文:松下尚司/写真:ロイヤルエンフィールド
ロイヤルエンフィールド「ゲリラ450」インプレ(松下尚司)
452cc水冷エンジンが生み出す万能な走り
日本国内でも徐々にその魅力が浸透してきているロイヤルエンフィールド。歴史を見れば、1901年からモーターサイクルを製造している伝統あるメーカーであるが、この数年の「攻めの姿勢」は目を見張るものがある。
2017年のEICMAにおいて並列2気筒エンジンを搭載した「コンチネンタル GT650」・「INT650」を発表。同年には英国レスターシャー州レスターにテクニカルセンターがオープンし、2019年にはインド南西部の工業都市チェンナイにもテクニカルセンターをオープンしている。新型車の開発スピードを早めるとともに、品質と性能も大幅に高めている。
日本国内を見ても今年だけでブリット350、ヒマラヤ450、ショットガン650と、タイプの違うエンジンを搭載した3モデルの販売を開始。ロイヤルエンフィールドとしては長期的なビジョンのもとにニューモデルの投入計画を立てているのであるが、それにしても元気だ。
なかでも350ccのモデルは世界的にも認知度も人気も高いが、ショットガン650のような新しいカテゴリーにモデルを投入するなど、積極的なトライをしている。
そのトライのひとつとして誕生したのが、今回、スペイン・バルセロナで国際試乗会が開催された新型「ゲリラ450」だ。ロイヤルエンフィールドの中でも認知度の高いクラシック系の延長ではなく、新世代のプレミアム・モダン・ロードスター。
このゲリラ450に搭載されているエンジンは「シェルパ450」と名付けられた新型水冷4ストローク単気筒452ccエンジン。日本国内でも発売されたばかりの新型ヒマラヤ450に搭載されているものと同型で、ロイヤルエンフィールド初の水冷DOHCエンジンだ。
この高性能なエンジンに加え、フレームも基本的にはヒマラヤ450と同じものを採用。スタイリングや足まわりなどを中心に変更することで、オフロードモデルからロードスポーツモデルへとキャラクターを変更している。
ショットガン650の試乗でも感じたことだが、ロイヤルエンフィールドの作るバイクは独特のフレンドリーさがあって、跨いだ瞬間に体に馴染むというか「これは構えないで乗れそうだな」と感じる。今回のゲリラ450も同様で、バルセロナという観光地での街乗り、海外試乗会ではお馴染みのペース速めのワインディングが用意されていることは分かっていたが、不安になることはなかった。
思い描く走りを可能にする初心者にもオススメの1台
試乗会は宿泊したバルセロネータビーチにあるホテルからスタート。すぐにバルセロナの街中へと入っていくのだが、朝の出勤時間と重なり、交通の量は多く、どうしても信号で捕まる。しかし、低回転からしっかりとスムーズに発生するトルクでストップアンドゴーは気にならない。ポジションも許容性があり、いわゆる乗りやすいバイクだ。
激しい加速や鋭いコーナーリングというイメージはないが、その代わりにあらゆる場面で扱いやすく、気軽に乗って楽しめるバイクはロイヤルエンフィールドらしいと言える。
とはいえ、乗り手が求めれば十分すぎるほどワインディングは面白い。はじめはタイヤに若干の不安を感じながらだったものの、思った以上にグリップすることが分かり、後半はハイペースに。ショーワ製の前後サスや、高剛性の軽量コンパクトなフレームの組み合わせは硬めな印象もありながら、思い切った開け方にもついてくるから、曲がるごとにコーナーが楽しくなっていった。
ただ、ハイペースでなかったとしても、ゲリラ450の素直なハンドリングと豊かなトルク特性は初心者でも戸惑うことはないだろうし、この乗りやすさは自分の力量が上がったと感じるかもしれない。
10時間ほどの長丁場の試乗だったが、他の試乗メンバーと話題になったのはステップのバンクセンサーが擦りやすいということと、ライドバイワイヤの遊びがない挙動設定に好みが分かれるということくらい。ちなみに私は気にならなかった。
日本国内においては免許制度の関係上、452ccという排気量がネックとなると思うが、思い通りに操れる楽しみはライダーにとって大きな魅力。排気量だけで選ぶ時代は終焉している今、販売価格にもよるが、次のバイク選びの候補として名前が挙がるだけの魅力を持ったモデルなのは間違いない。