ホンダの公開特許が話題になっています。1981年にホンダが発売した4輪車「シティ」は、「モトコンポ」という原付一種モデルをリア側に車載できることを売りにした話題作でしたが、車載する2輪車のICE(内燃機関)をEVの航続距離を伸ばすための電気供給源・・・レンジエクステンダーとして活用するというのが、その特許の中身なのです!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事はウェブサイト「ロレンス」で2024年7月11日に公開されたものを一部編集し転載しています。

6輪生活を提唱した意欲作

1981年発売のホンダ シティとモトコンポは、2輪も4輪も手がけるホンダならではの、面白いコンセプトを盛り込んだ組み合わせでした。FF2ボックスのシティは、ボックス形状スタイリングのモトコンポがピッタリ収まるリアラゲッジスペースを設定しています。

画像: 1,231ccのシティと、50ccのモトコンポ。リアシート後ろに、モトコンポが収まるように作られていました。 lrnc.cc

1,231ccのシティと、50ccのモトコンポ。リアシート後ろに、モトコンポが収まるように作られていました。

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シティ+モトコンポの組み合わせ以前にも、ホンダはZ50Mからスタートする歴代モンキーや、ダックスホンダを乗用車のリアトランクに載せて楽しむ「6輪生活」コンセプトを提唱してきましたが、シティとモトコンポはより一層、過去作に比べると車載の簡単さにこだわっていました。

画像: 1969年発売のダックスホンダのカタログより。なおホンダ製品ではない、トヨタ コロナ マークⅡがこのカタログには使われていました。 www.autoby.jp

1969年発売のダックスホンダのカタログより。なおホンダ製品ではない、トヨタ コロナ マークⅡがこのカタログには使われていました。

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ハンドルなど出っ張るパーツはなるべく簡単に格納できるように設計。そして燃料や潤滑油が漏れにくいように車体は立てて搭載するなど、さまざまな工夫がシティとモトコンポ双方に施されていました。実用性が重視される大衆向け4輪車ゆえ、当時のシティを目にする機会は現在では限りなくゼロですが、気軽に所有し続けられる原付一種ということもあり、モトコンポは現在もコレクターアイテム的に扱われているのは周知のとおりです。

最近、オール電化?版シティ+モトコンポ的アイデアは披露されましたが・・・

EVの存在が当たり前のものとなった今日、2輪と4輪のEVを組み合わせるコンセプトは、さまざまなメーカーから提唱されています。その例の多くは、郊外までは4輪EVで快適に移動し、郊外と都市の境界部にある駐車場に4輪を停め、混雑していて駐車場所に困りがちな都市内は2輪EVで移動・・・という「パーク アンド ライド」という使い方を勧めるものです。

画像: 2021年にミュンヘンで開催された「IAAモビリティ2021」で発表された「SoFlow コンセプト クレバー コミュート インスパイアド バイ BMW」。BMW3シリーズの場合、縦長ラゲッジルームにリアバックレストを倒すことなく収めることができます。なお積む車がMINIの場合は、横にして積載することが可能です。 www.bmwgroup.com

2021年にミュンヘンで開催された「IAAモビリティ2021」で発表された「SoFlow コンセプト クレバー コミュート インスパイアド バイ BMW」。BMW3シリーズの場合、縦長ラゲッジルームにリアバックレストを倒すことなく収めることができます。なお積む車がMINIの場合は、横にして積載することが可能です。

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画像: 「ジャパンモビリティショー 2023」で世界初公開されたホンダの「SUSTAINA-C Concept」(左)と「Pocket Concept」は、EV時代のシティとモトコンポといえる組み合わせで、発表時多くの人々の注目を集めました。 smart-mobility.jp

「ジャパンモビリティショー 2023」で世界初公開されたホンダの「SUSTAINA-C Concept」(左)と「Pocket Concept」は、EV時代のシティとモトコンポといえる組み合わせで、発表時多くの人々の注目を集めました。

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画像: 北米で企画および販売されたホンダのMotocompacto。こちらも「ジャパンモビリティショー 2023」で公開され話題となりましたが、ボクシーなスタイルなどから、上掲のPocket Conceptよりもモトコンポっぽさを感じさせます。 www.autoby.jp

北米で企画および販売されたホンダのMotocompacto。こちらも「ジャパンモビリティショー 2023」で公開され話題となりましたが、ボクシーなスタイルなどから、上掲のPocket Conceptよりもモトコンポっぽさを感じさせます。

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ここに紹介するホンダの特許は4輪はEVで、それに搭載する2輪はICE搭載というのが、非常に興味深いポイントです。充電時間、航続距離という現時点のEV技術の欠点をカバーするために、発電用ICEから電気を供給するのがレンジエクステンダー方式ですが、ホンダの特許が示すのはその役目を4輪EVに車載するICE搭載2輪に担わせるわけです。

ICE搭載車の走行を禁止する都市などでは、この特許案はパーク アンド ライド用途には使えないですが、電力を供給する能しかないレンジエクステンダー用ICEを、車載用2輪車の動力源としてもフル活用するというのは、なかなかの一石二鳥的アイデアだと思います。

画像: ホンダの特許図より。リアオーバーハング部に収納されたレンジエクステンダー役のICE搭載2輪の、冷却および排気のためのファンが描かれています。

ホンダの特許図より。リアオーバーハング部に収納されたレンジエクステンダー役のICE搭載2輪の、冷却および排気のためのファンが描かれています。

ただ気になるのは、未だかつて4輪に2輪を積載する「6輪生活」製品というコンセプトが、公道用量産車の商品としての成功例がひとつもない・・・という現実です。残念ながらシティとモトコンポにしても、当時これらを組み合わせて使うことを楽しんだ方の例は少なく、セールス的には企画倒れだったといえます。

現在普及期にあるバッテリー交換式電動スクーターにしても、10kgに達しない重さの交換式バッテリーの積み下ろしが商品性を損ねる問題点として上げられています。交換式バッテリーよりはるかに重いであろう、レンジエクステンダー用ICE搭載2輪を躊躇することなく頻繁に積み下ろしして使えるユーザーが、はたして世の中にどれくらいいるのか・・・という疑問符が、このホンダの提案に対してはつきまといます。

ともあれ、この特許がそのままお蔵入りすることなく、ユニークかつ実用的な商品として世の中に登場することを願う人は、ホンダファン以外にも多いでしょう。近い将来、国内外の大規模ショーで、この特許を具現化にしたコンセプトモデルが登場することを期待しましょう!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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