※本企画はHeritage&Legends 2024年6月号に掲載された記事を再編集したものです。
一番気になるエンジンそこに着目した車両作り
現在、CB-Fシリーズを主に手がけるショップは車両の販売や純正/アフターマーケット用パーツ、整備やチューニング、カスタム製作等の作業といったさまざまな局面でCB-F自体の環境を良くしていこうと力を入れ続けている。
TTRモータースもそのひとつ。だが、750Fの再組み立て済みエンジン“リビルトエンジン”や、古く汚れたエンジン/キャブレター各パーツにダメージを与えずかつ要する時間を少なくして洗浄するRECS、そして調色可能な耐熱/高放熱塗装のガンコートなど、少し異なる視点からのCB-Fサポートも行っている。各地のイベントでもTTRで車両を購入して新たにFオーナーになったという方に複数出会った。
そこでこの車両だ。鋳造のジェネレーターカバーがTTRのもの、そのベース部からもTTRの強化発電系が収まると分かる。
「積んでいるのは“ブラッククローム”という名前で昨年のウェビックフェスティバル(9月9日に茨城空港で開催)に展示したコンプリートエンジンです。会場で購入いただいたものを、オーナーさんが持っていた車体に組んで完成となりました」
こう、TTR・林さんは車両の成り立ちを教えてくれる。ゴールドの前後17インチホイールに赤いFBカラー、そしてネーミングの通りブラッククロームのガンコート塗装が施されたエンジンの対比にもフレッシュな感じがある。
「車体は持ち込まれた時点でXJR1200パーツを使っていましたので、基本はそれを生かしています。チェックしてディメンション自体は大丈夫でしたし。当然ですけどちょうどエンジンが下りた状態でしたから、いいタイミングと捉えてフレーム本体もリフレッシュした上でリペイントしました。ほかは細部パーツを変更、あと外装もリペイントしてこのように完成しました」
信頼できる、そしてスープアップメニューも施されたエンジン(内容は後ほど説明しよう)を積む。車体側も見直し作業を受けることで結果的に全面的にTTRの目が届くことになった。それがフレッシュ感につながったか。同時に、信頼性も増した。
エンジンという点に注目してもう1台、TTRモータースの車両を紹介しよう。こちらは元々、10年ほど前に“今までに見たことのないCBを作ろう!”とTTRが手がけた提案仕様でもあった。
750FBをベースに、FをCB1100Rスタイルにする社外のキットを追加。それもハーフカウル仕様とし、17インチと組み合わせるときのリヤまわりの隙間を減らすようにシートレールをワンオフ。ハンドル切れ角も純正同様に確保するといったメニューが施される。キャブレターもTTRが得意としていたCB-SF系流用で、始動性や整備性にもストレスがないようにまとめていた。
その車両、ホイール換装やリヤサスレイダウン変更等の仕様変更を重ねながら、エンジンにも手が入った。RS1000(CB900Fベースのホンダ製市販レーサー)用パーツ=クランク/コンロッド/ピストン/カムを組んで、カムチェーンテンショナーも交換したエンジンに積み替えられたのだ。ちょうど2基組んだうちのひとつ、と林さんは説明する。
長い付き合いのあるオーナーさんで、手に入らないもの好きでしたから、という注釈も入りながらだが、この仕様はF乗りには魅力がある。TTRも身近だから、依頼できたと取っていいだろう。そんな自在感も、CB-Fオーナーにはありがたく感じられるはずだ。
それらを踏まえて前出の“ブラッククローム”エンジンの内容を見ていこう。750Fを元に各パーツはRECS洗浄し、クランクメタル合わせやミッション分解/組み立て、オイルポンプチェック、クラッチハウジングダンパー交換が行われる。このあたりのメニューは冒頭に述べたTTRのリビルトエンジン(63万8000~91万3000円)に準じた内容だ。
ブラッククロームではワイセコφ65mm鍛造ピストンでの823cc仕様となり、ワンウェイクラッチの強化やTTR強化ジェネレーターキット、同イージークラッチキットを組み込む。メタルガスケットでの密着性アップやチタンボルト、さらにウオタニパルスジェネレータ/SP2点火キットもセットにされ、ガンコート仕上げ。こんなアップグレードメニューが加わる。
このブラッククローム、各パーツの価格が変わらなければ昨秋販売時の150万円を定価として、今後も供給する考えと林さん。手堅いチューニングと手頃なスープアップは、とくに750Fオーナーにはまた新しい魅力になること間違いなしだ。
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CBバックアップ環境をいろいろな形で増やす
