文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事はウェブサイト「ロレンス」で2024年7月24日に公開されたものを一部編集し転載しています。
インドでは、すでに乗り物の燃料としてCNGが活用されています
バジャジが作っているフリーダム125は、世界初の量産CNGバイクとしてデビューしました。日本ではCNGを燃料にするICE(内燃機関)搭載車はあまり馴染みのない存在ですが、インドではCNGで走るトラックやリキシャ(3輪タクシー)がすでに広く使われており、バジャジはCNGリキシャを作っているメーカーでもあったりします。
ガソリン燃料のICEをCNG燃料仕様にするのは、いくつかの部品や設定を変えることで可能です。そのことはコスト的に大きなメリットですが、バジャジはフリーダム125を開発するにあたり、そのエンジンを一から設計することを選んでいます。高温かつ乾燥というCNGの特性に合わせ、ピストン形状などエンジンパーツはCNG燃料に最適化して設計。また空冷の冷却フィンを大型化するなど、標準的な4ストローク125cc車より冷却性を高めているのも、フリーダム125エンジンの特徴です。
インドではCNG車がすでに使われていることは上述のとおりですが、広いインドの全土にCNGスタンドが普及しているわけではありません。そのことを考慮して、フリーダム125はCNG燃料だけでなくガソリンも併用できるように設計されています。
フリーダム125の「メイン」の燃料である12.5リットルCNGタンクは筒状の形態で、重さにして2kgのCNGを運ぶことができます。最高出力は9.5ps/8,000rpm、最大トルクは9.7Nm/5,000rpm。最高速度は90.5km/hで、CNG燃料での航続距離は200kmと公称されています。
インドの環境にも、インド人のお財布にも優しいバイク!?
高圧の可燃性ガスであるCNGを充填したタンクを搭載するにあたり、バジャジはかなりハードな衝突テストおよび落下テストをフリーダム125開発時に行いました。また気密性を常に保つことが求められるCNGのバルブや配管類の設計にも、十分気を遣いました。
さて、あえてガソリンではなくCNGを燃料に使うことのメリットは、どこにあるのでしょうか? 地中から化石燃料としても、廃棄物由来のバイオ燃料としても、供給または製造できるのがCNGの特徴のひとつです。またCNGは化石燃料として燃やした場合、ガソリンよりもCO2(二酸化炭素)排出量を遥かに少なくすることができます。
燃焼プロセスだけでのCO2排出量は約1/4。そしてHC(炭化水素)やNOx(窒素酸化物)も大幅にガソリンより減らすことができるのは、CNGの大きなメリットです。さらにバイオ燃料CNGであれば、全体的なCO2排出量は化石由来の液体燃料の約85%まで削減できるので、より一層地球に優しい運用が可能になるのです。
バジャジはガソリンとCNGの価格差から、毎日フリーダム125を使えばガソリンICE搭載車と比較して最大50%の燃料コストを削減することができると主張しています。エコのために割高な費用を払うことに抵抗を感じる人は世界に多くいますが、環境にもお財布にも優しいことは積極的にその製品を選ぶことの動機になるポテンシャルが間違いなくあるでしょう。
フリーダム125はインド国内市場向けに作られた製品ですが、もしバイオCNGの有用性が今後多くの国および地域で注目されるようになれば、電動バイクや水素バイクよりも即効性のある、比較的という但し書きは付けども「地球に優しい2輪車」のあり方としてCNG燃料ICE搭載車が評価されるようになるのかもしれませんね。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)