以下、文:横田和彦、丸山淳大/写真:南 孝幸、関野 温
スズキ「GSX750S」(1982年)|車両解説・スペック

SUZUKI
GSX750S
1982年モデル
総排気量:747cc
エンジン形式:空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:770mm
車両重量:242.5kg(乾燥)
発売当時価格:59万8000円

SUZUKI
KATANA
2024年モデル
総排気量:998cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:825mm
車両重量:215kg
税込価格:166万6100円
GSX750S(1982年) | KATANA(2024年) | |
全長×全幅×全幅 | 2250×810×1105mm | 2130×820×1100mm |
ホイールベース | 1515mm | 1460mm |
車両重量 | 222.5kg(乾燥) | 215kg |
エンジン形式 | 空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 |
排気量 | 747cc | 998cc |
最高出力 | 69PS/8500rpm | 150PS/11000rpm |
最大トルク | 6.2kgm/7000rpm | 10.7kgm/9250rpm |
変速機形式 | 5速 | 6速 |
タンク容量 | 21L | 12L |
タイヤサイズ前・後 | 3.25H19-4PR・4.00H18-4PR | 120/70ZR17・190/50ZR17 |
オーナー・ハチクロの車両解説

前オーナーがどれだけ整備しているかが旧車購入では重要
2019年に手に入れたこの車両は相場より少し高かったが、その分整備がほぼ完璧にされていて、純正品のマフラー、シート表皮、1100ハンドルとスクリーンが装着されていた。
リアショックがコニー製以外はほぼオリジナルだ。自分のミスで招いたトラブル以外に故障はまったくない。始動性も抜群で、旧車を買うならしっかり整備されている車両が一番と教えてくれた一台だ。

スズキ「GSX750S」(1982年)|インプレ(横田和彦)

こんなバイク見たことない! カタナに乗りたくて限定解除
GSX1100S刀と出会ったのは中学生の頃。模型店でカタナのプラモデルを見たのだ。「こんなカタチのバイクがあるんだ」。バイクのことなど何も知らない少年が、ただデザインに魅了された。バイクの知識が増えていくと1100ccのバイクに乗ることがいかに難しいかを知る。合格率がとても低い限定解除に受かる必要があったからだ。
当時の日本は750ccまでしか販売できず、1100ccは高価な逆輸入車しかなかった。それでもあきらめずに、20歳で限定解除をクリアすると学生でもギリ手が届いたGSX750Sを買って意気揚々と乗り回した。「でもやっぱりカタナといえば1100だよな」という想いがあり、3年後に82年式の希少なGSX1100S刀に乗り換えた。
その後オーナーズクラブに入ってツーリングに行ったり、1100を買ってサンデーレースに出たりとカタナライフを楽しみ尽くした。当時すでに絶版車だったけど、多くの純正部品は手に入ったが、経年劣化によりアチコチがくたびれてきてベストな状態を維持するには、それなりにコストがかかるようになった。そこに仕事やライフスタイルの変化などが重なり、ボクはエンジントラブルを期に約12年続いたカタナ生活にピリオドを打った。

長々と書いてきたけど、絶版車に乗ることは意外と大変で、旧ければ旧いほど覚悟が必要になる。なにせ思ってもいないところが急に壊れるし、それを修理するパーツが入手困難だったり、驚くほど高価なことだって珍しくない。また全体に劣化しているので「あちらを直せばこちらが壊れる」の繰り返しになることも。
しかし、それを受け入れる懐の深さと余裕、乗り越えようとする強い意思があれば乗り続けることができる。そのひとつの例が今回試乗したGSX750Sだ。製造から40年以上経過しているが、それを感じさせない良コンディション。各部からオーナーの愛が感じられる。細かいところからは年式相応のヤレが見え隠れするが、始動性はいいしアイドリングも安定。前後サスペンションの踏ん張り具合も悪くない。
カタナでよく言われるのが「重い・止まらない・曲がらない」という表現。重いのは確かだけど、中回転域のトルクが図太いエンジン特性なので、走り出してしまえば街中であっても重さは気にならない。駐車場の出し入れのときに力はいるが、大型バイクならこんなものだろう。

だが「止まらない」と「曲がらない」には異を唱えたい。新型KATANAとはまったく異なる小径のフロントディスクとシングルポットブレーキキャリパーの組み合わせは、初期制動こそ弱めだが、レバーを深く握り込んでいけばグッと車速を落としてくれる。リアブレーキを併用すれば十分にイケる。ただし整備が行き届いているという前提が必要。減速時にフロントが踏ん張る感覚が伝わってくるのはANDFの効果だね。なんだか懐かしい。
フロント19/リア18インチという細身のタイヤに加え、ホイールベースが長いのでハンドリングは独特だ。タイトコーナーでは、フロントに余計な入力をしないように意識しながらオーバーアクション気味に体重移動をすると、板を倒すかのようにパタンとバンクして曲がっていく。その挙動は極太17インチの新型KATANAにはない優雅さすらあり、ビッグバイクを振り回しているという手応えも感じられる。
そんな今どきのバイクとは異なる独特のフィーリングが「曲がらない」という声につながっているのだろうが、12年間ノーマルホイールのままで、街乗りからツーリング、サーキットまで走りまわった身としては、乗り方をアジャストすれば十分に楽しめる。久々のカタナはコンディションが良かったこともあって色々なことを思い出させてくれ、自分の原点であることを再認識させてくれた。

アップハンドルと後退したステップ位置のバランスが微妙だけど、レストアの具合が良くてスムーズにバンクできる。これでタイヤが新しければ、さらに安心して攻められそう!

高速域じゃ150馬力の新型KATANAに敵わないけど、低中速コーナーが続く峠道なら空冷4気筒エンジンのトルクフルな特性を有効活用することで追従が可能だ。また細いタイヤは寝かし込みが軽く走行ラインを選ぶ自由度が高いのも良い。