※本企画はHeritage&Legends 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです。
ZRX乗りという視点で合うパーツを吟味する
バフ仕上げのビレットパーツやスイングアーム、ゴールドのアクセントカラーを使いつつ、落ち着いた雰囲気も醸し出すDAEG。しゃぼん玉によるものだ。今回の話は同店マネージャーの滝川さん、スタッフの中村さん(ホロさんという通称の方が通りがいいとのこと)との共通認識だ。
「この車両は当店のお客様から委託販売の依頼を受けたもので、現オーナーさんが初めての大型バイクとして購入されました。改めて各部を吟味してみると、エンジンはきちんと整備されていて良好。
各部に付いていたパーツはほとんどがお勧めと言えるものでした。前後オーリンズサスやウイリースイングアーム。あえて換える、追加するような部分はなかったです。前後のブレーキディスクのグレードを揃えた程度で、内容も知っているので継続して面倒を見させていただいています」
良質な中古車両であり、かつ手の入った内容も分かっている。軽量化や各部作動性の向上という点も、新オーナーへのメリットになる。「当初は初の大型車にカスタム車でいいのかなと思いましたけど、機能向上していて良かった、と考えられました」とも続けてくれる。
こうした考えの背景には、かなり突っ込んだパーツまでを常に豊富に扱うというしゃぼん玉の特徴がある。お客さんもパーツを直に見て、感触を掴んだり比較したりもできる。その上で滝川さん、ホロさん(ふたりとも1100オーナー)ら車歴の長いZRX乗りのスタッフが、ZRXへの適合パーツが出るごとにそのメリットやデメリットを自ら試してきたという側面もある。
「ZRXはパーツが豊富です。でも、パーツをただ付けるだけでなく、その性能をきちんと引き出す。さらにその先も考えてお客さんのお手伝いをしたい。単に今付けるだけでなく、今後何か追加したいという考えがあるなら、それとのバランスも前もって考える。個々で良くても組み合わせた時のバランスもありますから」
同じZRX乗りとして、より楽しんでほしい。そういう姿勢だから、お勧め仕様も吟味される。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!
ネイキッドZRXをより楽しめるようなパーツ群
では、そのお勧めは? 今の車両動向も含めて教えてもらおう。
「まず動力系でいくと、マフラーは当店オリジナルのウエルド・モデルストリートスペシャル(1200/DAEG用はクローズドコース用)がお勧めで、一番人気。ルックスの面でも、パワー感という面でも両方で支持されています。
エンジン本体では、1200/DAEGはめっきシリンダーが装着されているのでボア拡大ではなくて、ハイコンプ化。ヴォスナーピストンでのハイパワーキット等を用意しています。
1100は鋳鉄スリーブですから、ボアアップも施せます。ワイセコφ78mm鍛造ピストンでの1109cc仕様はレスポンスも良く、160㎰は狙えますからいいメニューです。何かあってもう1サイズ上(コスワースφ79mm)までボアアップの余地を残しているのもいいですね。ノーマルでもチューンドでも、オイルはこだわった上で早め早めに交換するのがコンディション維持にはいいです」
コストは多少かかるが、逆に考えれば定期整備で壊れた時の費用より低く済むと言える。冷却系もラジエーターの大型化やパイプのチタン化で強化するとのこと。
車体側はどうだろう。前後17インチ標準だから難しくはないようだが、ここにも進化や変化がある。
「まず換えたいサスまわりは、ストリート主体ならハイパープロ。ツーリングでの疲れが減ります。リヤサス、フロントスプリングも。フロントフォークもボトムピースの削り出しルックスがカスタム感も高まるということで人気です。サーキットを走るならシングルレートスプリングでセットアップのしやすいオーリンズですね。当店ではオリジナルのシングルレート版ハイパープロも用意しています。
ブレーキまわりでは、最近ではゲイルスピードの人気が高い。マスターだと削り出しのエラボレート。キャリパーもそうなのですが、左右で色味がブラックで揃うんですね。それはヒント的にお勧めもしますし、それを知ったお客さんから“色を揃えたい”とオーダーをいただくこともあります。
ハードアルマイトはどうしても色の違いが出やすいので、それを避けたいというルックス面です。機能的に同レベルなら、次はそういう要素も重要視されます。
ブレーキディスクはサンスター・ワークスエキスパンドです。ここも当店オリジナルのコラボ品でインナーをガンメタにできます。DAEGではフラット、1200/1100ではオフセットタイプ、両方あります。スポーク形状やディスクの厚み、パッドの当たり幅(キャリパーとの組み合わせによっては当たり幅が異なり、ディスクに非使用域が出ることがある)までこだわるなら、プラスμ特注で製作するという手もあります。
