以下、文:丸山淳大/写真:南 孝幸
ヤマハ「XSR900 GP ABS」VS ヤマハ「XSR900 ABS」|各部チェック
1.電装部品の配置
電装部品搭載位置の試行錯誤が見え隠れ、絶対に大丈夫だろうけどやや気になる
ジェネレーターで発電した電気を交流から直流に変換し、電圧を12Vに制御するレギュレートレクチファイヤー。昔はシート下とかサイドカバー内とか雨の当たらないとこに設置されていたものだが、最近はノーガードで結構攻めたとこに付いていることも。
放熱性と雨などによる影響とを天秤にかけて放熱性を優先した結果かと思うが、特にGPの方はリアタイヤが巻き上げた水や砂利が直撃しそうなとこに付いていて、オジサンなのに老婆の心でやや心配。
だって、私でも価格的射程圏内に入りそうな中古車が出てくる10年後には防水カプラーのカバーとかパッキンとかが変形してそうじゃない? で、防水カバー単品部品出ないとかアリそうじゃない?(妄想です)
2.キャスター・トレール、燃費
同じに見えるが実は違う部品! コストより優先されたこだわりに感服
XSR900にカウルを付けて、セパハンにして、とりあえずそれっぽくしたのがGPであるかと思われるかもしれないが、実は見た目でわからない部分の相違点も多いのだ。
フロントのキャスター角は約0.3度GPの方が寝ていて、トレール量は2mm大きく取られている。フロント荷重増大に対する補正なのか、ハンドリングの味付けのためか? 狙いがあるのは間違いない。
また、車重はGPの方が7kg重いものの、GPの方が定地燃費では0.5km/L、WMTCモード値で0.7km/L燃費が良いのだ。カウリングの空力が功を奏しているのではないだろうか。
その他、一緒でも良さそうなシート、燃料タンク形状も微妙に異なるし、フレームも微妙に違う。コストよりもクオリティを優先した造り込みに萌えるのだ!
3.ライディングポジション
中年が狙われたが、狙われた中年はポジションに耐えられないおそれアリ!
中年ライダーを狙い撃ちする激エモネオクラレプリカ XSR900 GPだが、私を含め40~50歳代にとっての最大の懸念は、遠出をしても前傾姿勢をキープできるか否かだ。
180cm、85kgの太め体型だと、前傾はそんなにキツくないので腹肉をちょっと折り畳めばOKだが、長時間だと首の後ろと手首が辛そう。ハンドルの垂れ角がかなりキツいので、ハンドル1本分くらい上がると理想的。でも角度を上げ過ぎればGPらしさが削がれていき、GPを選ぶ意義が消えていく。
また、このスタイリングに便利だからとキャリアを付けたり、リアボックスを付けたりはややはばかられる気はする。
XSR900はツーリングもスポーツも気軽に楽しめるニュートラルなポジション。キャリアなどの装着もそれはそれで良さそうだ。目の前に2台並べられ、これからどっちかで300km走ってこいと言われたら、気持ちはGPだが、体がXSR900を選んでしまうだろう。
XSR900、GP共にステップ位置が2段階に調整できる(説明書に記載されている)のは好ポイント。XSR900は下側、GPは上側がデフォルトのようだ。また、GPはステップラバーありで、XSR900のはラバーなし。
ヤマハ「XSR900 GP ABS」VS ヤマハ「XSR900 ABS」|総合評価
ネオクラに求められるのは「あの頃のバイク感」ではなく「あの頃のバイクが進化した感」だ
流行のネオクラはいばらの道。安易に手を出すと和食ファミレスで流れる「J-POP お琴バージョン」みたいな違和感が出てしまい、モノ申したい系の中年が湧いてくる。
だが、XSR900 GPはなんだかやけに腑に落ちる。むか~し誰もが一度は妄想したRZV500Rに倒立入れて、17インチホイール履かせて、外装もモダナイズして…みたいな理想像に近いような気がするのだ。それが単なる好みと言われればそれまでだが……。
加えて、パッと見気づかないような細かな造り込みも多々見られ、ヤマハの本気度が伝わってくる完成度。これはうるさ型の老害グレーゾーンライダーも大喜びなのでは?
ネックはポジションによるハードルだ。一方で今回はXSR900の派生としてGPという流れだが、GPのネイキッドバージョンとしてのXSR900としてみると、これは非常にアリ。楽なポジションでツーリングメインで乗りたい層は無理せずXSR900が良いかも。
パーキングに停めておくと、誘蛾灯のように中年を引き寄せてしまうので、ダル絡みされるリスクあり。若者は心して乗っていただきたい。メンテの邪魔になるカウルだが、灯火類はLEDだし、USB電源付いているし、いじる必要はほとんどないかも。ただ、コケたら高い!
カラーやグラフィックに頼るのではなく、しっかりフォルムや各部の造形で魅せるヤマハのセンスが光る。ネオクラの中でも“ネオ”増しの“クラ”少なめで、懐古に全振りしてないのが好印象。このままロングセラーになればSRのような風格が出てきそうだ。
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ヤマハ「XSR900 GP ABS」VS ヤマハ「XSR900 ABS」|スペック・価格・燃費・製造国
XSR900 GP ABS | XSR900 ABS | |
全長×全幅×全高 | 2160×690×1180mm | 2155×790×1155mm |
ホイールベース | 1500mm | 1495mm |
最低地上高 | 145mm | 140mm |
シート高 | 835mm | 810mm |
車両重量 | 200kg | 193kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 |
総排気量 | 888cc | 888cc |
ボア×ストローク | 78.0×62.0mm | 78.0×62.0mm |
圧縮比 | 11.5 | 11.5 |
最高出力 | 88kW(120PS)/10000rpm | 88kW(120PS)/10000rpm |
最大トルク | 93N・m(9.5kgf・m)/7000rpm | 93N・m(9.5kgf・m)/7000rpm |
燃料タンク容量 | 14L(無鉛プレミアムガソリン指定) | 14L(無鉛プレミアムガソリン指定) |
変速機形式 | 6速リターン | 6速リターン |
キャスター角 | 25°20' | 25°00′ |
トレール | 110mm | 108mm |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70ZR17M/C(58W)・180/55ZR17M/C(73W) | 120/70ZR17M/C(58W)・180/55ZR17M/C(73W) |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク | ダブルディスク・シングルディスク |
燃料消費率 WMTCモード値 | 21.1km/L(クラス3, サブクラス3-2) 1名乗車時 | 20.4km/L(クラス3, サブクラス3-2) 1名乗車時 |
製造国 | 日本 | 日本 |
メーカー希望小売価格 | 143万円(消費税10%込み) | 125万4000円(消費税10%込み) |
文:丸山淳大/写真:南 孝幸