
細部に至る工夫で操作感や扱いやすさを高めていく
エンジン本体にも多くの工夫が凝らされる一方、そこで得られた良好な特性をしっかりライダーに伝え、操作感を高めつつ扱いやすく。そしてサウンドやルックスにと、吸排気系や動力伝達系などの補機類にも上質な操作フィールを生む多くの工夫が見られる。
まず動力伝達系では、アシスト機構とスリッパー機構を持ったクラッチ。現代バイクでは必需品となったこれは、クラッチを切るための入力を軽くし、加速時には伝達力を高める。クラッチに内蔵されたスプリングやリアホイールに内蔵されるハブダンパーは、単気筒エンジンで出がちなトルク変動による不快な振動を抑えるような選択と最適化を行っている。
シフトチェンジに必要な踏力を軽くするためにシフトガイドフォークシャフトとその軸受け間のクリアランスを最適化し、シフトドラム溝に沿って動くシフトフォークガイドピンの接触端面の面取り形状も適切にするなどした。
また、吸気経路のストレート化とともに、安定した性能を生むべく管長を確保するエアクリーナーボックス~吸気経路の構成。スロットル開度やギヤ段位によるエンジン回転変化に素直に反応する歯切れの良い鼓動をライダーに提供しながら、排出ガスの浄化を行い、性能を確保する。さらにバンク角を確保するようにと、1本出しの中に多様な要求を満たすマフラー。こうした工夫が、まさに全身に盛り込まれていると言えるのだ。

クラッチにはアルミカム アシストスリッパークラッチを採用。通常のクラッチに比べクラッチレバー操作荷重を約30%軽減したアシスト機能と、シフトダウンによる急激なエンジンブレーキによる不快なショックを緩和するスリッパー機能を持つ。頻繁なシフトを繰り返す市街地走行から長距離ツーリングまで、ライダーの疲労低減と快適性を提供する現代バイク標準の装備だ。

クラッチ部のプライマリードリブンギヤに配置されている6本のダンパースプリング。その硬さを最適化することで、単気筒エンジンが発する大きなトルク変動にともなう不快な振動を吸収し、鼓動感を活かした。

必要な量の新気を安定して取り入れるため、吸気口(下図の右側)を走行風による外乱影響が少ないエアクリーナー後方に配置。そこまでの空気はシート下とエアクリーナー上面の間の導入経路を主に入ってくるようにした。これらによって低回転からの力強さと、鼓動を感じられるクルージングの両立を可能としている。

エアクリーナーのクリーンサイドからスロットルボディーにつながるコネクティングチューブまでの吸気径路は、低速から力強いトルクを生み出せるよう管長が確保され、ストレート化による吸気抵抗低減も図られている。

開発初期段階から、より精細な音質をマネジメントしたGB350。マフラーは内部の排気管長をマフラー後端部まで確保するこで低回転域でトルクフルにし、大径Φ45mmのテールパイプでマフラー容量とバランスを最適化して、力強い低音を作り出す。


同時に、膨張室をシンプルな1室構造とすることで燃焼由来の音の鋭さをテールパイプまで導き、燃焼そのもののエネルギーに満ちた鼓動がライダーにクリアに伝わるようにチューニングした。またエキゾーストパイプを二重管構造とすることでGB350/Sともに熱による変色を抑え、キャタライザーをアンダーパイプに沿わせて直列に配置するなど配慮し、バンク角確保を図りながらすっきりした外観も作り出している。

リヤホイールハブ内に入り、加減速時の駆動系への衝撃を緩和するハブダンパー。大型クラス同様の5個仕様として緩衝力を増し、各部サイズや形状、硬度などを最適化して加減速時のギクシャク感を抑え、力強い加速感との両立を図っている。
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