MT-09に初搭載された次世代トランスミッション「Y-AMT(Yamaha Automated Manual Transmission)」。この記事では開発担当者にうかがった話と、そのメカニズムを紹介する。
文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸、松川 忍
画像: YAMAHA MT-09 Y-AMT ABS 総排気量:888cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 シート高:825mm 車両重量:196kg 発売日:2024年9月30日 税込価格:136万4000円

YAMAHA
MT-09 Y-AMT ABS

総排気量:888cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
シート高:825mm
車両重量:196kg

発売日:2024年9月30日
税込価格:136万4000円

ヤマハ「MT-09 Y-AMT」開発者インタビュー

ライディングに没頭できる気持ちいいシフトワーク!

MT-09 Y-AMTの開発メンバーに、このモデルに込めた思いを語っていただいた。この技術がどのようにして育まれ、どうしてMT-09に初搭載されたのか。開発陣の情熱とこだわりをここで紹介しよう。

画像: 津谷晃司氏(プロジェクトリーダー)|写真中央 ヤマハ発動機株式会社 PF車両開発統括部 SV開発部 福嶋健司氏(Y-AMT開発担当)|写真左 ヤマハ発動機株式会社 電子技術統括部 システム開発部 武田知弥氏(商品企画)|写真右 ヤマハ発動機株式会社 グローバルブランド統括部 企画推進部 スポーツグループ

津谷晃司氏(プロジェクトリーダー)|写真中央
ヤマハ発動機株式会社 PF車両開発統括部 SV開発部

福嶋健司氏(Y-AMT開発担当)|写真左
ヤマハ発動機株式会社 電子技術統括部 システム開発部

武田知弥氏(商品企画)|写真右
ヤマハ発動機株式会社 グローバルブランド統括部 企画推進部 スポーツグループ

エキスパートの方にこそ、ぜひ乗ってみて欲しい

「一番大事にしたことは、ライディングの楽しさをスポイルしないこと。自分でギアチェンジしている感覚を優先し、ライダーと車両とのコミュニケーションはなくしちゃいけない、と考えました」

そう語るのはプロジェクトリーダーの津谷さん。今回MT-09に採用されたY-AMTで、開発陣が最も大切にしたことは、スポーティな走りをライダーが堪能できること。2006年のFJR1300AS以降、長年にわたって研究開発を重ねてきたノウハウが、今回のY-AMTに活かされている。Y-AMTの開発担当である福嶋さんは語る。

画像: ▲FJR1300AS www.autoby.jp

▲FJR1300AS

www.autoby.jp

「目指したのはダイレクト感ある変速です。駆動が切れる時間を短くすることで、安心して加速できるバイクを目指しました。開発は(FJRの頃から)長年やっていまして、それをMT-09に適合させたイメージです」

商品企画の武田さんも語ってくれた。

「電子制御トランスミッションはヤマハは古くからやっていまして、世界的にATが受け入れられ始めたタイミングで次のフィーチャーとして駆動系に着目したのもあります」

Y-AMTの搭載機種にMT-09を選んだのは、スポーティな走りを楽しむ人気のグローバルモデルだから。変速を指で操作するようにしたのも、スポーティな走りに専念するためだと言う。津谷さんは語る。

「最初から手の操作だけで考えたわけではなく、シフトペダルがあった方が便利なんじゃないか、という検討もしましたが、あえて足にライダーの意識を行かせないことでライディングに集中できると考えたのです」

画像: ▲MT-09 Y-AMT ABS

▲MT-09 Y-AMT ABS

このシステムの特徴のひとつにATモードの搭載が挙げられるが、その変速モードの設定についても開発陣のこだわりがあったようだ。福嶋さんに聞いてみた。

「最初は3つくらいのモードを想定していましたが、最終的には2つになりました。あと、ATの変速タイミングとパワーモードの切り替えの組み合わせを別にするかも検討しましたが、組み合わせが多くなりすぎるとわかりにくい、ということで絞り込みました」