エンジンだけでなく、オリジナルパーツ開発にもTTRは積極的だ。そのひとつが新製品の“CB750Fカバー、ダイナモリプロ”。Fらしさを象徴するダイナモカバーを、アルミ削り出しで復刻し、質感も形状も複雑な純正のそれを再現した。その少し前には下の“CB-F/R専用ジェネレーターキット”を送り出している。これはステーターコイルの巻き線緩みを巻き直す時間を省き、最新パーツで安心感を増すパーツ。こうした、ノーマル車からも使えるパーツを軸にした製品は同店HPを通じて購入できるから、1度覗くのがいい。
さらに先の東京モーターサイクルショーではモンキー125にCB-Fの雰囲気をまとわせる外装キットを発表。Fオーナーがサブに使うのにも、ミニバイクレース等の遊びでF感覚に浸るにもいいキットとして既にオーダーや問い合わせが入っているという。
もうひとつ、2024年のGWの連休中、5月4日(土/休日)には“CB事変”というイベントが開かれた。会場は栃木県宇都宮市の安住神社。全国バイク神社認定第1号のこの場所に、CBをたくさん集めたいという、いわばCBネームドモデルのミーティングだった。
林さんは、Fに限らずCBならば来てほしいし、少数派モデルのオーナーも寄り合うことで何かしらの情報交換ができるのではないかという点から提案したという。
ここを発端に全国のバイク神社でのCB事変の開催、またいずれはCBを冠したモデル、つまり単一名称モデルでの集合数世界記録に挑戦してみたいということすら考えているというから、興味深くもなってくる。こうして多彩な方向からCB-Fの環境を盛り立てるTTR。それに乗るのも、良さそうだ。
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気になるエンジンは状態を把握しコンプリートも販売
“ブラッククローム”エンジンはワイセコφ65mm鍛造ピストンでの823cc仕様でワンウェイクラッチの強化やT.T.R強化ジェネレーターキット/イージークラッチキット、ウオタニパルスジェネレータ/SP2点火キットもセットにされ、外観はガンコート仕上げという、下欄のリビルトエンジンに対するアップグレードエンジンと捉えていい。製作・販売は問い合わせを。
T.T.Rが用意するCB750Fのリビルトエンジン。CB750Fエンジンの消耗部品を新品に交換し、修正の必要な箇所には手を入れて組み立てたエンジンをストックし、販売していて、コンスタントにオーダーがある。品質も確保されていて納期が早いという利点もあり、遠方のユーザーからの支持もあるそうだ。価格はエコノミー=63万8000円、スタンダード=79万2000円、プレミアム=91万3000円となっていて、スタンダードとプレミアムは外観ガンコート仕上げだ。
T.T.Rで車両を購入したオーナー・加藤さんの車両。購入予定だった候補が売れたため次点だったものの林さんの見立てが良く、3年以上を好調で走り回るという。左が購入から1年後のエンジンまわり、右が現在で、夏の暑さからエンジンを守るためオイルクーラーを大型化した。この見立ても参考にしたい。
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純正リプロや発電系強化アイテムも
T.T.Rの新製品「CB750Fカバー,ダイナモリプロ」はCB-Fアイデンティティのひとつ、ダイナモカバー(11631-425-020相当)の復刻品。複雑な純正形状を削り出しで再現する。表面はアルマイト処理基本で4万6200円。カラーオーダー(アルマイト/塗装)も応談。
「CB-F/R専用ジェネレーターキット」はアルミ鋳造トップカバー(単体使用も可)にステーターコイル/フライホイール/削り出しジェネレーターカバー/MOS-FETレギュレーターをセットとし、充電系の不安を即解消できる。16万8300円。
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モンキー125を“F”にする“エフモン”キットも新登場
2024年春の東京モーターサイクルショー、RGツーリングクラブのブースにも飾られたTTRの新製品“モンキー125用CB-F外装キット”。タンクシート一体カウル/タンクキャップ(写真のように差し込み式で簡単に元のキャップにアクセス可能)/リヤフェンダー/テールランプ/シート/取付金具がセットで、黒ゲル仕上げ未塗装18万7000円、写真のような塗装済み(標準5種/特注5種)29万7000円。CB-Fの形が好きならモンキー125と一緒に買いだ。