車体にピタリと沿わせて張り出し量を抑えたサイレンサーが機能美を漂わす
ネイキッドモデルの気軽さとストリートファイター的な切れ味の良さをホンダ流にバランスさせた新世代モデルがCB1000R。
エンジンはスーパースポーツモデルのCBR1000RR系だけに、鋭いピックアップと高回転域での伸びを魅力とするが、正直なところ、市街地で多用する低回転域ではもう少し穏やかな反応とトルクの太さが欲しい。
ワイバンのフルエキゾーストはアールズギア代表の樋渡氏が実走テストを繰り返し、車両のキャラクターに合わせて作り込まれているが、今回試乗したCB1000R用は低中速トルクを重視した特性。
4→2→1の集合方式や、エキゾーストパイプの管長を長めに取るなどでトルクを太らせている。
風切り音が大きくなる60㎞/hあたりまでは大排気量エンジンらしい図太い排気音を楽しめ、中回転域以上まで回すと直列4気筒特有の吠えるようなサウンドを響かせるが、規制値をクリアしたJMCA政府認証マフラーなので、周囲の目が気になる音量ではなく、乗っているライダーはしっかり満足感を味わえるという絶妙な設定だ。
低中回転トルク増大の恩恵を最も感じやすいのはゼロ発進。
CB1000Rは極低回転域が頼りなく、1速のギア比も高めなので発進時はクラッチワークに気を使うが、ワイバンマフラー装着車はアイドリング回転のまま発進でき、4000回転以下でスロットルをオン/オフした際の反応が穏やかでギクシャクしない。
4000回転以上ではノーマル以上のパワー感があるが、特定の回転から豹変するのではなく、レッドゾーン近辺まで均一に厚みが増している。
この特性なら市街地はもちろん、路面の荒れた峠道、ウエット路も走りやすいはず。加えて3.8㎏という圧倒的な軽さでフットワークも上がっている。
素材感も形状も前衛的デザインのCB1000Rにマッチしているから、眺めて悦に入るのもこのマフラーならではの楽しみ方だ。
試乗&TEXT:太田安治、撮影:南 孝幸