1960年代まで世界のモーターサイクルはイギリスが牛耳っていた。日本が一矢を報い始めたのは1970年代の幕開けの少し前。そして1950年──日本がようやく「戦後」を脱し始めた頃、200km/hという夢の扉を突破したオートバイがあった。それが、ヴィンセント・ブラックシャドウ。そのスーパーバイクに適正な骨格を与えたのがフリッツ・エグリというフレームビルダーだった。
文:中村浩史/写真:松川 忍、モーターマガジンアーカイブス/車両協力:東本昌平

エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

画像1: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

エンジン+フレーム以外はオーダーメイド。歴史上、約200台分だけ製造されたと言われるヴィンセント用エグリフレーム。完成車として販売されたのは45台で、エンジン+フレームだけが基本形として決まっており、他のコンポーネンツは購入者のオーダーで組み立てられた。東本氏が所有する1台は、その40数台のうちの1台ということになる。


エンジン

メテオやコメットと呼ばれる500ccの単気筒エンジンを、47.5度のバンク角でV型に2基組み合わせた空冷Vツインが原形。ルーツは1936年(日本で言うと昭和11年!)デビューのシリーズAラパイドで、48年デビューのブラックシャドウはそのハイチューンバージョン。圧縮比を上げてハイカムを装着、45PSだった出力は55PSへアップし、最高速度は200km/hをマークしたと言われている。


キャブレター

画像2: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

英国車ファンからは怒られそうだが、ノーマルのアマルキャブレターが完調ではなく、ケーヒンFCRを装着。エンジンはオーダー時に998ccと1330ccが選べたのだという。


マフラー

画像3: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

Vツインエンジンに、マフラーは2 in 1レイアウト。この時代のエンジンらしく逆チェンジで、こちら側のペダルがシフトペダル。ノーマルはキックアームが標準装備だが、この車両はセルモーターを追加している。


フロントブレーキ

画像4: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

ブレーキはマグネシウムハウジングのフォンタナ製4リーディング式ドラムブレーキ。走行方向から冷却用空気を取り込むエアスクープ付きで、見るだけで美しいブレーキだ。


リアサスペンション

画像5: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

ヴィンセントの大きな特徴のひとつが、シート下にレイアウトされたカンチレバーサスだが、エグリ・ヴィンセントはコンベンショナルなツインショックを選択。東本車はさらにリアサスをナイトロン製に換装している。


ハンドルバー&ロケットカウル

画像6: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

ヴィンセントのエンジンをオリジナルフレームに搭載するのがエグリモデルの特徴。東本氏はブラックボディで、大好きなカフェレーサーシルエットでオーダー、低いハンドルバーとロケットカウルを装着している。


メーター

画像7: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

イギリス車の正統、スミス製クロノメトリック社製タコメーターとレブカウンター(=タコメーター)。スピードは250km/h、レブは8000rpmがフルスケール。セパレートハンドルはトマゼリ、電圧計はミラー社製。


燃料タンク

画像8: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

美しい曲線を描くアルミタンク。キャブレターの取り出しを避けるべく、くぼみが設けられる。フューエルキャップの前にあるのはオイル注入口で、タンク下部分のメインフレームがオイルタンクを兼ねている。


シート

画像9: エグリ ヴィンセント「ブラックシャドウ」各部装備・ディテール解説

乗りやすさや快適さがあるわけではないが、カフェレーサーの作法のひとつ、シングルシート。エグリ・ヴィンセントといえどもノーマルの姿にまったくこだわりのない東本氏は、シート先端下にETC車載器をマウントしている。

文:中村浩史/写真:松川 忍、モーターマガジンアーカイブス/車両協力:東本昌平

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