GPz750Fのフロントからリアにかけての流麗なラインは時代を超越する美しさ。そして刺激的な名車のエッセンスを取り入れたZ900RSはユーザーのハートを打ち抜いた人気モデル。男カワサキの歴史を刻み続けている2台をノア セレンがインプレ! 新橋モーター商会のマルも参加し各部装備を解説!
以下、文:ノア セレン、丸山淳大/写真:南 孝幸、関野 温

カワサキ「GPz750F」(1984年)|車両解説・スペック

画像: Kawasaki GPz750F 1984年モデル 総排気量:738cc エンジン形式:空冷4ストDOHC並列4気筒 車両重量:217kg(乾燥) 発売当時価格:68万円

Kawasaki
GPz750F
1984年モデル

総排気量:738cc
エンジン形式:空冷4ストDOHC並列4気筒
車両重量:217kg(乾燥)

発売当時価格:68万円

画像: Kawasaki Z900RS Yellow Ball Edition 2024年モデル 総排気量:948cc エンジン形式:水冷4ストDOHC並列4気筒 シート高:800mm 車両重量:216kg 税込価格:156万2000円

Kawasaki
Z900RS Yellow Ball Edition
2024年モデル

総排気量:948cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC並列4気筒
シート高:800mm
車両重量:216kg

税込価格:156万2000円

GPz750F(1984年)Z900RS Yellow Ball Edition(2024年)
全長×全幅×全幅2190×720×1260mm2100×865×1150mm
ホイールベース1495mm1470mm
車両重量217kg(乾燥)216kg
エンジン形式空冷4ストロークDOHC並列4気筒水冷4ストロークDOHC並列4気筒
排気量738cc948cc
最高出力77PS/9500rpm111PS/8500rpm
最大トルク6.4kg-m/7500rpm10.0kg-m/6500rpm
変速機形式5速6速
タンク容量18L17L
タイヤサイズ前・後110/90-18・130/80-18120/70ZR17・180/55ZR17

オーナー・ハチクロの車両解説

画像1: 【絶版車インプレ】カワサキ「GPz750F」(1984年)と現代の人気モデル「Z900RS」を乗り比べ!

前オーナーが途中でレストアを諦めた車両……

前オーナーが中古部品をかき集めてレストアをしていたが途中で放棄したいわくつきの車両。キャブレターはGZz750R用をピッチ変更して装着されていたのでまともにアイドリングしない状態だった。

足まわりは全バラしてベアリングを全て交換。エンジンは腰上オーバーホール。キャブも中古の純正品に交換。

純正リアサスはYSS製に、マフラーはUS製の集合管に交換。外装は缶スプレーでオールペンするなど、車両代とは別に70万円くらい突っ込んだのでもう売れない。

画像: タンク上にマウントされた燃料計はカスッカスの表示になってはいるがまだ動いている。

タンク上にマウントされた燃料計はカスッカスの表示になってはいるがまだ動いている。

カワサキ「GPz750F」(1984年)|インプレ

画像1: カワサキ「GPz750F」(1984年)|インプレ

「使える性能」も絶版車の魅力

80年代の名車の前に、90年代のビッグネイキッドについて少し話そう。根底では70~80年代に通じるのだが、絶版車の魅力のひとつとして「使える」というのがあり、ビッグネイキッドはそれを極めていた。リッターバイクのパワーを気軽に楽しませてくれる味付けがされていたから街乗りもツーリングも幅広くこなせたし、良いタイヤを履けばサーキットを含めたスポーツも十分に楽しめた。

その上で快適性が確保され、タンデムも考慮され、積載性や航続距離の長さまで確保してある万能バイクだった。ハーフカウル付きのモデルならば高速道路だって大得意であり、現在では細分化されているストリートファイター、ツアラー、アドベンチャーが全部ひとつにまとまっていた。だからこそ僕は今も、多少の苦労は承知でスズキの油冷バンディット1200Sに乗っているのだ。

しかし、ビッグネイキッドが登場する以前の時代はスーパースポーツでも確かな汎用性が備わっていた。ここに登場するGPz750Fは、かつてのスーパースポーツである。輸出仕様は100馬力近くもあったし、83年のアメリカスーパーバイク選手権ではホンダの水冷VF勢を抑えてシリーズチャンピオンにもなっているほど。

それなのにこんなに快適なシートや二つのヘルメットホルダーを備えるなど、一般ライダーがツーリングに使いたいような装備を排することはなかった。いかに最先端のスポーツモデルでも「使い勝手」を重視する姿勢はビッグネイキッド世代まで続く絶版車の大きな魅力のひとつだと僕は思っている。

画像2: カワサキ「GPz750F」(1984年)|インプレ

さてそのGPzは、超名車のZ650から発展した「ザッパー系」と呼ばれるエンジンを搭載している! 振動が少なく、高回転域もスコーンとフケるし、細身のタイヤでヒラヒラと走るのに路面を捉えて放さない確かな接地感はカワサキのフロント19インチ時代に通じる魅力。なるほど、これなら当時最新のVFと戦えただろうな、と納得する。

ただ現車はオーナーのハチ黒さんが大切に愛でているにもかかわらず、夏でも冬でも始動性が悪い、さらに純正部品が出ないアンチノーズダイブ機構は当然カットしてあるのでフロントまわりのフィーリングはイマヒトツ。そんなのは絶版車の「あるある」であり、それでも根気よく付き合いながら完調に近づけていくというのが、絶版車の楽しみの一つでもある。先述したように根気と経済力が試されるのだ。

対するZ900RSだが、乗り換えると感動してしまう。「エンジンがかかる!」「ニュートラルがスッと出る!」ことにまず嬉しくなるのだ。絶版車慣れしていると、セルボタンを押したら当たり前のようにエンジンがかかるということが、どんなにありがたいことか! 加えてブレーキが良く効く、各部の立て付けにガタがなくて静か、全ての操作がスムーズ、といったことが素晴らしいし、この冷たい路面ではABSやトラコンの装備もうれしいところ。

加えてZ900RSはかつてのビッグネイキッド然とした車体構成のため、文頭に書いた汎用性がしっかり備わっていて使い方を選ばないし、カスタマイズといった発展性も楽しみやすい。本当に良いバイクだと心から思う。ビッグネイキッドファンからすると、「こういった万能で使いやすいバイクが良いんだよ」という気持ちになる。売れるべくして売れているのだ。

画像: 他の3つの新旧組み合わせに対して、カワサキの2台は一貫した哲学のようなものをより感じさせてくれるような気がした。スーパースポーツとして生まれたGPzと新生代ネイキッドとして生まれたRSでは背景が違うはずなのに、2台とも極寒&冷たい路面で得も言われる安心感を提供してくれ、40年の差を感じさせずに元気に追いかけっこができてしまったのだ。

他の3つの新旧組み合わせに対して、カワサキの2台は一貫した哲学のようなものをより感じさせてくれるような気がした。スーパースポーツとして生まれたGPzと新生代ネイキッドとして生まれたRSでは背景が違うはずなのに、2台とも極寒&冷たい路面で得も言われる安心感を提供してくれ、40年の差を感じさせずに元気に追いかけっこができてしまったのだ。

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