文:バイカーズステーション編集部/写真:平野輝幸
※この記事はモーターマガジンムック『空冷Z伝 完全版』に掲載した記事を一部編集し転載しています。
カワサキ「900Super4(Z1)」特徴
永久なる名車“Z1”が誕生したのは1972年のモーターショー
1972年秋の東京モーターショーでは、2台の市販型Z1がフロアに置かれ、だれもが触れ、またがることができた。同じころには海外の多くの専門誌が試乗を行い、たくさんのテスト記事が掲載されていた。こうして、日本で、世界で、カワサキ製の900cc DOHC4気筒車は『購入できる夢のバイク』になっていった。
Z1は、ティアドロップタンクやダブルクレードルフレームにオーソドックスなオートバイらしさをみせながら、まったく新しい強力なエンジンにより、ゼロヨン12秒台、最高速度200km/hの圧倒的な高性能を持つことで王者(キング)の称号を与えられ、爆発的な人気を世界中で得た。DOHCフォアの先駆という本物の姿は、今日みても圧倒的な存在感である。
空冷DOHC4バルブ並列4気筒を採用した名機“Z1E”型エンジン
Z1エンジンの外寸は、全長534/全幅568/全高550mm、重量94.8kg。ボアとストロークが66mmと同値のスクエアは、ボアアップをも考慮した設計。903.2cc、圧縮比8.5にて82HP/8500rpmと7.5kgf・m/7000rpm。クロモリ製のクランクやカムシャフト、ミッションはすべて明石工場による内製。当時は素材の塊が工場に積まれて壮観だったという。
セルモーター機構はCB750フォアを参考にしたとみられ、モーターは三つ葉製で形式も同じ。キャブレターはミクニのVM28強制開閉式で、初期型はフロート室側面と上部のキャップがバフがけされ、カワサキがいかに質感にこだわったかがわかる。プラグキャップは欧州仕様がボッシュタイプのシールド型、上写真の北米仕様はプラスチック製。
エンジン着脱等整備性にも配慮されたフレームワーク
キャスター角26度は、W1系の29、H1/H2系の27〜29度に対し、当時としては立ち気味でトレールも90mmと少ない。こうした設定で安定を得るため軸間距離は1490mmと長い(CB750フォアは1455mm)。さらにZ1000-A1では1505mmに伸びる。チェーンの駒数が同じままなのは、ドリブンスプロケットを35→32歯としたため。公称乾燥重量は230kg(F:105kg/R:125kg)だが、バイカーズステーション編集部の実測では約240kg。