そんなスペンサーがAMAで駆った愛機、CB750Fも、いまなおファンを惹きつけるレジェンドマシンの1台。空冷、水冷と現代のCBにはさまざまなカタチがあるが、流れているスピリットは不変だ。
ヨシムラの連覇を阻止したアメリカホンダの意地の結晶「CB750F」
デイトナ200マイルレースと言えば、アメリカでもっとも注目度の高いレース。
言うなればオールスター戦のようなもので、ここで勝つことはシリーズチャンピオン獲得と同じくらいの価値がある、とされていた。
このレースに必勝態勢を敷いたアメリカホンダは、78~81年にデイトナを制したヨシムラスズキを打倒すべく、82年にWGPにフル参戦を開始するスペンサーに乗せるワークスマシンを製作。

それが、このCB900Fだった。
登録名こそCB750Fだが、80年の初登場からエンジンはRS1000用ベースのスペシャル。
この写真、82年型「F」では、GPマシンNS500のフロントフォーク、ダイマグ製16インチホイール、スタビライザーつきスイングアームに、オーリンズ製リアショックを使用する。
この年は、スペンサーが優勝、2位にマイク・ボールドウィン、3位にロベルト・ピエトリが続き、表彰台を独占。
後に日本でもAMAスーパーバイクは知られるようになり、銀×青の純正カラーは「スペンサーカラー」と呼ばれるようになったのだ。

フレディ・スペンサー

搭載されるエンジンは耐久レーサー・RS1000のものがベース。メガホンマフラーはマイク・べラスコのハンドメイド。

シートはライダー側の座面を肉抜き。サイドカウルには「スーパースポーツ」の文字が記されている。

スピードメーターは右端で針を振り切ったまま固定。遊び心あふれる演出だ(Honda Collection Hall
の保管車両)。