文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
トライアンフ「スピード 400」インプレ(太田安治)
上質でクラシカルな外観を持ちながら「スピード」の名にふさわしい俊足ぶり
400ccクラスの単気筒エンジンを搭載したロードスポーツといえば、43年間の歴史を持ち、2021年に生産を終了したヤマハSR400や、SRと入れ替わるように登場したホンダGB350、そして日本国内でも大人気となっている、ロイヤルエンフィールドの350ccシリーズを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
これらに共通しているのはシンプルなSOHC2バルブの空冷エンジン。ゆったりピストンが上下してクランクシャフトを回し、その力がリアタイヤに伝わって路面を蹴りつつ進む牧歌的な走行フィーリングが何よりの魅力だ。
今回イギリスの名門ブランド、トライアンフが新規投入したスピード400に登載されているのはDOHC4バルブの水冷エンジン。最高出力は40馬力で、SRの24馬力、GBやロイヤルエンフィールドの20馬力とは比較にならないスペックだ。ただ、そのルックスにはクラシカルなムードが漂うだけに、試乗前はキャラクターをイメージしにくかったのだが、走り出して5分で明確に理解した。「スピード」の名にふさわしい、スポーツマインド溢れるネイキッドモデルなのだ。
そのスポーツ性の核となるのが、どの回転域でもフリクションを感じさせずに軽く回るエンジン。低めの回転域でタタタ…という鼓動感を楽しむテイスト系とはまったく異なる特性で、特に5000回転から9000回転の範囲でのピックアップが鋭く、想像していた以上に強力なダッシュを楽しむことができた。171kgという車重は特に軽くはないが、シャープなレスポンスによって数値より軽く感じる。
単気筒らしさはないのか? と聞かれれば、答えはノー。テイスト重視のエンジンのようにロングストローク設定と重いクランクマスで意図的に低回転トルクを稼いでいるわけではないが、アイドリング回転のままスムーズに発進でき、6速・2000回転台、速度にして40km/h台からギクシャクせずに加速する。
GBなどと比べると爆発ごとの鼓動感こそ薄いが、250ccクラスのエンジンとは比較にならない力強さがある。中回転域を中心に広がっているパワーバンドが結果的に発進加速にまで及んでいる感触で、早めにシフトアップして3000回転台を保つ穏やかな走り方も楽しめる。
このエンジン特性を存分に堪能させてくれるのが、ストリート向きにチューニングされている車体。「スピード」という車名からは高剛性フレームと締まった前後サスペンションの組み合わせを想像しがちだが、シートレール別体の鋼管製クレードルフレームは自然な捻れ感を与えた剛性で、フロントの倒立フォークとリアのアルミスイングアーム+モノショックサスペンションはややソフトな設定。
これによって、素直で軽快なハンドリングと、ギャップでの突き上げ感が少ない乗り心地にまとまっている。このあたりもトライアンフのフィロソフィーがしっかり感じられるところだ。
塗装や溶接の美しさを含め、細部まで丁寧な作りで高級感も充分。これで70万円以下という価格にも驚かされる。エントリーユーザーからベテランまでを確実に満足させる一台だ。
トライアンフ「スピード 400」カラーバリエーション
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