究極を意味する文字『Z』、さらにそのナンバー1としてのネーミングが与えられた900Z1。考えてみればなんとも途方もない型式である。しかし量産4ストロークエンジンを持たなかったカワサキがメグロから学んだ技術と綿密なライバル分析から生み出した究極のZ1は、その型式どおりに、いやそれ以上にインパクトを与えるモデルとして、生誕51年を超えてなお輝きを放つ存在となってる。
文:バイカーズステーション編集部/写真:平野輝幸
※この記事はモーターマガジンムック『空冷Z伝 完全版』に掲載した記事を一部編集し転載しています。

カワサキ「900Super4(Z1)」各部装備・ディテール解説

画像: ヘッドライトは750SS(H2)と同じΦ170mmレンズを使用。耐震設計で、北米では12V50/35Wのセミシールドビームを採用している。

ヘッドライトは750SS(H2)と同じΦ170mmレンズを使用。耐震設計で、北米では12V50/35Wのセミシールドビームを採用している。

画像: 1972年から1973年中期まで生産された初期のヘッドライトステーは、フォーク側とステーの継ぎ目をロー付けしたあと段差を研磨し、メッキを施すという手の込んだ方法で質感を高めていた。Z1A以降は工程が省略されたため継ぎ目が残っている。

1972年から1973年中期まで生産された初期のヘッドライトステーは、フォーク側とステーの継ぎ目をロー付けしたあと段差を研磨し、メッキを施すという手の込んだ方法で質感を高めていた。Z1A以降は工程が省略されたため継ぎ目が残っている。

画像: 速度計、回転計とも指針式のメーターはND(日本電装、現デンソー)製。速度計は北米仕様が160mph(約257km/h)表示で、写真のように最初期は20マイルの数字が上にずれて印刷されている。なお、欧州仕様は240km/h表示だ。タコメーターは9000rpm以上がレッドゾーン。インジケーターは左からニュートラル、ウィンカー、ハイビーム、油圧警告で、Z1A以降は左のふたつが入れ代わり、左端がウィンカーとなっている。

速度計、回転計とも指針式のメーターはND(日本電装、現デンソー)製。速度計は北米仕様が160mph(約257km/h)表示で、写真のように最初期は20マイルの数字が上にずれて印刷されている。なお、欧州仕様は240km/h表示だ。タコメーターは9000rpm以上がレッドゾーン。インジケーターは左からニュートラル、ウィンカー、ハイビーム、油圧警告で、Z1A以降は左のふたつが入れ代わり、左端がウィンカーとなっている。

画像: 左側スイッチボックス。上からヘッドライトのハイ/ロービーム切り替え+パッシング(北米仕様はパッシングを使えないようにしてある)、ウィンカー、ホーンだ。Z1Bでは、パッシングスイッチ(北米を除く)の配置と文字表示が変更される。

左側スイッチボックス。上からヘッドライトのハイ/ロービーム切り替え+パッシング(北米仕様はパッシングを使えないようにしてある)、ウィンカー、ホーンだ。Z1Bでは、パッシングスイッチ(北米を除く)の配置と文字表示が変更される。

画像: 右側スイッチボックス。上段からキルスイッチ、ヘッドライトのオン/オフ、スターターボタンが並んでいる。なお、北米仕様ではポジションランプの機能と文字表示が除かれている。

右側スイッチボックス。上段からキルスイッチ、ヘッドライトのオン/オフ、スターターボタンが並んでいる。なお、北米仕様ではポジションランプの機能と文字表示が除かれている。

画像: フロントブレーキのマスターシリンダーはブラックアルマイト仕上げでピストン径は14mm。オプションのダブルディスク用にΦ15.8mmも用意された。北米仕様は、ブレーキフルードについてのコーションラベルがシート下に張られていたが、Z1A以降ではより目につくようリザーバータンクのキャップに印字。

フロントブレーキのマスターシリンダーはブラックアルマイト仕上げでピストン径は14mm。オプションのダブルディスク用にΦ15.8mmも用意された。北米仕様は、ブレーキフルードについてのコーションラベルがシート下に張られていたが、Z1A以降ではより目につくようリザーバータンクのキャップに印字。

画像: 1973年型のみに見られるクルーズコントロール。ネジでスロットル開度を固定するという原始的なもので、Z1Aで廃止になっている。

1973年型のみに見られるクルーズコントロール。ネジでスロットル開度を固定するという原始的なもので、Z1Aで廃止になっている。

画像: ブレーキホースのジョイントは、振動によるネジ留め部分の亀裂を防ぐため、Z1Bで肉厚を上げるなどの対策を実施した。

ブレーキホースのジョイントは、振動によるネジ留め部分の亀裂を防ぐため、Z1Bで肉厚を上げるなどの対策を実施した。

画像: 純正オプションとしてオイルクーラー(明石本社とUSカワサキが個別に販売したため2種類が存在)が用意されており、それを取り付けるための穴がフレームのガセットに開けられていたが、ここから亀裂が発生しやすく、Z1Bで穴開けは廃止に。

