以下、文:横田和彦/写真:関野 温
ヤマハ「MT-09 Y-AMT」VS ヤマハ「MT-09 SP」|比較インプレ
同じバイクのバリエーションモデルは違いが超気になる!
現在のMT-09は、標準仕様/前後フルアジャスタブルサスペンションやフロントにブレンボ製キャリパーを採用したSP仕様/Y-AMT仕様の3機種がラインアップされている。
今回試乗するのはSPとY-AMT搭載の2機種だ。その2モデル同士を比べる前に、2024年6月にマイナーチェンジした内容を確認しておこう。主な変更点は、ポジション/外装デザイン/サスペンションのセッティング/吸気音を強調する構造など。個人的に先代と一番違うと感じたポイントはライディングポジションだ。
前のモデルは上体が起き気味のモタードっぽいポジションだったのに対して、新型はハンドル位置がやや低くステップはアップし、後方に移動したことで軽い前傾のスポーツネイキッドになっている。タンク形状はエッジが効いたデザインになり、上部にあるスピーカーのようなグリルから吸気サウンドが響くのだが、想像よりは大人しめな印象だった。
それらの変更点を踏まえてフルアジャスタブルサスペンションを備えたSPに乗ると、先代よりもライディングポジションの自由度が高まっているのを感じた。左右はもちろん前後にも移動しやすくなっている。
ブレンボ製モノブロックキャリパーを備えたフロントブレーキは、コーナーリング中に微妙に速度調整するというデリケートなシーンでも不安なく扱える繊細さがあり、サスペンションの動きもなめらか。直列3気筒エンジンが生み出す豊かなトルクをスムーズに路面に伝えてくれる。
途中の信号待ちでシートに座ったままリアのプリロードをかけてみると車体姿勢が変わり、コーナーへの進入がさらにしやすくなった。これは前後のサスセッティングを自分好みに詰めていくという通好みの楽しみ方ができるということ。高い趣味性を備えている。
SPのしなやかなフィーリングが身体に残ったままY-AMTに乗り換える。最初はATモードでスタートしてみた。速度にあわせて自動変速してくれるのでアクセルとブレーキ操作だけで市街地を走れる。こりゃロングツーリングのときに疲れにくくて便利だよなぁと実感。同時にサスペンションの動きが良いことにビックリ。基本セットアップがかなり煮詰められているようだ。これは好印象だね。
そしてワインディングに突入。先に言ってしまうと、ここでのATモードはシフトチェンジのタイミングがボクの感覚にマッチしなかった。そこでマニュアルモードに変更。左のスイッチボックス下部にあるレバーを前後に動かすことでシフトチェンジを行うのだが、レバーを押すと瞬時にギアチェンジする。その際、衝撃はほぼないので車体姿勢が崩れない。おおっ、コレはかなり良いじゃないの!
それを実感したのは、コーナーのRを読みそこねてエンジンの回転数が落ちたときに、指先の動きだけで瞬時にシフトダウンして立ち上がり加速を確保できたこと。通常のバイクならクラッチレバーを握ってシフトペダルを踏み込むという大きな動作が必要になるので、バンク中に操作したくないという人もいるだろう。
クイックシフター搭載車なら、より操作しやすいが、それでも車体を傾けているときに足先を動かすのは不安に感じることも。しかしY-AMTは、バイクやライダーがどんな体制であっても迷うことなくシフトチェンジができる。
下半身ではステップ荷重に集中したまま自在にギアチェンジを行い、コーナーに対して適切なエンジン回転数をキープできることに快感を覚えた。確かにこれはスポーティ。しかも一般のマニュアル車では得られない斬新な感覚だ。そのフィーリングが楽しくて峠道を走っていると、いつの間にか指でのシフトチェンジ操作にも慣れ、自然に扱えるようになっていた。このときひとつのゲームを攻略したような気分になれるのもオモシロイんだよね。