まとめ:オートバイ編集部
ヤマハ「トレーサー9 GT+」開発者インタビュー
「余裕」から生まれる安心感と走りの喜び
「アダプティブクルーズコントロール(ACC)に関しては、10年以上にわたって先行開発を続けてきたものです。搭載するモデルを限定せずに開発を続けてきましたが、それにふさわしいモデルのひとつであるトレーサーのモデルチェンジの時期と、ACCの開発状況がちょうどいいタイミングでマッチしたので、今回採用しました。ミリ波レーダー対応のユニファイドブレーキシステム(UBS)は、実はACCの先行開発とは別にアイデアが浮かんだもので、せっかくミリ波レーダーセンサーを搭載するのだから、これを活かして新しい装備を付けたい、ということで開発がスタートしました」
そう語るのはトレーサー9 GT+のプロジェクトリーダー、笠井聡さん。ヤマハ車としては初となるACCの採用、そして二輪車初となる、ミリ波レーダーに対応したアシスト機構付きのUBSを開発するにあたって、開発チームがもっとも重点を置いたのは「徹底した走り込み」だった。
「どんな車両でもマシン自体の開発はテストコースが中心ですが、お客様が乗られるのは、刻々と状況が変化して、まったく同じコンディションのない公道です。その公道でミリ波レーダーを活用したACCと、それに連携したUBSを使うわけですから、テストコースだけでは条件を再現しきれない公道でのデータをたくさん蓄積しました」
ひと口に走り込み、と言っても、あらゆるコンディションの中で走り込むのは非常に大変なこと。開発中は苦労も多かったのではないだろうか。
「たとえば、橋を渡っている時、橋げたにレーダーセンサーが反応したとします。その際、同じような状況でまた走って確認するのですが、状況の再現性の見極めがなかなか大変でした。今回の開発ではとにかく色々な状況を体験しよう、ということで、ヤマハの本社がある磐田を拠点として静岡周辺の道を徹底して走り込みました。ワインディング、高速道路から市街地まで、もう静岡の道は全部走ったんじゃないか、というぐらい走り込みました。ライダーの方が嫌がるような雨の日でも、これは貴重なデータが採れる、と、喜んで走りに出かけたほどです(笑)」
磨き抜いた最新技術から生まれたアイテムを装備する一方で、それにふさわしい高級感も重視して、GT+では細かいポイントにまでこだわったという。
「細かいところなんですが、ハンドルまわりのボルトやステーの仕上げを見直したり、ブレーキペダルを2分割のものに変更したり、ボディカラーに合わせて、エンブレムやデカールの位置まで変えたりして、上質感にはとことんこだわり抜きました」
徹底したこだわり、そして公道での走り込みから生まれた、絶妙なセッティングのライダーアシスト機構。しかも、日本の道を走り込んで開発されたトレーサー9 GT+は、まさしく日本の道にピッタリの一台なのだ。
「ACCやUBSはライダーの操作にも余裕を生み、結果的に疲労感も少なくなりますし、安全性も高まります。ワインディングへ走りに行く道中で、トレーサー9 GT+のこうした機能を使ってラクができれば、ワインディングをもっと堪能できるでしょうし、帰り道に楽しそうな道を発見したときも、ちょっと行ってみようかな、という気にさせてくれます。あと、このバイクは快適なだけでなく、スポーツバイク顔負けの走りも備えた『マルチロールファイター』です。ぜひ楽しんでください!」
ヤマハ「トレーサー9 GT+」動画・写真
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