直系後継エンジンによって可能性を広げるカスタム

赤いフレームに赤×銀ボディのSBE(’87年)カラーに前後18インチホイールやフロントフォークのゴールドカラーのマッチングも良好なカタナ。カスタムファクトリー刀鍛冶によるもので、注目はエンジン。そう、油冷ユニットに換装されている。当然、その理由や方法、背景を知りたくなる。

「“油冷エンジンを積んだカタナに乗りたい”というオーダーをいただいたんです。オーナーさんはもう1台、フルノーマルのカタナも持ってらして、この車両も加えて油冷との違いというか、カスタムバイクも楽しみたいという感じです。

手法としては当店にはエンジン位置(重量配分等)や補機類含めた取り回しなど油冷搭載のデータもありますし、カタナに油冷エンジンを積むマウントキット(エンジンハンガー)も販売していますから、過去の例と同様、無理なく積んでいます」

刀鍛冶・石井さんは言う。刀鍛冶はその名の通りにカタナ、そして油冷エンジンモデルのカスタムを中心としたショップでもあり、同店なら両車の融合は石井さんも言うように無理なく行える。

油冷エンジンはカタナのそれより前後/左右ともコンパクトになること、ノーマル状態でも出力が上がること(参考としてカタナの111PSに対してGSX-R1100初期型が130PS、後期型で143PS)も利点になる。

画像1: 直系後継エンジンによって可能性を広げるカスタム

「エンジンはJEピストンで1216ccにしてヨシムラST-1カムや当店で持っていた6速クロスミッションも組んでます。フルオーバーホールも兼ねてチューニングもしたという感じです。

ベースは1200(GSF1200等のφ79×59mm/1156cc)と言うか、1200と1100(GSX-R1100。前期はφ76×58mm/1052cc、後期はφ78×59mm/1127cc)のハイブリッドです。1200の腰上に後期1100の腰下、クランクは1200の組み合わせ。

クランクが1200なのは、カムチェーンのテンショナーガイドが1200用は新品が出るけれど1100用は出ない、つまり1100でフルオーバーホールができなくなってるからです。どうしても1100で行きたいなら、いい中古エンジンを探すしかないのが現状です。

シリンダーヘッドでも同じ油冷でも吸排気ポートの形が違っていて、1100の方がパワーが出るなどの特徴はあります。ですからそれぞれの特徴が分かっていれば、ブロック/パーツの組み合わせを変えて特性が変えられる。パワフルなエンジンを作るとか、応用の利く利点もあります。そういう意味でハイブリッドです」

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単に換装するだけでなく、今後のオーバーホールのための純正パーツの有無、そして求める特性まで考えた構成でのエンジン作り。カタナエンジンでも厳しくなる純正パーツ事情は、油冷だから大丈夫というわけでもないが、このように歴代モデルの組み合わせができるのはプラスとも言える。

車体も11カ所のフレーム補強が行われる。ネック下に背面、キャブレター後ろ(曲線状になった部分の内側にプレートを追加)。エンジン後ろの左右フレームをつなぐパートの連結部、ピボット上にリヤショックアッパー近辺。

純正φ37mmからφ43mmに太くされたフロントフォークをマウントするステムやスタビライザー付きスイングアームは刀鍛冶によるワンオフ品と、フレームにつながるパーツのノウハウもある。

ステップやバッテリーケースにシート下、トレー形状の電装マウントボックスも刀鍛冶のワンオフ。シリンダーヘッドに備わるオリジナルエンジンスライダーはカタナにも装着可能な同店販売品。

こうした細かいパーツ製作や、冒頭で石井さんが油冷機搭載のデータとして述べていた車体作りは、刀鍛冶の本領でもある。そして同店の油冷エンジン搭載の手法はTOT=テイスト・オブ・ツクバ、ハーキュリーズクラスにもう10年参戦し続けているレーサー、刀鍛冶“刀”によっても進化を続けている。エンジン仕様も車体も、冷却性を高めるためのエアフローも。それらで得たノウハウが改めて油冷カタナに反映されるという楽しみもある。この車両にもそれはいずれフィードバックされるだろうが、その前にノーマルとの違いをオーナーに聞いてみたくなる、そんな興味ある作りも楽しいのだ。

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Detailed Description 詳細説明

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スクリーンと綾織りカーボンのスクリーンベースはマジカルレーシング製。カウルリップもカーボン、ヘッドライトはLEDに換えられた。

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純正メーターが収まるメーターボックスはマジカルレーシング製。ステムは刀鍛冶ワンオフでセパレートのハンドルはベビーフェイス、フロントブレーキ/クラッチのマスターシリンダーはブレンボRCSを使う。燃料タンクもアルミ製に置換。

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エンジンは油冷1100/1200の混成でφ81mmのJE鍛造ピストン×59mmストロークの1200クランクによる1216cc仕様。カムはヨシムラST-2、ミッションは刀鍛冶6速クロス。シリンダーヘッドに付くアルミベース+ジュラコンスライダーのエンジンスライダーは刀鍛冶オリジナル。フレームはネック下/背面/エンジン後ろの左右連結バー基部/キャブレター後ろ/ピボット上/リヤショックアッパー近辺の11カ所を補強し赤で再塗装した。

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キャブレターはTMRφ40mmをSmoothStreamエアフィルター・オーバルタイプとともにセット。フィルターのレッドは車体各部のレッドと連携する配色となっている。

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排気系はテックサーフ製チタン4-1をセット。取り回しやパワーデリバリーを考えた組み合わせも油冷で各仕様を突き詰めた刀鍛冶のノウハウだ。

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シートはSBEに準じた前後赤仕様。テールカウルもカーボンとなり、リヤウインカーは純正位置、フロントはオイルクーラーサイドに移設される。

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ステップは刀鍛冶によるワンオフ品を使う。ピボット部上と下に見えるアルミ製のリヤエンジンハンガーは油冷エンジンをカタナフレームに積むためのもので、フロント側ともに刀鍛冶製だ。

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フロントフォークはラジアルマウントキャリパーが装着できるCB1300SF SP用オーリンズ(RWU)で、そのキャリパーはブレンボGP4-RS。ディスクにはサンスター・カスタムタイプをチョイス。

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リヤブレーキはブレンボP2-RS84 2pキャリパー+サンスターディスク、ホイールはアルミ鍛造のゲイルスピードTYPE-Nで2.75-18/4.50-18サイズを履く。

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純正よりも太い角断面でスタビライザーを加えたアルミスイングアームは刀鍛冶ワンオフで、オーリンズ・レジェンド・ツインショックを組み合わせてある。

取材協力:カスタムファクトリー 刀鍛冶

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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