文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸、松川 忍
ヤマハ「MT-09 Y-AMT」開発者インタビュー
ライディングに没頭できる気持ちいいシフトワーク!
MT-09 Y-AMTの開発メンバーに、このモデルに込めた思いを語っていただいた。この技術がどのようにして育まれ、どうしてMT-09に初搭載されたのか。開発陣の情熱とこだわりをここで紹介しよう。
エキスパートの方にこそ、ぜひ乗ってみて欲しい
「一番大事にしたことは、ライディングの楽しさをスポイルしないこと。自分でギアチェンジしている感覚を優先し、ライダーと車両とのコミュニケーションはなくしちゃいけない、と考えました」
そう語るのはプロジェクトリーダーの津谷さん。今回MT-09に採用されたY-AMTで、開発陣が最も大切にしたことは、スポーティな走りをライダーが堪能できること。2006年のFJR1300AS以降、長年にわたって研究開発を重ねてきたノウハウが、今回のY-AMTに活かされている。Y-AMTの開発担当である福嶋さんは語る。
「目指したのはダイレクト感ある変速です。駆動が切れる時間を短くすることで、安心して加速できるバイクを目指しました。開発は(FJRの頃から)長年やっていまして、それをMT-09に適合させたイメージです」
商品企画の武田さんも語ってくれた。
「電子制御トランスミッションはヤマハは古くからやっていまして、世界的にATが受け入れられ始めたタイミングで次のフィーチャーとして駆動系に着目したのもあります」
Y-AMTの搭載機種にMT-09を選んだのは、スポーティな走りを楽しむ人気のグローバルモデルだから。変速を指で操作するようにしたのも、スポーティな走りに専念するためだと言う。津谷さんは語る。
「最初から手の操作だけで考えたわけではなく、シフトペダルがあった方が便利なんじゃないか、という検討もしましたが、あえて足にライダーの意識を行かせないことでライディングに集中できると考えたのです」
このシステムの特徴のひとつにATモードの搭載が挙げられるが、その変速モードの設定についても開発陣のこだわりがあったようだ。福嶋さんに聞いてみた。
「最初は3つくらいのモードを想定していましたが、最終的には2つになりました。あと、ATの変速タイミングとパワーモードの切り替えの組み合わせを別にするかも検討しましたが、組み合わせが多くなりすぎるとわかりにくい、ということで絞り込みました」
スポーツランの醍醐味と、快適性、利便性の両立を実現したY-AMT。最後に開発陣からのメッセージを紹介しよう。
「指先ひとつでシフトできることで、ライディングに没入できるのがY-AMTのいいところだと思います。ためらわずに、ぜひ乗ってみてください」(武田さん)
「テクニックに自信のある方にも十分楽しんでいただけるものに仕上げました。ATでスクーターのような使い方もでき、1台で何でもこなせるバイクです」(福嶋さん)
「個人的にはエキスパートの方にこそ乗って欲しいと思っています。クラッチ操作がなくなったことで軟弱になったのではなく、むしろ安定してより速く走れるバイクになり、利便性も妥協なく追求しています。ぜひ乗ってみてください」(津谷さん)
ヤマハ「MT-09 Y-AMT」メカニズム解説
2つのアクチュエーターが可能にする素早い変速と高い利便性!
AMT(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)は、既存のMTをベースにクラッチの自動操作機構と自動変速機構を組み合わせることで素早い変速を実現する一方で、発進から停止までクラッチ操作が不要になることで、利便性の高いATモードも両立できる機構。
Y-AMTもこれの一種で、クラッチのレリーズ操作とシフトロッドの操作用にそれぞれモーターを使ったアクチュエーターを搭載し、これをMCUと呼ばれるコンピューターで統合制御している。今回採用されたMT-09の場合、変速時間は0.1秒。電子制御スロットル(YCC-T)を組み合わせることで、シフトチェンジ操作のタイミングに関わらず的確な変速を可能にしている。
文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸、松川 忍