文:ノア セレン/写真:南 孝幸
1980年代を知らなくても魅了されるスタイリング
都会の喧騒が目覚めるその前に、ひっそりと路地裏に佇む2台のXSR900 GP。ノスタルジーを感じさせる流麗なラインと真の美しさは時を超越する。ネオレトロなスタイリングに魂が宿るその瞬間を、じっくりと見ていこう。
ヤマハの強みはWGPだった、輝きだした新生ヘリテージ
ヤマハの強みはここだったか、とめて納得する。数あるレトロモダン、あるいはヘリテージなどと呼ばれる車種は基本的に同社が過去に販売した市販車を模したものが一般的だ。そしてヤマハの名車として思い浮かぶのは、RZ250をはじめ、FZ400R、RZV500Rなど数多くある。個性的なカウル形状にハイパフォーマンスエンジン、コレをリバイバルしてこそ、真のヤマハのヘリテージだろう。
そう考えるとヤマハのヘリテージ路線への兆候はあったのだ。YZF-R1だって極小ヘッドライトにゼッケンプレート風カウルを纏い、YZF-R7もまた1980年代を想わせるカラーを採用した。全てはXSR900GPを投入するための布石だったとも思えてしまう。大きなスクリーンとナックルガード、特徴的なシングルシートカウル…ファンからすれば「やっときたか!」という想いだろう。
一方で40代の筆者は「パステルダークグレー」のカラーリングを見て、安堵感にも包まれた。GPシーンの熱狂を知らない世代でも素直に「個性的でカッコいい」と思えるからだ。ヘリテージモデルは時として当時を知らない層を置き去りにすることもあるが、ヤマハはそうしなかった。「当時」を知らなくても新たな提案をしてくれているのだ。