派生モデルに適用されるスペックをアレンジする
1980年代には、名車と呼ばれるバイクが多く生まれた。同時に、そんな名車のコンポーネントを生かしながら派生または発展・進化したモデルや、逆に名車のベースとなったモデルも多くある。GSX1100Sカタナに対するGSX1100Eはこのうち後者の例と言えるだろう。GSX1100E。2バルブ4気筒のGS1000を発展させて4バルブ&オーバーリッターの1074cc化し、’80年型として登場した。出力も100psを超え、市販車世界最速を謳ったフラッグシップ。当時の流行でもあった直線基調を採り入れたボディは欧米でこそ地味、没個性とも言われたが、日本では福島の郷土玩具“赤べこ”に似ていると、同形状のナナハン、GSX750Eとともに“ベコ”と呼んで親しんだ人も多くいる。
そこでこの車両だ。ブライトロジックが手を入れたもので、ヘッドライトは同店オリジナルの5灯LEDになり、元の19/17インチからは前後18インチ化が行われている。合わせてブレーキまわりやリヤショック、キャブレターも現代的に変更される。
そうした変更によって、全体のイメージは“ベコ”そのものを引き継いでいながら、内容はしっかり今流にアップデートされたと言っていい。
ここまでの話や車両を見ていて気がついた方もいるだろうが、この手法、ブライトロジックから多く送り出されてきたGSX1100Sカタナのカスタムにも通じている。これは無理のない話で、前述のようにカタナはGSX-Eをベースにしているから。細かいことを言えば異なる部分もあるが、これまでにも紹介してきた車両と同様に、同店製カタナが持つ水準とスペックが愛すべき“ベコ”の形にプラスされている。
加えるなら、GSX1100Eが本来秘めていたポテンシャルを、今の環境下で無理なく引き出し、より楽しめるというパッケージだ。今のバイクシーンで注目されているネオレトロを、レトロの車両を元に作るとこうなるという表現の方が合っていそうだ。
当時のスタイルそのままに、しっかりした操作性を持たせ、ポテンシャルを引き出したた車両。GSX1100E自体のオーソドックスなルックスに似合う3本スポークホイールやブラック仕立てのエンジン&フレームはどんなシーンにも合う雰囲気も備えている。カタナカスタムのスペックは好きだが、もっとオーソドックスなスタイルでもいい。そうした向きにもピンと来るのではないだろうか。
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Detailed Description 詳細説明
ノーマルの角型ヘッドライトカウルに収まるのはブライトロジックオリジナルの5灯LEDヘッドライト。その上に置かれる角型メーターケースは純正形状ながらロア側をカーボンパターン仕立てとする。フロントマスターはブレンボRCS、クラッチホルダーはコーケン製で操作感を高めた。
メーターはGSX1100E純正を元にモビーディックが240km/hスケール加工し、ブライトロジックロゴとこれにフォントを合わせたオーナーネームを加え、右下のチェックモニター部にヨシムラ・プログレスメーターも追加している。
直線基調の中に丸みも合わせ持ち、まさに赤べこを思わせる形状やソリッドな赤カラーが引き立つ19L容量の燃料タンク。サイドカバーやテールカウルともにGSX1100Eノーマルのまま。
ダブルタイプのシートは表皮/内部形状とも変更し、快適性を高めるとともに操作性も高める。ナンバーボルトにはオーナーが“牛”(ベコ)文字のボルトキャップを加えた。
1074ccのエンジンはフル組み直し。同店で組んだエンジンは回転や調子の良さ、静かさに定評がある。このあたりはGSX1100Sカタナでも同じで、圧縮アップに加え、必要に応じて鍛造ピストン組み込みや排気量変更など柔軟に対応する。
キャブレターはヨシムラTMR-MJNφ40mmをパワーフィルター仕様で装着。DOHC16VALVESの表記が誇らしいサイドカバーエンブレムは純正そのままだ。
フロントフォークはφ37mmのノーマルをリセッティングし、ブレンボ・アキシャル4Pキャリパー/サンスター・トラッドTYPE2ディスクと組み合わせる。
リヤブレーキはブレンボ2Pキャリパー+サンスター・カスタムタイプディスク。ホイールは2.75-18/4.00-18サイズのマルケジーニ3本スポークでブリヂストンBT-016の110/80ZR18・150/70ZR18サイズタイヤを履かせる。排気系はブライトロジック4-1だ。
アルミスイングアームは純正で、ここではオーリンズ・ブラックラインショックや他のハードパーツに合わせて黒く処理した。
フレームはサブフレームの立ち上がり部分に補強を加える。シンプルなステップはブライトロジックオリジナルで、しっかり踏めて操作しやすい。