談:太田安治/写真:南 孝幸/まとめ:webオートバイ編集部
太田安治(おおた やすはる)
1957年、東京都生まれ。元ロードレース国際A級ライダーで、全日本ロードレースチーム監督、自動車専門学校講師、オートバイ用品開発などの活動と並行し、45年に渡って月刊『オートバイ』誌をメインにインプレッションや性能テストなどを担当。試乗したオートバイは5000台を超える。近年は、ムック『オートバイ125cc購入ガイド』のメインテスターも担当。現在の愛車はBMW「S 1000 R」ほか。
ヤマハ「XSR125」一問一答インプレッション
──実車を間近で見た感想を教えてください。
見ても跨がってもピンクナンバーの原付二種モデルとは思えない存在感があって、XSR700やXSR900に通ずるものがしっかりと感じられる。カラーは、ライトブルーやオレンジが3月のモーターサイクルショーに展示されていたけど、シルバーがシブくて高級感があった。ブラックもラインナップされているね。
──跨ってみて感じたことは?
今回の試乗会では、「YZF-R125」・「MT-125」も乗ったんだけど、一番シートが高く感じたのが「XSR125」。数値だと、XSR125はMT-125と同じ810mm、YZF-R125は815mmだから、シート幅の差かな。
原付二種にありがちな窮屈さはなくて、ゆったり乗れる。ライディングポジションはほかの2車とちがって、ハンドルが高くて幅広だから、堂々と胸を張ったような直立姿勢になる。
跨ってハンドルに触れると、ハンドルまわりのパーツもけっこう本格的に作り込まれていることが分かった。太めのレバーを採用して握ったときの感触も変えてあったりと、見た目だけじゃない拘りがある。妥協せずにコスト掛けてるなって感じたね。跨った状態でハンドル越しに見る景色は、原付二種に乗っているとは思えない。「おっ、ちゃんとXSRしてるじゃないか!」 って感じ。
──足つき性や取り回しはどうですか?
僕は両足かかとまで体重をのせて接地できたけど、身長160cm以下のライダーだと、両足をしっかり接地させるのは難しいかな。でも車体が軽いから、取り回しでの心配はないね。
──では、走り始めていかがでしたか?
水冷の単気筒エンジンは、スムーズに回ってくれて誰でも扱いやすい仕様だね。今回はミニコースでの試乗だったからやっと4速に入るくらいだったけど、中回転域からの加速に力強さを感じた。
今回出せた最高速は100km/hくらいかな。まだまだスピードが伸びていくという感触じゃないけれど、公道での使用に照準を絞ったXSR125なら充分。ガチャガチャ頻繁にギアチェンジをしなくても、しっかり走れちゃうのが印象的だった。その点は街で乗る上でも嬉しいポイントだよね。
──上体を伏せてスポーツ走行を本格的に楽しむような走り方もできるのでしょうか?
いや、それは似合わないなあ。ハンドル形状やライディングポジションの関係でライダーの重心が高い分、加速・減速でピッチングが大きめに出るから、サーキットでタイムアタックするような走り方だと車体姿勢のコントロールにコツがいる。
スポーツ走行をメインに楽しみたい人は、素直に「YZF-R125」や「MT-125」を選んだ方がいい。「XSR125」は上体を起こして腕の力を抜いて、エンジン回転だのギアの段数だのを気にしないで街乗りやツーリングをするのが楽しいオートバイだね。
──もっとも印象的だったことは何でしょう?
見ても乗っても、「原付二種らしくない」っていうのが印象的。前後17インチタイヤのフルサイズ車格だし、ハンドリングも素直で小径タイヤのミニバイクのような神経質さがない。中回転域の力強さと、ゆったりしたライポジで街乗りもツーリングも楽。細かな部分まで凝った作りで安っぽさがないから長く付き合えそう。「オートバイに乗っている」という充実感が高い仕上がりだね。
「YZF-R125」「MT-125」もそうだけど、ヤマハの国内正規モデルとしては久しぶりのマニュアルミッションの原付二種。もともと海外で販売されていた機種ではあるけれど、日本でも間違いなく人気を呼ぶだろうね。エントリーライダーが乗りやすいのはもちろんだけど、ベテランがセカンドバイクとして乗っても物足りなさは感じないよ。
談:太田安治/写真:南 孝幸/まとめ:webオートバイ編集部
詳しいインプレッションや装備解説は、12月1日発売の月刊『オートバイ』2024年1月号に掲載します。「YZF-R125」「MT-125」も合わせて徹底的に紹介予定、どうぞお楽しみに!