BMWのワークスマシンが全日本に登場!

2018年から7シーズン、単身スペインにわたり、ESBK(=スペイン・スーパーバイク選手権)に出場していた浦本修充が、2025年から全日本ロードレースに復帰、JSB1000クラスにBMW M1000RRで参戦することになりました。
チームは2024年シーズンまで津田拓也+GSX-R1000Rで全日本ロードレースを戦っていたオートレース宇部レーシングチーム。すでにオートレース宇部は「スズキGSX-Rでのレース参戦終了」を発表していましたが、それがまさかのマシン、まさかのライダー!

画像: 浦本(右)と伊神メカによってアンヴェールされたM1000RR オートレース宇部カラー!

浦本(右)と伊神メカによってアンヴェールされたM1000RR オートレース宇部カラー!

「スズキがレース活動を縮小、新型マシンが発売されず、サポートがない状態ではレースを続けられないので、マシンを変えて参戦を続けていくことになりました。マシンはBMWのM1000RR。BMW本社と、レース活動の窓口であるドイツ・アルファレーシングと交渉して、BMWのワークス世界耐久マシンに準じたマシンを用意してもらえることになりました。特にエンジンはほぼワークススペックで、全日本ロードレースに参戦しているマシンの中では、いちばんパワフルなエンジンだと思います」とは、オートレース宇部のチームディレクターを務める中井貴之さん。

そしてオートレース宇部レーシングチームでは、全日本ロードレースに参戦しながら、メインレースを世界耐久選手権として、チーム目標を世界耐久チャンピオンと定めています。
今シーズンの出場レースは、全日本ロードレースに参戦を軸としますが、鈴鹿8耐と世界耐久最終戦のボルドール24時間がメインターゲット。鈴鹿8耐を終えて、ボルドール24時間耐久参戦のために、準備期間を作るべく、全日本ロードレースのオートポリス大会と岡山国際大会を欠場。それだけ、鈴鹿8耐とボルドール24時間に賭けているのです。

ライダーは、24年シーズンまでESBKを走っていた浦本。浦本、実は24年の鈴鹿8耐にSDGホンダレーシングから参戦した後、ESBK参戦のために所属していたチームの方針で、シーズン後半はレースに出場していませんでした。
「7年走って、チームにシートがなくなってしまったことで、もうレースをやめてしまおうかな、と思ったこともありました。僕の目標はWSBKに出場、そのワールドチャンピオンになりたい、ということ。このまま日本に帰って全日本ロードレースにシートを見つけようという活動もしていなかったんです」と浦本。

画像: まだ走行していないというM1000RR エンジンはベルリン工場で組まれるワークススペック!

まだ走行していないというM1000RR エンジンはベルリン工場で組まれるワークススペック!

その浦本の思いとは別に、オートレース宇部も25年以降のライダーを選定中で、浦本に白羽の矢が立った、という流れだったようです。
「僕が2016年にJ-GP2クラスのチャンピオンを獲った時に、メカとしてついてくれていた伊神さんとは、スペインを走っている時もずっと連絡を取っていて、スペインに来てくれたり、普段からご飯を食べに行ったりしていたんです。その伊神さんが、25年以降のオートレース宇部の環境を話してくれて、マシンを新しくする、全日本に出る、鈴鹿8耐に参戦する、という話をしてくれて、そもそもオートレース宇部のチーム設立時からの目標が『世界耐久チャンピオンを獲りたい』だって教えてくれて、それ僕がやりたい!って食いついたんです」(浦本)

画像: 伊神メカが「知れば知るほど、ストック状態でもすごいことがよく分かった」というM1000RR

伊神メカが「知れば知るほど、ストック状態でもすごいことがよく分かった」というM1000RR

オートレース宇部がスズキGSX-Rでのレース活動を終了することになった時、次期マシンの選定で伊神メカニックと中井ディレクターが考えたのがBMW。BMWは実は、トップクラスのマシンやパーツを、一般のチームでも手に入れやすいとされていて、中井ディレクターも、当初はアルファレーシングに注文→マシン製作を考えていたようですが、BMWとアルファレーシングにチーム方針を説明し、ミーティング。日本のロードレースと世界耐久にBMWユーザーチームが増えることを歓迎してくれたBMWが、チームの方針を理解し、協力を確約してくれたのだといいます。

「僕が出ていたESBKは、ストッククラスのマシンなんですが、ここでもBMWは走っていて、正直言って速い! 特に電子制御が進んでいる印象で、もう音も違うんです。乗ってみたいなー、とは思っていましたが、こういう形で乗ることになるとは思いませんでした」(浦本)

画像: チームディレクターを務める中井貴之さん

チームディレクターを務める中井貴之さん 

オートレース宇部に供給されるマシンは、EWCのBMWワークスマシンに準じたスペックで、エンジンはほぼワークススペックのもの。もちろん、全日本ロードレース出場車はJSB1000クラスに適応する仕様で、すでに全日本仕様のマフラーなども出来上がって来たそうです。
その意味では、昨年のこの時期に、ドゥカティ製ワークスマシンを全日本に持ち込むことで話題になったチームカガヤマの動きも、きっと刺激になったことでしょう。
「スペインにいる間も、全日本のレースはずっと見ていました。去年なんか、(水野)涼がドゥカティを日本に持ち込んで、レースのレベルもグンと上がった印象があります。チャンピオンになった岡本選手、最後までタイトルを争った中須賀選手、それに涼や、ヤマハからホンダにスイッチして1年目の(野左根)航汰がレベルの高いレースをしていた。僕もあの中に入りたいし、入れるだけのマシンを用意してもらえるので、あとは僕の頑張り次第です。不安もありますが、楽しみでわくわくする気持ちも大きいです!」(浦本)

鈴鹿8耐とボルドール24時間のライダーはまだ未定。それでも「僕が開幕戦からいい走りができたら『あのバイクで戦いたい』ってライダーはきっと出てきます」と浦本は言います。取材した僕ら報道陣は、WSBKの日程が被っていないんだから、WSBKのワークスチームとジョイントして、トプラックやマイケル呼んできちゃえ、なんて軽口を叩いていましたが、日本にこんなスペックのマシンを持ち込んだオートレース宇部の行動力があればひょっとして……なんて期待しちゃいます。

画像: このシーズンオフは、マレーシアで集中してトレーニング走行、日本では毎週のようにダートを走っているという浦本

このシーズンオフは、マレーシアで集中してトレーニング走行、日本では毎週のようにダートを走っているという浦本

世界耐久をにらんで全日本ロードレースのを2戦欠場するという決断のなかには、オートレース宇部の本拠地である山口に一番近い岡山大会も含まれています。それだけの覚悟で、ボルドールに臨むのです。
「日本をまた走ることになったのはすごくうれしいけれど、目標であるWSBK参戦のために、世界耐久に出たいというチームの理念に共感しました。日本にいても、ずっと世界を見続けていきたいです」と浦本。
鈴鹿8耐では走りは見ていますが、スペインでもまれ、8年ぶりの日本登場となる浦本の走りに注目したいです!

画像: 発表会は東京・お台場のBMWグループTOKYO-BAYで ごらんの報道陣に囲まれての開催だった

発表会は東京・お台場のBMWグループTOKYO-BAYで ごらんの報道陣に囲まれての開催だった

写真・文責/中村浩史

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