確保していました。そこから色々と検証を重ねながら、まだイケる、もう少しってどんどん軽くしなやかな方向に変えていったんです。スイングアームは横剛性よりも縦剛性が大切。ちょうど市販車のスーパースポーツのスイングアームも、横から見ると幅があるけれど上から見ると薄くて、そういった方向になってきた時期でした。剛性を確保する作りからトータルバランスを追求する=ライダー重視の作りに変わっていったんです」と広瀬さん。
「GPZ900Rだと、ビッグ目の字スイングアームを装着しただけで大幅な軽量化になり、確実にフィーリングが変わります。ビッグ目の字は本当にしなやかです。硬いと乗り味がゴツゴツしますし、突き上げもあり、タイヤを信頼しきれません。でもビッグ目の字はツーリングタイヤでもハイグリップタイヤでも、それぞれの個性を引き出せます。スイングアームが良いとサスペンションで色々とできるからです。また、これは見た目の話ですが200サイズのタイヤも履けるようになります」とMCジェンマの石田道彦さん。
石田さんはケイファクトリー製のスイングアームを初期から使い、その進化をずっと見てきた。ストリートでもレースでもビッグ目の字のしなやかさがあることで、車体のセットアップが決まりやすくなったという。
また、アクスルシャフト&チェーン引き部分を自社で設計&開発できるのもケイファクトリーの強み。この部分も初期の物と最新の物を見比べるとかなりディテールが異なり、やはり最新のものは軽さと強さを両立した作りなのだ。
ケイファクトリーのスイングアームは、ライダー目線の「開けて曲がる」というコンセプトを進化させ続けてきた。この機会に、質実剛健なルックスの中に宿るしなやかさで、走りを変えてみてはいかがだろう。
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人気のZ900RS/CAFE用ビッグ新型目の字スイングアーム
90×30mmのビッグサイズ目の字角パイプを使用した、ケイファクトリーのスイングアーム。上写真の通常モノサス用はアルミバフ仕上げで24万4200円。オプション(2万2000円)でアルマイト仕上げもオーダー可能だ。下はZ900RSを2本サス化できる遊び心溢れる仕様で、受注生産品。
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しなやかさを追求して、新たに母材を専用で製作
試しに同じ長さの角パイプの母材重量を計測してみると、70×35mm日の字は87gで、90×30mmのビッグ目の字は84gだった。ビッグ目の字は幅が5mm細く、各部の肉厚も薄いのも分かるだろう。剛性バランスを追求していった結果、路面からの過度な突き上げや、ゴツゴツしたフィーリングはどんどんなくなっていったという。
上写真の一番手前と奥の左側が最新デザインのエンドブロック。奥は右に行くほど世代が古くなっていく。最新型が394gなのに対し1世代前のものは414g。世代が新しくなるほど軽くなっている。2本サスの受け部分も一体で削り出すことで剛性を確保。アクスルシャフト径なども変更してきたのだ。