80年代を駆け抜けたレーサーレプリカの定番
CBX400Fの発売と同時にRSC(現在のHRC)からレース用のキットパーツを発売し、本拠地鈴鹿サーキットでSS400なる新クラスを立ち上げるなど、ロードレース参戦へのプロモーションを展開したホンダ。
これが功を奏して、鈴鹿4時間耐久レースを頂点とするアマチュアレースのブームが到来。
全国のサーキットへと波及していく。
市販車をベースに改造範囲を厳しく制限したプロダクションレースでは、ベースマシンの性能がレース結果を大きく左右。
さらにロードレースが盛んになるほど、レース結果が販売台数に大きく影響するようになり、メーカーも高性能なマシンを次々に投入し始める。
83年3月。量産世界初のアルミフレームを採用したRG250Γで世界を驚かせたスズキは、その1年後に400ccクラスにもアルミフレームのGSX-Rを投入。
GSX400FWをベースにチューニングを進めたエンジンは59PSまでパワーアップされ、アルミフレームの採用を始めとして徹底的な軽量化が進められた車体は、乾燥152kgという当時の250ccモデルをしのぐ軽さを実現。
ホンダCBR400FにVF400F、ヤマハFZ400Rとの三つ巴、四つ巴の闘いが全国各地の峠道やサーキットで繰り広げられた。
このように、圧倒的な軽さとパワフルなエンジンで、400cc4気筒マシンの性能レベルを一気に引き上げたGSX-R。
84年に当時世界GPのスポンサーだったHBタバコカラーを追加し、85年のカラーグラフィックチェンジを経て、86年にはツインスパー風のアルミフレームに水油空冷のニューエンジンを搭載したII型にフルモデルチェンジ。
このGSX-Rに限らず、80年代中盤から90年代初めにかけてのレーサーレプリカモデルは、デビュー1年目でマイナーチェンジ、2年目でフルモデルチェンジという、現在のレベルからは異常とも言えるサイクルでモデルチェンジが繰り返されていた。
また、プロダクションレースの規則では交換が認められていない、サスペンションやミッション、キャブレター、クラッチ、ホイールなどをあらかじめレース用に換装した、いわゆる「SP仕様」がラインアップされていたのもこの時代のレーサーレプリカの特徴。
GSX-Rの場合、88年モデルにクロスミッション、シングルシート、フルアジャスタブルの高性能前後サスを標準装備したGSX-R400 SPが初登場。
89年モデルからはSP仕様のミッションだけをスタンダードレシオに戻して一般走行適性を高めたSPIIも市販された。