ホイールはゲイルスピードをはじめとして、今の軽量・鍛造品ならどれも良くなります。接地感やダイレクト感、操作性。ここは好みでいいと思います」
機能面のアップデートが進んできたという意味でのパーツ選択幅は広がった。その上で、トータルのルックスやバランスを重視する要素を拾っていく。ホロさんは自身の車両ではパーツのオーバーホールタイミングが来たときにアップデートをすることも多いとも言う。これも見習っていいだろう。さらに紹介してくれたZRX1200Sは、そのための第一歩の見本と言える。
「吸排気系にブレーキ、サス、操作系。今後さらに手が入る構想もありますが、まずこれだけやれば十分楽しめますし、今後何か換える時も今付いているものが生きます」
せっかく選ぶのだから、何かを換える時に付かなくなる、外すものを避ける。これが冒頭のパーツ選択、また滝川さんを軸に力を入れる“しゃぼん玉ストリートスペシャル”につながってくる。
「サーキットを走るレギュレーションを満たしながら、それを公道でも成立させるパッケージです。アンダーカウルを例に取れば、空力もですがオイル受けの役目もある。これをマフラーが干渉するからと穴を開けては本末転倒です。パーツの意味や組み合わせを考えるって、そういうことです。
ZRXのオーナーさんもまだたくさんいます。長く乗ろうとか、これから乗りたいという方にも、それぞれに合うアドバイスはできると思います。ネイキッドのことならしゃぼん玉にお任せください」
ネイキッドだからすべてがルックスにも関わる。それも満たし、機能も満たしてバランスする。気になる仕様やパーツがあれば、同店へ相談するのは間違いがない。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!
人気のパーツやお勧めの組み合わせには理由がある
新作もまだまだ現れ、豊富なZRX用パーツ群。人気の移り変わりにも理由があるし、しゃぼん玉でのお勧めにも理由がある。その最新の様子をパートごとに見ていこう。
●性能やタッチの向上を前提にカラーにも配慮するブレーキ系
フロントブレーキ/クラッチのマスターシリンダーはタッチやコントロール性を高めるラジアルポンプ化が基本。いずれもゲイルスピードでまず写真の「RM」がお勧め。クラッチはφ17・5×17、ブレーキはφ19×19が売れ筋。好みで変えられる。
ブレーキキャリパーはブレンボまたは写真のゲイルスピードがお勧め。上写真のラジアル、下写真のアキシャルは好みでいい。最近は見た目もこだわる向きが増え、左右マスターシリンダーの色味の統一性(ハードアルマイトでは完全一致は難しい)で、ゲイルスピードのブラックの人気が高まっているとのことだ。
●ブレーキディスクにも機能&デザインの統一性を
ブレーキディスクは効力やルックスからサンスター・ワークスエキスパンド。上写真はフロント用でしゃぼん玉×サンスターコラボモデル。インナーがガンメタリックorブラックとなる。DAEGはフラットインナー、他はオフセットタイプ。あえてDAEGにオフセットタイプを使うケースも依頼できる。下写真はワークスエキスパンドディスクのリヤ用で右がDAEG、左が1200R/S用。
インナーを特注しO・Zホイールに直付けした例。
●カスタムやサーキットへのマッチング良好なオリジナルハンドル
ハンドルバーはゼファーではヘビーカスタム向けと仕分けているが、「ZRXシリーズには鉄板」(ホロさん、上写真はその車両装着例)という同店オリジナル“タッキーバー”。ツーリングにもOKでサーキットならより姿勢が決まる。もう15年以上ロットを重ねている点にも注目したい。
●軽量高剛性鍛造ホイールで運動性能も向上
ホイールは現代の鍛造ホイールなら軽量化や高剛性でハンドリングも軽くかつ安定し、運動性も増すなど好みでOKとのこと。ホロさんのZRX1100はO・Zレーシングを履く。
●フレームマウントカウル化も全体感を考慮
ヘッドライトまわりの重量をフレームに負担させハンドリングを軽快にするフレームマウントカウル化。ひと頃に比べると少し落ち着いたがというが、効果は捨てがたい。ここでもステーにアクティブ製を選ぶことでアゴ=下側の引きがやや強めになって精悍さが出せるという。こうした細かい部分にも目が届いている。
●メーターカスタムも人気メニュー
メーターはSTACK製を使うのが人気メニューのひとつ。ゼファーではノーマルケースに組み込むのが人気だが、ZRXではオリジナルでパネルを起こした上で組む(同店で製作可)方が多い。
●滝沢さん&ホロさんのZRX
上は滝川さんのZRX1100(1080cc仕様)、下はホロさんのZRX1100(2台目で1109cc仕様、フロントカウル等は外して店内にディスプレイされたデイトナ・ガレージ内に展示中)。どちらも約20年、カスタムや整備をしつつ現役で使われてきた。今もツーリングにサーキットにと走行を重ね、お客さんのZRXへのデータを積み上げる。