純正オプションとしてオイルクーラー(明石本社とUSカワサキが個別に販売したため2種類が存在)が用意されており、それを取り付けるための穴がフレームのガセットに開けられていたが、ここから亀裂が発生しやすく、Z1Bで穴開けは廃止に。

画像: 1972~1973年初頭までに生産された車両とそれ以降では、タンクの立体エンブレムの横幅が異なる。初期のものはタンク装着時において161mm、それ以降は186mmと25mmもの差があった。

1972~1973年初頭までに生産された車両とそれ以降では、タンクの立体エンブレムの横幅が異なる。初期のものはタンク装着時において161mm、それ以降は186mmと25mmもの差があった。

画像: サイドカバーのエンブレムはZ1とZ1Aで共通だが、Z1Bでは排気量を表す“900”をより目立たせるデザインへと変更された。カバー装着時の横幅はZ1用が139mm、Z1B用が148mm(実測値)。

サイドカバーのエンブレムはZ1とZ1Aで共通だが、Z1Bでは排気量を表す“900”をより目立たせるデザインへと変更された。カバー装着時の横幅はZ1用が139mm、Z1B用が148mm(実測値)。

画像: 燃料タンク左側にあるコックは、初期タイプがこの写真の黒塗装仕上げで、Z1Aからはアルミ地のままに変更されている。

燃料タンク左側にあるコックは、初期タイプがこの写真の黒塗装仕上げで、Z1Aからはアルミ地のままに変更されている。

画像: キャブレターは強制開閉式のミクニ製VM28SC。初期はフロート室真下の六角キャップを外すだけでメインジェットの交換ができたが、Z1A以降は斜め下からのマイナスビスドレンとなる。同時に、チョークレバーの改良をはじめ、フロートの形状や各ジェット類の番手変更なども実施されている。

キャブレターは強制開閉式のミクニ製VM28SC。初期はフロート室真下の六角キャップを外すだけでメインジェットの交換ができたが、Z1A以降は斜め下からのマイナスビスドレンとなる。同時に、チョークレバーの改良をはじめ、フロートの形状や各ジェット類の番手変更なども実施されている。

画像: CB750フォアがそうしたように、Z1も4気筒であることを誇示すべく左右2本ずつの4本出しマフラーを採用。この北米仕様には最初期の無番マフラーのリプロダクションパーツ(ドレミコレクション製。同社によると重量は純正とほぼ同じだという)が装着されている。純正、リプロ品とも、内部に堆積したカーボンが除去できるようバッフルが引き抜けるようになっている。 リアサスはスイングアーム+ツインショックで、北米仕様のためユニットの側面には赤いリフレクターが装備されている。プリロードが調整可能で、車載工具にフックレンチあり。左サイドカバー内にはチェーン注油用の白いオイルタンク(90番のオイルが900cc入る)がある。

CB750フォアがそうしたように、Z1も4気筒であることを誇示すべく左右2本ずつの4本出しマフラーを採用。この北米仕様には最初期の無番マフラーのリプロダクションパーツ(ドレミコレクション製。同社によると重量は純正とほぼ同じだという)が装着されている。純正、リプロ品とも、内部に堆積したカーボンが除去できるようバッフルが引き抜けるようになっている。

リアサスはスイングアーム+ツインショックで、北米仕様のためユニットの側面には赤いリフレクターが装備されている。プリロードが調整可能で、車載工具にフックレンチあり。左サイドカバー内にはチェーン注油用の白いオイルタンク(90番のオイルが900cc入る)がある。

画像: Φ36mm正立式フロントフォークのアウターチューブは、1973年型とそれ以降ではフロントフェンダーのボルトを受ける部分の鋳型が異なっており、後のものは補強のために肉盛りと研磨が施されている。北米仕様は法律により車両側面にリフレクターが取り付けられるが、欧州仕様はメッキのキャップが付く。

Φ36mm正立式フロントフォークのアウターチューブは、1973年型とそれ以降ではフロントフェンダーのボルトを受ける部分の鋳型が異なっており、後のものは補強のために肉盛りと研磨が施されている。北米仕様は法律により車両側面にリフレクターが取り付けられるが、欧州仕様はメッキのキャップが付く。

画像: 初代Z1からフロントブレーキはディスクで、外径は296mmを公称。キャリパーはΦ38mmピストンを使う片押し式。アンダーブラケット前側のジョイントからフロントフェンダー側面のステーまでをゴム、キャリパーまでをスチールパイプとしたホースを使う。

