文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ヤマハ「Y-AMT」の搭載車
ホンダ「Eクラッチ」の搭載車
ヤマハ「Y-AMT」VS ホンダ「Eクラッチ」運転操作のちがい
「使いこなす」楽しさがスポーツバイク本来の魅力
Eクラッチはクラッチの断続のみをアクチュエーターに任せる機構で、シフト操作は通常のマニュアルミッションと同じく左足のペダルで行う。クラッチ操作は不要だからレバーはなくてもいいが、レバーを装備することでメリハリの効いたライディング、繊細な半クラッチ操作までも可能としている。
対してヤマハのY-AMTはクラッチレバーもシフトペダルも装備せず、発進からシフトアップ/ダウン、停止時のクラッチ切断までのすべてを自動制御。極端に言えば市街地からツーリングまで右手の操作だけで走れてしまうイージーさを備えている。街乗りレベルの速度とスロットル開度なら3000回転ほどで2速、3速とシフトアップし、シフトダウンもスムーズ。
「D+」モードに切り替えるとより高いエンジン回転域を使うようになり、サーキットでの走りやすさ、アベレージスピードが一気に高まる。ヤマハの開発スタッフは「クラッチとシフト操作が不要になるのでブレーキングやコーナリングに集中できる」と語っていたが、ライダーのスキルとコースによってはマニュアルミッションより速い可能性はあるだろう。
だがマニュアル操作が染み付いた身には、タコメーターを見ながらのシフトアップ、ブレーキ入力/バンク角に合わせたシフトダウンといった操作がないと物足りない。しかしMTモードに切り替え、左側スイッチボックスにあるシーソー式レバーでシフトを操作すると物足りなさは激減する。
そもそもMT-09はアップ/ダウン対応のクイックシフターを備えているから、発進/停止時以外でクラッチを握ることはない。つまりMTモードでは左足の操作が左手の操作に代わるだけ。ATモードは予期していないタイミングでシフト操作が行われることがあったが、MTモードなら自分のリズムでキビキビ走れる。
EクラッチもY-AMTもスポーツモデルに初搭載してきたが、本来のスポーツ性からクラッチ操作の負担を引いたのがEクラッチ、逆にスポーツ性にイージーさを足したのがY-AMTという印象を受けた。
僕は両手両足を使う難しさ、面倒さが、オートバイに乗る楽しさの根底にあると思っているが、イージーライドを望むライダーが増えれば、こうしたアシスト機構の評価・人気が上がり「アシストの手軽さを経て、MTの楽しさを知る」という流れも生まれるのではないかと期待している。
ヤマハ「Y-AMT」VS ホンダ「Eクラッチ」装備のちがい
ヤマハ「Y-AMT」
シフトペダル
クラッチレバー
ユニット外観
ホンダ「E-Clutch」
シフトペダル
クラッチレバー
ユニット外観
ヤマハ「Y-AMT」VS ホンダ「Eクラッチ」比較表
項目 | ヤマハ「Y-AMT」 | ホンダ「E-Clutch」 |
---|---|---|
クラッチレバー | なし | あり |
シフトレバー | なし | あり |
シフトスイッチ | あり | なし |
ATモード | 2種類(D、D+) | なし |
MTモード | あり | 操作自体はMT |
電子制御スロットル | あり(MT-09) | なし(CBR650R/CB650R) |
AT限定免許での運転 | 〇 | × |
ホンダEクラッチシステム、Y-AMT、それぞれの違いを一覧表にしたものがこちら。AT限定免許で乗れるのはY-AMTの方で、Eクラッチ搭載車はシステムを解除して通常のMT車として乗ることも可能だ。
文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