スポーツランの醍醐味と、快適性、利便性の両立を実現したY-AMT。最後に開発陣からのメッセージを紹介しよう。

「指先ひとつでシフトできることで、ライディングに没入できるのがY-AMTのいいところだと思います。ためらわずに、ぜひ乗ってみてください」(武田さん)

「テクニックに自信のある方にも十分楽しんでいただけるものに仕上げました。ATでスクーターのような使い方もでき、1台で何でもこなせるバイクです」(福嶋さん)

「個人的にはエキスパートの方にこそ乗って欲しいと思っています。クラッチ操作がなくなったことで軟弱になったのではなく、むしろ安定してより速く走れるバイクになり、利便性も妥協なく追求しています。ぜひ乗ってみてください」(津谷さん)

ヤマハ「MT-09 Y-AMT」メカニズム解説

画像1: ヤマハ「MT-09 Y-AMT」メカニズム解説

2つのアクチュエーターが可能にする素早い変速と高い利便性!

AMT(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)は、既存のMTをベースにクラッチの自動操作機構と自動変速機構を組み合わせることで素早い変速を実現する一方で、発進から停止までクラッチ操作が不要になることで、利便性の高いATモードも両立できる機構。

画像2: ヤマハ「MT-09 Y-AMT」メカニズム解説

Y-AMTもこれの一種で、クラッチのレリーズ操作とシフトロッドの操作用にそれぞれモーターを使ったアクチュエーターを搭載し、これをMCUと呼ばれるコンピューターで統合制御している。今回採用されたMT-09の場合、変速時間は0.1秒。電子制御スロットル(YCC-T)を組み合わせることで、シフトチェンジ操作のタイミングに関わらず的確な変速を可能にしている。

画像: 2つのアクチュエーターはエンジンの背面にレイアウトされ、余計な張り出しをなくすため若干傾けて設置されるほか、カバーの装着で外観上も目立たない。上のイラストも参照。

2つのアクチュエーターはエンジンの背面にレイアウトされ、余計な張り出しをなくすため若干傾けて設置されるほか、カバーの装着で外観上も目立たない。上のイラストも参照。

画像: クラッチユニットの上に見えるのが、クラッチレリーズの操作用アクチュエーター。ここからロッドを介してクラッチの断続を行なう。

クラッチユニットの上に見えるのが、クラッチレリーズの操作用アクチュエーター。ここからロッドを介してクラッチの断続を行なう。

画像: シフトチェンジ用のアクチュエーターとシフトフォークを結ぶロッド内部にはスプリングを組み合わせ、バネの伸縮を活かした素早い作動(変速)を実現。

シフトチェンジ用のアクチュエーターとシフトフォークを結ぶロッド内部にはスプリングを組み合わせ、バネの伸縮を活かした素早い作動(変速)を実現。

画像: クラッチレバーはなく、シフトチェンジは左スイッチボックスの下部にあるスイッチで行なう。指先で操作しやすいよう、スイッチ形状にもこだわっている。

クラッチレバーはなく、シフトチェンジは左スイッチボックスの下部にあるスイッチで行なう。指先で操作しやすいよう、スイッチ形状にもこだわっている。

画像: MTモードに加えATモードも搭載。通常の「D」モードとシフトポイントをやや高回転域にした「D+」モードを用意、MTとの切り替えは右側のスイッチで行なう。

MTモードに加えATモードも搭載。通常の「D」モードとシフトポイントをやや高回転域にした「D+」モードを用意、MTとの切り替えは右側のスイッチで行なう。

画像: シフト機構はハンドル左側に設けられ、足で操作するシフトペダルは設定されない。現時点ではオプションとして用意する計画もないという。

シフト機構はハンドル左側に設けられ、足で操作するシフトペダルは設定されない。現時点ではオプションとして用意する計画もないという。

画像: Yamaha Motor Europe- YouTube www.youtube.com

Yamaha Motor Europe- YouTube

www.youtube.com

文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸、松川 忍

This article is a sponsored article by
''.