※本企画はHeritage&Legends 2024年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
純正スペックの延長上でらしさを生かすことを意識
導入に書いたような観点から、GPZ900Rニンジャが本来持つ面白みを極力生かせることを意識するブルドッカータゴス。ノーマル車両の整備や、不調な個体の問題解消にもいろいろな手段を持っている。ショップデモ車/代表・田子さんの愛車(ほかにハーレー・スポーツスター、同パンアメリカがある)は、そんなショップのスタンスを反映している。以前にも紹介しているが、この視点で見るとまた発見がある。
タゴスで推奨する、使って良かったパーツが多く使われるのだが、よく見てみると、タゴスオリジナルパーツはサイズや数値という意味で純正スペックの延長上にあることが分かる。例えばタゴス・ニンジャクルーズステムはA7以降の純正φ41mmフォークで17インチ化する際に適合する。タゴス・ニンジャZバーもφ41mm対応。
サンスター×TAGOSディスクも純正同径のφ300mmをセット。田子さんの考えは?
「車両は遠くから見てノーマルっぽく。それで乗るとひと味違う。そんな感じです。前後17インチにする時に、フロントフォークはオーリンズなどを選ぶ方も多いし、それでもいいんです。でも、純正φ41mmのスマートさのまま性能を高めたいという考えもあります。それでステムはφ41mm対応の設定。その純正φ41mmフロントフォークはYSSのPDバルブで社外のカートリッジフォークのようなしなやかさと腰が出ますし、これと合わせて使える長さのハイパープロスプリングもあります(ともにタゴスで販売。組み込み加工の依頼も可)。これでひと味の違いも出てくると思いますよ」
色味も含めてニンジャのノーマルらしさを生かしたいならなるほどと思える選択肢だ。エンジンにもこの意識が入っている。
「ZRX系への換装など、エンジンもたくさん手法があります。かつてのカスタムブームの頃は972㏄仕様が大流行しましたよね。競ってボアアップしてφ75.5mmピストンを入れてパワー感や、換えたぞって刺激を味わう。今は900ニンジャのエンジンでちょっとチューニングして、昔ほどパワフルな感じではなくても少し余裕を持たせたエンジンを楽しむ感じです。時代も変わって、40周年になったニンジャをあと10年、20年乗りたいねという感じになったと思います。盆栽仕様も否定しませんし、それもあり。一方で、ノーマルスタイルを生かして飽きずに乗り続けるというやり方もある。そんな提案もしたいです」
ニンジャの味を噛み締めていくとでも言うのだろうか。これはなかなかに共感できる手法だ。そのエンジンにも、タゴスでは使いやすいオリジナルピストンを用意して今後に対応するようにしている。
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末永く乗れるように整備とセッティングを
ヴォスナー×TAGOS GPZ900Rオーバーサイズピストン。鍛造品で、純正1mmオーバーサイズのφ73.5mm(932㏄化)と1.5mmオーバーサイズのφ74mm(945㏄化)を用意する。
「どちらも鍛造品で当店オリジナルサイズです。さっきお話ししたような少しの余裕を、オーバーホールプラスα的な作業でできるようにする。デモ車では今φ74mmを入れていて、これはストリートでの耐久性も継続して確認しているところ。φ76mmも準備していて、その時外したφ74mmは中川くん(TGナカガワ)のR-Shot#M処理をしてTOTレーサーに組んで、フリクションや、レースでの再生ピストンでのノウハウを知ってみたいと思ってます。そのレーサーは、今はヴォスナー×TAGOSのφ73.5mmを入れています。レギュレーションが850㏄上限ですから、クランクは750、それで824㏄。900用ピストンの耐久性も分かるということで、’22年秋から丸2年使っていますね。現状で問題なしで、あと1レース走ったら先ほど言ったようにデモ車からのφ74mmを使う予定。それでも835㏄でレギュレーションはクリアします。公道でもサーキットでもテストは続いています」
レースでは上位を走り、公道では峠も走り、何度もロングツーリングを重ね、飽きない仕様。普通にオーバーホールできれば組み込みにも無理はないピストン。ゆくゆくはこうしたリフレッシュ&スープアップを考えるとして、今普通のユーザーが使っているエンジンはどう考えるといいのだろう。