初代Z1からフロントブレーキはディスクで、外径は296mmを公称。キャリパーはΦ38mmピストンを使う片押し式。アンダーブラケット前側のジョイントからフロントフェンダー側面のステーまでをゴム、キャリパーまでをスチールパイプとしたホースを使う。

画像: リアブレーキはΦ200mmワンカム式ドラムで、トルクロッドとペダルの力を伝える作動用ロッドをスイングアーム下側に配する。

リアブレーキはΦ200mmワンカム式ドラムで、トルクロッドとペダルの力を伝える作動用ロッドをスイングアーム下側に配する。

画像: セルモーターのみではバッテリーが上がったときに不安なため、1970年代ではセル/キック併用式が常識的な装備だった。

セルモーターのみではバッテリーが上がったときに不安なため、1970年代ではセル/キック併用式が常識的な装備だった。

画像: マッハIIIでは右チェンジへの変更が考慮されたが、W1SAで右を左へ移したことから、Z1では左のみに割り切っている。

マッハIIIでは右チェンジへの変更が考慮されたが、W1SAで右を左へ移したことから、Z1では左のみに割り切っている。

画像: 後部のグラブバーだけでアメリカは2人乗りOKだが、欧州ではベルトが必要なためこれを装着。シート皮には数種ある。

後部のグラブバーだけでアメリカは2人乗りOKだが、欧州ではベルトが必要なためこれを装着。シート皮には数種ある。

画像: 横開きシートのヒンジピンを抜いてシートを外す。前から、エアクリーナーボックス、バッテリー、ツールケースの順番。

横開きシートのヒンジピンを抜いてシートを外す。前から、エアクリーナーボックス、バッテリー、ツールケースの順番。

画像: テールカウル内の引き出し式書類ケース。底面には配線図が貼ってある。左は純正のオーナーズマニュアル。なお、この車両ではヘルメットホルダーが外されている。

テールカウル内の引き出し式書類ケース。底面には配線図が貼ってある。左は純正のオーナーズマニュアル。なお、この車両ではヘルメットホルダーが外されている。

画像: 右側サイドカバーを外す。下部に4個のハーネス、その上にリレー、レクチファイア、フラッシャーリレー、底部にはレギュレーターと、バッテリー周辺に電装部品が収められる。

右側サイドカバーを外す。下部に4個のハーネス、その上にリレー、レクチファイア、フラッシャーリレー、底部にはレギュレーターと、バッテリー周辺に電装部品が収められる。

画像: テールカウル周辺の造形がZ1の特徴のひとつ。転倒時に力のかかる後部フラッシャーは、フレーム側ガセットステーとラバーマウント部の変形で破損を最小限とする設計だった。

テールカウル周辺の造形がZ1の特徴のひとつ。転倒時に力のかかる後部フラッシャーは、フレーム側ガセットステーとラバーマウント部の変形で破損を最小限とする設計だった。

画像: 車載工具一式。クロームメッキから、後にジンク仕上げへとなった。

車載工具一式。クロームメッキから、後にジンク仕上げへとなった。

使用した写真は、『バイカーズステーション』2004年2月号と同年4月号で掲載したもの。2004年4月号で掲載した車両は赤川さんというベテランライダーが所有されている車両で、1972年12月に生産された北米仕様の最初期型だ。車体もエンジンも3000番台後半で、一部のリプロパーツを除いてはほぼフルオリジナル、しかもノンレストアという奇跡的な一台である。

参考までにタイヤ銘柄を記すと、フロントはダンロップのゴールドシールF11 で、リアは同K70である。ストリップなどは『バイカーズステーション』2004年2月号に掲載したもので、車両は絶版車や旧車に強いウエマツから借用。これも美車だった。

カワサキ「900Super4(Z1)」主なスペック

全長×全幅×全高2200×865×1170mm
ホイールベース1490mm
最低地上高165mm
シート高813mm
乾燥重量230kg
エンジン形式空冷4ストDOHC2バルブ並列4気筒
総排気量903.2cc
ボア×ストローク66×66mm
圧縮比8.5
最高出力82HP/8500rpm
最大トルク7.5kgm/7000rpm
燃料供給方式VM28キャブレター
燃料タンク容量18L
変速機形式5速リターン
キャスター角26゜
トレール量90mm
ブレーキ形式(前・後)Φ296mmディスク・Φ200mmディスク
タイヤサイズ(前・後)3.25H-19・4.00H-18

文:バイカーズステーション編集部/写真:平野輝幸
※この記事はモーターマガジンムック『空冷Z伝 完全版』に掲載した記事を一部編集し転載しています。

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