世界の舞台に若い日本人ライダー&スタッフを!
2017~18年にTSRホンダ、21年にヨシムラスズキがワールドチャンピオンとなり、そして22年にTSRホンダが2度目のタイトルを獲るなど、この数年、日本でも注目が高まっている世界耐久選手権。
これまでは鈴鹿8耐に注目が集まっても、選手権全体にはもうひとつ……という状況だったものが、この5年ほどは世界耐久選手権シリーズ全体への注目度が高いのは事実だ。
その証拠のひとつに、日本勢の世界耐久への挑戦がある。上記のTSRホンダやヨシムラスズキのフル参戦はもちろん、23年からはカワサキのトップチームを日本のトリックスターレーシングが運営し、全日本ロードレースでもおなじみのTONE SYNCEDGE 4413 BMWが22年、23年と2年連続してボルドール24時間耐久にスポット参戦。渥美心や石塚健など、個人単位で世界耐久に挑戦するライダーも現われるなど、今や世界耐久は手の届く「世界のトップレース」のひとつと言えるだろう。
その世界耐久に、日本の新しいチームが参戦する準備を進めている。それが「チーム・エトワール」。ん?そんなチームあった?と思うのも無理はない、チーム・エトワールは全日本ロードレースに参戦した経験がない、まったくの新チームなのだ。
「はじめは私がミニバイクでレースをしていたチームが原型です。それがチーム・エトワールのスタート。ツインリンクもてぎで行なわれていた『DE耐』やエリア選手権を走っていたアマチュアチームです」というのは、チーム・エトワールの代表、市川貴志さん。自らもライダーだが、全日本ロードレースなどのトップカテゴリーに参戦経験はない。
市川さんがチーム結成を思いついたのは、ご自分でもレースを楽しみ、既存の全日本チームや若手ライダーのサポートを続けているうち、日本の若いライダーを世界の舞台へ連れ出してあげたい、と考えたからなのだという。世界の舞台と言えば、MotoGPやワールドスーパーバイク&スーパースポーツ、そして世界耐久。
「MotoGPやWSBKというと、やはりハードルが高すぎると思ったんです。それで全日本チームや鈴鹿8耐のサポートをして、わたし自身もレース活動に加わらせてもらううちに、世界耐久のすばらしさ、楽しさ、そして身近さを感じたからですね。22~23年のボルドール24時間も、SYNCEDGEさんのスタッフとして帯同させてもらいました」
すでに1年をかけて準備が進められていて、マシンはBMW M1000RRを使用し、日本は東京と、フランスはル・マンにガレージも用意した。BMWのオフィシャルパートナーであるアルファレーシングからも全戦エンジニアが派遣され、24年の世界耐久選手権SSTクラスにフル参戦を始める。少なくとも10年計画のレース戦略を練っているのだという。
「はじめは24時間耐久で安定して完走できるような基礎を作って、その次にSSTクラスの表彰台やシリーズを通した上位ランキングを狙って、5年後くらいにはトップカテゴリーEWCクラスにチャレンジしたい。そこで、徐々に若いライダーを起用して、メカニックも日本の若い人材を送り出して育てていきたいんです。僕らのチームを卒業して、フランスの世界耐久チームに引っ張られるようなライダーが出るような未来がきたら素晴らしいですね。ひとまず10年計画で進めて、私の次世代にもつなげるような活動にしていきたいです」
ライダーには21~23年のMotoEにフル参戦、世界のレースでの経験も豊富な大久保光、そして23年にヨシムラスズキRIDEWINから全日本ロードレースに参戦していた亀井雄大を起用。第3ライダーやバックアップも、今は選定中だという。
「徐々に外国人スタッフも増えていくでしょうが、まずはオールジャパンの新チームです。鈴鹿8耐にも世界耐久レギュラーチームとして参戦する形ですね。世界耐久というレースにももっともっと興味を持ってほしいし、日本から世界耐久に挑戦する仲間も増えてほしい。もちろんチーム・エトワールの応援もお願いします!」
チーム・エトワールの詳細は、https://note.com/team_etoile25/n/n685897f1f5acへ
チーム結成秘話は12月28日発売の月刊オートバイ2月号をお楽しみに!
写真提供/チーム・エトワール 文責/中村浩史