「すごく当たり前ですけど、エンジンオイルの定期交換はきちんとしておきたいです。いいオイルをしっかり換えていけば、そうは調子も悪くならないし、保ちます。当店ではモチュール300Vを勧めています。ストリート用でも、TOTレーサーでも使ってます。オイル交換時にはオイルフィルターも見ておきます。K&Pオイルフィルターがいいですね。フィルターがステンレスメッシュで、通過抵抗が減ってオイルポンプへの負担も減りますし、フィルター本体の交換は不要。オイル交換のタイミングなどで清掃すればいい。異物を濾過できないのでは? と思う方もいらっしゃいますけど、それが心配なら純正を使えばいい。K&Pはトラブルの元になるような異物は出ていませんし、お客さんにも多く使ってもらってます。これも販売しています」
電気や冷却系にも配慮し、スープアップよりもまずメンテナンスして、バランス良くセッティングして末永くニンジャに乗りましょうと、にこやかに続けてくれる田子さん。確かにそうだ。ニンジャをじっくり味わいたいなら、タゴスの手法とパーツは見逃せないのだ。
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定期整備をしっかり行ってエンジンをいたわる
まず良いオイルの定期交換をと田子さん。TAGOS推奨はモチュール300V(上写真)で、ストリート車でもレーサーでも使う。下写真は同店推奨のK&PステンメッシュオイルフィルターS13(1万7600円)。304ステンレス材製メッシュを使ったアメリカ製フィルターで、紙製品の7分の1の圧力で同量のオイルを通過させることが出来、オイルポンプの負担を軽減。洗浄も容易で半永久的に使える。
TAGOSニンジャレーサーとTAGOS GPZ900Rのエンジン部。ともにエンジンオイルはモチュール300Vを使い、オイルフィルターはK&Pステンメッシュオイルフィルター。ストリートでもレースでも使われるが、シフトフィールの向上をはじめ多くのメリットを得ている。当然と言えるのだが、いわば基本中の基本がしっかりしていることで安心してエンジンも使い続けられる。
電気まわりや水まわりにも気を配る。プラグキャップは古いとキャップのゴムが固くなってシール性が落ちる。イグニッションコイルも劣化しやすく、新品にすることでエンジンの調子が良くなることも。配線も同様。水まわりの配管、ラジエーターキャップ劣化に注意。タゴスでは純正カウルに入るオリジナル3層コアのラジエーターも用意。同店で施工可能だ。
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ニンジャの持つ面白みをより引き出すタゴスのオリジナルパーツ群
遠くから見るとノーマルっぽく、乗ると面白さをより感じられるTAGOSのデモ用ニンジャ。各部に装着されたオリジナルパーツは純正から換えやすく、面白みをより引き出してくれる。
TAGOSニンジャ・クルーズステムキット(TAGOSニンジャZバー付き18万2600円、ハンドルバーなし16万2800円)は前後17インチ仕様対応の35mmオフセットステムでA7~のφ41mmフォークに適合、剛性も向上。フォークピッチ200mm、純正アクスルシャフト/フェンダー/ロック可能。
タゴス・ニンジャバーZ(A7-A16)は純正同様のセパレート(マウントも同様)で少し手前にグリップが来る。田子さんもお勧めの角度設定で疲労も軽減される。アルミ製ブラックアルマイト仕上げでバーはφ22.2mm。3万3000円。
スプリームシートとタゴスのコラボレートによるTAGOSライディングシート【PREMIUM】張り替え(8万2500円)。シート高は高くなるがサイドを削り、足着き性と操作性を高める。純正シートカウルに合う流れるようなデザインも特徴になっている。
純正では減衰力調整機構のないφ41mmフォークにカートリッジフォークのようなしなやかさと腰を加えるYSS PDフォークバルブ(1万4300円)と、この装着に必要な加工をしたPDバルブ用HYPERPROフロントスプリング(2万3100円)でA7~A11フォークの性能をアップ。
リヤにもタゴス仕様のハイパープロショック(12万1000~14万8500円)を用意。